高宮利行著『西洋書物史への扉』 は岩波新書、2023年2月の新刊。
高宮さんは、元慶應義塾大学、写本の研究者で、グーテンベルグ聖書を購入した際の慶應側の中心人物、この本は入門書というより、私などが表面的に知っていたことをかなり詳しく述べている。
慶應が丸善から、推定8億円(価格非公表)でグーテンベルグ聖書を購入した際の展示にあたって、高宮さんは、慶應の営繕に依頼して、(本書p79)の写字生ジャン・ミエロが向かっている写字台と同じものを作らせた。これが練馬区立美術館の吉野石膏コレクション「本と絵画の800年展」に貸し出されて、撮影もできる。


15世紀の写本に描かれた、編集者兼写字生ジャン・ミエロ。
もちろん、この挿絵はフィクションで、床に製本した書物を置くことなど
考えられないし、上の台に置いた過去の写本を下の写字台で
書き写しているのだが、上の台が大きすぎて、これでは
写字台がひっくり返りそうだ。。

 

1996年 慶應義塾大学がグーテンベルグ聖書を購入した際の展示に見る写字台
カリグラファーによる写字の模様。解説しているのは多分慶應の院生。
(以下は私撮影)

 

今回の練馬区美術館での展示に貸し出された慶應の写字台
今度は明るい所で撮影できた。
椅子まで、写本の挿絵の様に制作した。

 

練馬区立美術館「本と絵画の800年展」では、概ね写本は撮影もできる。

零葉で一番古いものは、12世紀グレゴリウス一世の著作だ。(伝説として、グレゴリオ聖歌を編纂したと言われていた法王)
しかし、これは切り取られて、他の本の製本に使われている。
(19世紀くらいまでは、古いと言って珍重されることはなく、単に汚いものだったらしい。焚き付けとして燃やされたものもあったようだ。)

 

その他、写本なども慶應義塾から貸し出されているものがある。

これは15世紀の時祷書だが、展示替えに合わせてもう1冊と入れ替え。

 

その他 稀書として名高い「ポリフィルの夢」の「アルドの息子版」と、19世紀フランスの復刻版が展示されている。これらは吉野石膏コレクション。


展覧会は4月15日まで。月曜休館。<<終了いたしました>>
練馬区立美術館は西武池袋線、池袋から各駅停車で「中村橋」下車。180mほど。

(余談:帰りに、高架下のドトールコーヒーに入ったら、
午前11時半頃、10人ほど5組のお客が全員中高年女性でびっくりしました。女子の会話力を実感)