先日観た映画「落下の解剖学 Anatomy of a Fall」
今年のアカデミー賞でも多くノミネートされている作品で、既にカンヌ映画祭では
パルムドールを受賞している。
感想
事故?、自殺?、殺人?
ストーリーは2時間もののサスペンスドラマとさほど変わりないのだが、深い心情や人間関係を
描いている分、質のよい見ごたえのあるミステリー映画だ思う。
結局、法廷では評決は出るものの、真相は明かされないまま終わる。
夫婦関係、母息子関係、弁護人と依頼人の関係など、実際映像では描かれてはいないものの
観ている者に想像を描き立たせるところが多い。
殺人の容疑者である妻は、夫に対して子供に障害を負わせてしまった憎悪感、
言語の異なる国際結婚、強いられた田舎暮らし、セクシャリティ、仕事の行き詰まり、
金銭的な生活苦など、様々な不満と問題を抱えていた。
しかし、それらが夫殺しの動機となるのだろうか?
薄々自分の親の夫婦関係に気づいている視覚障害の11歳の息子。
母親を守るために偏った証言をしたのだろうか?
それとも将来の自分を守るために計算の上で証言台で語ったのだろうか?
自分の子供を守れず視覚障害を負わせてしまった自負に常に悩まされ、執筆活動も
スランプで疲れていた精神的にナイーブな夫が果たして自ら命を絶ったのだろうか?
人里離れた田舎では決定的な証拠や証人が無いため、真実は分からない。
この映画で主演のサンドラ・ヒュラーは多くの映画祭で主演女優賞を受賞しているが
個人的には、最も演技?が上手なのは介護犬のスヌープだったような気がする。
勿論一切言葉は発しないけれど、表情や動きから一流の俳優と変わらない存在感だった。