P男は27歳で地方都市の郊外に両親とともに住んでいた。会社はICT機器を製造する〇〇精密で、△△湖を望む場所にある。自家用車で20分ほどかけて通っていた。L村病がこの地区にも蔓延した時期、街のスーパーは大混乱になった。P男はこの混乱には加わらなかった。買い置きがかなりあったためである。

 

 気になっていたのは恋人のQ女の存在である。スマホがすぐにつながらなくなったのだ。ただし、両親が共に発症したため、看病で動くことができなくなった。二人とも看病の甲斐なく相次いで亡くなった。すぐに、Q女のところへ駆けつけたが、家はもぬけの殻だった。人の少ないところへ避難したのかもしれない。スマホがつながらないのは電池切れであってほしいと願うのだった。

 

 両親を庭に埋葬した後、街の状態を確認しに行った。多くの人々が倒れており、生存者は見当たらなかった。スーパーやコンビニにはかなりの食料が残されていた。缶詰や傷みにくいカップ麺や乾物、飲料、酒類を調達した。夜間の灯りのために、ローソクもたくさん入手した。

 自分はL村病にかかりにくい体質だったのだろう。一人になったが、生きていかねばならない。家ではプロパンガスを使用しており、当面困ることはない。また、薪ストーブがあり、調理や暖房に使用することができた。庭には手漕ぎ井戸が存在するので、水にも困らない。近くには農家が多く、野菜などの畑を引き継ぐことにした。果樹園もかなり存在し、ブドウやナシ、リンゴなどが収穫できる。川や湖で魚を釣ることもできるだろう。

 問題は電気である。パソコンやDVD視聴にはどうしても欠かせない。近くのDIY店を訪れたところ、ガソリン発電機を発見した。これを持ちかえって、自宅の電線につなぎ変えた。ガソリンは止まっている自動車からとることができる。給油カバーをバールで外し、ポンプで灯油タンクに移して持帰った。発電を始めると、家の中でパソコンが使えるようになったが、ネットに接続することはできなかった。

 

 当面の生活に目途をつけることができた。今後の課題は生存者の探索である。P男一人が生き残っているということはあり得ないからである。近隣の街につながる国道に看板を立てることができる。当面、やることが山積である。DVDを集めて楽しむのは、しばらく先になりそうだ。

 今回から、Ⅰ誘導期(lag phase)からⅡの対数期(log phase)に次ぐ「定常期(stationary phase)」になった。環境条件が悪くなり、細菌がこれ以上増えない状態である。

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