公共サービス業の若手職員研修に行きました。
「今日の研修で、何を学びたいですか?」と、みなさんに問いかけ
一人一人発表してもらいました。
まじめな顔で、
「嘘のつき方を習いたいです。」と一人の男性職員がおっしゃいました。
おっっ・・・きたぞ。きたぞ。
それまで学生として生活をしてきて、4月から社会人となり働き始めて半年。
誠実な方ほど、表現は違えど、この力をつけたいとおっしゃいます。
きっと、とても素敵なご両親に育てられ、
ご自身も勉強にスポーツに努力をし、お友達も沢山いるだろうなぁと思われる
彼の真剣な顔を見ていると
「この半年、苦労したんだな。頑張ってきたんだな。」と
愛おしくてなりませんでした。
窓口に高齢のお客様がいらっしゃった。
自分が応対していると、あきらかに業務上無理な要求をされた。
自分の仕事は、誠実に正確に公平にするものだ。と信じているので
「申し訳ありませんが、できないんです。本当に申し訳ないです。」と
心から申し訳ないという気持ちを込めて、優しく言った。
どんどん、相手が機嫌が悪くなり、「それくらい良いではないか。」
と詰め寄られ、でも、「本当にそうして差し上げたいのですが、これはどうしようもないのです。
ご理解ください。」と一生懸命説明をした。
すると、上司がそっと近づいてきて
「○○さん。本当に申し訳ないですね。お気持ちはよくわかりました。
本当に、おっしゃるとおりです。長いこと説明をしてくださってありがとうございます。
暑い中お越しくださって・・・こちらからお宅に伺えば良かったですね。ご足労をおかけしました。
なんとか○○さんのご希望に添えるように、こちらでも検討させて頂きましょう。
ただ・・・・ただ・・・今年の状態では、無理だと思うんです。あぁぁ。どうしようかなぁ・・・
検討致しますが・・・来年以降、もしも、もしも!規則が変わったらなんとかなるでしょうが・・・」
と、その高齢者の方に言ったら、なんとそのお客様は
「そうですか。まぁ、あなたがそういうんなら・・わかりました。
あきらめましょう。来年以降に期待するよ。」
と帰られた。
すぐに、その上司に、「ありがとうございます。では、この件の対応を検討しましょう。」というと
「え?なんで?解決したじゃん。機嫌良く帰られたからもう良いでしょ。
検討したって、無理なものは無理だしね。」という返事。
「え?検討しますって・・・嘘?それって、正しいの?無理でも、「検討する」と言ったのなら
検討するべきなのではないのだろうか。」
彼の事例を聴きながら、その場の若手の方々は真剣に「うん。うん」とうなずく。
ニコニコしているのは、私と、すでに長年社会人経験があり、転職してきた「新人さん」たち。
それでは!と
この事例をテーマにグループワークをしてもらいました。
グループでみんなの考えをシェアしあい、最初は小さかった声が
どんどん白熱して大きくなるのがわかります。
各グループには、社会人経験者が一人は入っていらっしゃいます。
新社会人のみなさん、社会人経験者の考えを食い入るような目をして聴いていました。
私も会場内を回りながら、聞こえてくるその言葉の数々に
うなずくことばかりでした。
ワークを終えて、代表の方に発表してもらいました。
「ごまかしのための、「嘘」
自分が有利になるための「嘘」は、ただの「嘘」。絶対についてはいけない。
だが、相手の気持ちを楽にするため
相手の立場を守るため、お互いがわかりあうための調整のための「嘘」は
「おもいやり」になる。」
まとめると、こういう意見となりました。
当初の研修の目的発表で
「嘘のつきかたを学びたい」と言った彼に
休憩時間に
「ねぇ。嘘のつきかた、学べた?」
と聞いてみました。
やっぱり、誠実そうな顔で
「今まで自分が貫いてきた「嘘をつかない」という価値観と
違う視点で物事を見ないといけないとよくわかりました。」と言ってくださいました。
「それ本心?嘘ついていない?」と微笑んで聴いてみました。
すると、顔をくしゃくしゃにして満面の笑顔。
「はい。あんまり自分がこだわりすぎると先生が困ると思って
嘘、つきました。
あれ?僕、嘘つきますねぇ。」
彼のあまりの素直さに、まわりにいた人たちが大爆笑。
その素直さがあれば、あなたが相手を思うが故に
口に出す言葉は、もしかしたら「嘘」かもしれないけれど
相手は、「ありがとう。私のことを思ってのことですね。」と
感じてくださいます。
こういう「人」を社会人のプロに育てて行くことこそ、
私たちの使命だ。と感じた一日でした。