第5章
タイトル戦の当日を迎えた。
― 悠子さん,お願い。
麻衣から入場を促された。白のサテンのロングガウンを纏い,キャットウォークに躍り出た。そのときコーナーに控える麗華を見た。彼女はつぶらな瞳と共に不敵な笑みを浮かべ,私を挑発した。
リングインして暫く互いにコーナーから対峙した。彼女はセンタースリットのロングのアオザイを纏っていた。髪に手櫛を入れながら相変わらず見下したかのようだった。流石,肌を許しあったにもかかわらず戦闘モードになれるなんて。いいわ,見てなさい。自ずと闘争心が湧いた。
リングアナから麗華がコールされた。纏っていたガウンを脱ぎ,ホルターネックの白のワンピースの姿を露にした。そこには薔薇と蝶々のプリントがあしらわれていた。
今度は自分のレスリングスーツを露にした。白にピンクのドット柄,アメリカンスリーブのワンピースで挑んだ。
リング中央で握手を交わし,試合が始まった。まずは力比べから入った。暫く膠着した後,彼女の怒涛の回し蹴りが始まった。必死にガードしたが,たまらず膝をキャンパスについてしまった。今度はストンピングの嵐が始まった。咄嗟に場外に逃れた。そう彼女のラフファイトには只管逃れ勝機見出すしかなかった。
リングに戻った直後今度は私から仕掛けた。彼女の左膝にローキックを入れた。キックの軸足に狙いをつけ徹底的に攻撃する戦法を取った。麗華はひるんだ。そこは見過ごさず果敢に彼女の左足に足四の字固めを極めた。彼女は悶絶した。喘ぎながらも必死にロープブレイクに逃れようとした。
― 意地でもギブ致しませんわ。
彼女の意地が勝った。ロープブレイクとなった。空かさず彼女に左膝にストンピングのお返しをした。彼女の表情がその痛みの故か歪んだ。彼女も場外に逃れた。しかしこの好機を逃すわけにはいかない。彼女を追い,顔をエプロンに叩きつけた。
― もう一度いくわよ。
でも今度は彼女が私の手を払い,私の髪を掴んで顔をエプロンに叩きつけた。彼女の容赦ない攻撃が続いた。ポストに顔を撃ちつけると,私を客席に投げつけた。私は朦朧としていた。
彼女はショルダータックルを仕掛けてきた。しかし何とかそれはかわすことができた。彼女を自爆させた。でも暫くは二人とも息が上がりどちらかも打って出られなかった。
彼女の執念が勝っていた。波状のパンチ攻撃を繰り出してきた。次々にパンチを見舞ってきた。しかしどれも浅く利かなかったのが幸いした。
レフリーのカウントが始まっていた。麗華がエプロンに手をかけリングに戻ろうとしていた。まだ左膝には痛みが残っているはず。彼女の左膝をキャンパスに叩きつけた。痛みの為彼女はひるんだ。そして彼女の体をエプロンから引き摺り下ろし,逆に自分がエプロンからリングに戻った。
リングアウトが宣せられた。彼女の負けだった。辛勝とはこのことだろうか。出来れば,フォール或いはサブミッションで決着したかったが。
コミッショナーより選手権者認定の宣言が告げられ,タイトルを腰に巻いた。麗華はその始終を眺めていた。セレモニーが終わると私に近寄って来,抱擁を求めてきた。私が応じると彼女から抱きついてきた。
― おめでとうございます。でも悔しいですわ。
― ありがとう。
― 今宵は心づくしの慰めをお願い致します。
その言葉を聴いて,更に強く抱きしめた。すると彼女は頬を摺り寄せた。