平日の昼、虎ノ門大阪屋砂場へ。
席が整うまで少し待っていると、
ひとりの女性が入ってきた。
やがて案内された席は先ほどの女性と相席になった。
「相席になりますね」と軽く挨拶を交わす。
女性は慣れた様子で、
蕎麦前に雲丹イカと生ビールを注文すると、
小説を開いた。
涼やかな麻素材のペールグリーンのセットアップ。
所作は美しく、
きりりとした仕事をされているようにも見えるのに、
話すと気さく。
その人だけの静かな空気をまとっていた。
ほどなく、私の頼んだ冷やしじゅん菜蕎麦が届いた。
続いて彼女の料理も運ばれ、
しばらくは言葉もなく、
それぞれの食事に向き合った。
「今日みたいに暑い日は、蕎麦に限りますね」
食事の一息に、そんな言葉から自然に会話が始まった。
彼女は今日は仕事がお休みなのだという。
私は先に蕎麦湯までいただき、ひと足先に席を立った。
名前も知らない人と、ほんのひととき同じ卓を囲む。
思いがけず一期一会の
静かに時間を分け合う、豊かなひとときがあった。

