今回はフグ卵巣がテーマである。
*初級:フグ毒はテトロドトキシン だが、作っているのは次のどれか。
1) フグ自身、 2) ヒトデ等の餌、 3) 海産細菌

*中級:フグ卵巣に関する次の記述について、誤りが含まれるものはどれか。
1) フグ卵巣は長い歴史をもつ食品であり、江戸時代から造られてきた。石川県、佐渡島(新潟県)、福井県高浜町等の名産品である。
2) フグ卵巣を2年以上の塩漬けにした後、1年以上糠または酒粕に漬けて解毒する。唐辛子を添えることもある。
3) 食品衛生法により食用が基本的に禁止されているフグの卵巣をこのような加工法で食品として製造しているのは、日本以外では韓国の一部で行われている。
4) 味は濃厚で米飯のおかず、酒肴とされるほか、うまみや塩気を活かしてお茶漬けやパスタなどの味付けに活用されることもある。
5) 細菌培地にテトロドトキシンを注入しても毒量は変化しなかった。実際とは条件が異なるため、減毒効果が微生物の働きによる可能性は否定しきれない。

*上級:フグ卵巣が食品とされるようになったいきさつについて考察せよ。


正答
*初級:フグ毒のテトロドトキシンは餌となるヒトデや貝類に含まれる。もともとはビブリオなどの海産細菌が作っている。これがヒトデや貝類に移り、それを食べたフグも毒を持つことになる。したがって、正答は3)になる。
 毒を持つ理由だが、卵から孵った稚魚を守るためとされている。大きな魚が食べようとしても、吐き出すのである。
 なお、本毒は非常に熱に強く、300 ℃以上に加熱しても分解されない。ヒトの経口摂取による致死量は1~2mgと極めて少量である。

*中級:1)の歴史は正しく、江戸時代にまで遡ることができる。2)の製造法も正しい。4)の食べ方に関する説明も問題はない。5)の減毒効果も正しく、なぜ毒がなくなるか不明というのが現状である。
したがって、3)の加工地域が正答になる。「韓国の一部」が間違いで、わが国だけなのである。

*上級:これは難しい設問である。色々調べたが、納得できる解答を発見することができなかった。
 そうであっても、問題としたからにはある程度賛同いただける解答があったからである。

 その内容はこうだ。中級問題に示した地域では魚を糠や酒粕に漬ける漬物製造を行っている。ある時、着け床の下から卵を持ったフグが出てきた。ずいぶん時間が過ぎているが、もしかしたら食べられるかもしれない。実際に少しずつ食べたらおいしかった。というのが、筆者の考える道筋である。
  臭気食品の「キビヤック」に比べればやや説得力に欠けるa)。もっと面白い可能性に気づいたら、本サイトのトップページ最下段からご連絡いただきたい。また、酵素の記事に、高峰譲吉博士の写真(切手)を追加したb)。
a)臭気食品 https://ameblo.jp/yk206/entry-12787734251.html
b)酵素って何だろう https://ameblo.jp/yk206/entry-12744055447.html
*発酵食品もの知り講座 https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/発酵食品もの知り講座
*中国ひとり歩記 4月4日より連載再開 https://www.foodwatch.jp/category/strategy/walkinginchina
*4/07日(株)テックデザイン「食品の腐敗変敗と防止対策」開催予定
*5/26日(株)テックデザイン「発酵食品の動向と新商品開発」開催予定