JR下り方面の三鷹と武蔵境駅にポスターを張り、周辺を探索した。次の駅が東小金井である。JR高架下の北側道路で一直線である。やはり、駅周辺には腐臭を放つ死体があったが、予想より少ない状態だった。この駅は小さく、店舗が連なる商店街と呼べるほどの通りは存在しない。ポスターを張って、次の武蔵小金井に向かうことにした。

 

 車載のGPS地図を縮小して周囲を調査した。小金井市は桜で有名である。JR駅の出発メロディは「さくらさくら」が使用されていた時期がある。名所の一つが小金井公園である。東小金井を北上すると突き当りに存在するので、立ち寄ることにした。

 直前に玉川上水があり、両岸の桜が見事だった。小金井公園の桜も同様だった。数多くの品種があるようで、咲き始めから、葉桜になったものもあった。そして、ここには「江戸東京たてもの園」があることに気が付いた。江戸時代から始まり、昭和にいたるまでのさまざまな時代の建造物が30棟以上展示されている。

 有名なものが、銭湯の「子宝湯」である。ジブリ作品「千と千尋の神隠し」の公式モデルなのである。ジブリで外せないもう一つが、明治創業のレトロな文具店「武居三省堂」である。内部は正に「釜爺の仕事場」である。趣があるのが、左サイドの壁に無数に並ぶ、木製の引き出しである。釜爺が長い腕を伸ばし薬草を取り出したあの引き出しである。

 

 日高はしばらくジブリの世界に浸っていたが、現実に戻った。自分がしっかりと生き抜いて、仲間を集めなければならない。それができないと、このような文化はすべて朽ちてなくなってしまうに違いない。

 

 休憩をした後、武蔵小金井駅に向かった。ここは大きな駅で、商店街の規模もこの地区で最大かもしれない。ただし、探索は行わなかった。十分に食料と酒類を調達できていたからである。死体も多く、腐臭が強かったが、がんばってポスターを張り付けた。

 南口の直前に交番があった。万一に備えて、拳銃と弾丸を入手できないかと、内部を調査した。個人ロッカーをバールでこじ開けたが、得るものはなかった。頑丈そうな金庫のようなロッカーがあった。この中に目的のものが入っている可能性が高い。バールでは歯が立たなかったので、そのまま車に積み込んだ。吉祥寺に帰って、ビルの上から落とせば中身を取り出せるだろう。

 次の駅が最後の国分寺である。地名は聖武天皇の命により建立された国分寺(武蔵国分寺)がこの地にあったことに由来する。この駅も商店街の調査は省略した。国分寺ではポスターを張った後、南口の「都立殿ヶ谷戸庭園」に立ち寄った。日高は日本庭園をいくつか見てきているが、本園のような構造のものは初めてである。国分寺崖線と呼ばれる段丘崖(ハケ)とその下からの豊富な湧水を生かして築かれている。上下差が大きな回遊式林泉庭園である。桜には気づかなかったが、竹林を含む多様な木々が植えられており、国の名勝に指定されている。三鷹から国分寺まで桜を愛でながら、下り方面のポスターを張る作業を完了することができた。

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