●基本情報
ポリアミンとは、ウイルスから人間の細胞まで様々な生物に存在している、生きるために必要不可欠な成分です。
ポリアミンはアミノ基を2つ以上分子内に持つ炭化水素の総称で、主に細胞の生まれ変わりに関与しており、ポリアミンが不足することで細胞の老化は著しくなると考えられています。
ポリアミンは、アミノ酸の一種であるアルギニンやオルニチンによって、体内で合成される成分です。
ポリアミンは人間の体内に20種類以上存在しており、中でも代表的なものは、スペルミン、スペルミジン、プトレスシンの3種類です。
スペルミンは、最初に発見されたポリアミンであり、細胞の新陳代謝などに深く関わっています。
スペルミジンは、細胞の生まれ変わりに関与している酵素を、活性化させる作用を持っています。
プトレスシンは、最も単純な構造を持つポリアミンであり、腸内の酵素によってほとんど分解されるといわれています。
●ポリアミンの歴史
最初に発見されたポリアミンであるスペルミンは、1678年にオランダのレーウェンフック博士によって精液中から発見されました。
1888年にラーデンブルク博士によって名付けられたスペルミンという名称は、精液「sperm(スパーム)」に由来しています。
ポリアミンが持つ構造から複数を意味する「ポリ」に、アミノ基を意味する「アミン」をつなげたのが名称の由来であるとされています。
●ポリアミンの働き
体内において、ポリアミンは細胞分裂に重要な役割を担っています。
ポリアミンがなければ、細胞は分裂や増殖を行うことができないため、新陳代謝を正常に行うことができなくなります。
体内では前立腺、膵臓、唾液腺などの、精子や酵素を生成する組織に多く存在しています。
また、ポリアミンは血管壁の炎症を予防し、動脈硬化を予防する効果などが期待されている成分です。
ポリアミンは体内でつくり出される成分ですが、20歳頃をピークにポリアミンを合成する酵素の活性が低下するため、加齢に伴って体内のポリアミンの量は減少していき、ポリアミンが不足すると、老化が加速するといわれています。
人間の体内に存在するポリアミンの長所のひとつは、分子量が非常に小さいことです。
分子量の小さいポリアミンは、食べ物などによって摂取しても、分解されることなく腸へ届き、吸収されるという利点があります。
よって、年齢により不足した場合でも、ポリアミンは食べ物などから補うことで、体内の臓器や組織へ行き届き、その効果を発揮することができます。
●ポリアミンの摂取方法
ポリアミンは大豆、きのこ類などに含まれており、特に大豆を発酵させた納豆や醤油、味噌にはポリアミンが豊富に含まれています。
また、チーズなどの発酵食品などにも、微生物が生成したポリアミンが多く含まれており、しいたけ、マッシュルーム、鶏肉などにもポリアミンは含まれています。
現在では、ポリアミンの健康効果が注目され、サプリメントなどに配合されている場合もあります。
なお、ポリアミンは母乳にも含まれている成分で、出産後約10日後から2週間後の母乳は、特にポリアミンの含有量は多くなるとされています。
ポリアミンは乳児の成長促進や記憶などに関与していると考えられているため、乳児用の粉ミルクなどにはポリアミンが添加されている場合もあります。