「人間の條件」(1959年〜61年)の小林正樹監督が、それ以前に製作していた反戦映画「壁あつき部屋」を見ました。


タイトルだけは知っていたのですが映画の内容は知りませんでした。

戦後間もない頃のBC級戦犯収容所の物語です。

1956年公開ですが実は1953年に完成していたそうなんです。

作品完成後、内容的に会社が監督に再編集を要求したのですが、監督は応じず政治的配慮から3年後の公開となったとのことです。

製作時の1953年は昭和28年です。

前年にようやく日本がGHQの占領から解放されたばかりです。

当時は、まだ収容所があり現在進行中だった頃のドラマです。

当時、よく完成できたなと思います。



松竹映画  1956年

上映時間 110分


脚色 安部公房

原作 BC級戦犯の手記

撮影 楠田浩之

音楽 木下忠司


出演

浜田寅彦

三島耕

信欣三

三井弘次

伊藤雄之助

小林トシ子

岸恵子



【あらすじ】
終戦後の巣鴨プリズンに服役しているBC級戦犯。その中の雑居房4B棟17号の6人の男たち、それぞれの戦時中の戦犯となった理由が回想形式で描かれます。
いずれも上官の命令で、いやいや現地の人、捕虜を殺してしまったものです。
そのうちの1人、山下の物語に焦点が当てられています。
彼も上官 浜田の命令で罪を犯しているにも関わらず、さらに裁判では浜田の嘘の証言で重労働の終身刑の判決を受けてしまいます。
ある日、山下に面会に来た妹から浜田が母と2人暮らしている実家に嫌がらせをしていることを知ります。
そして浜田を殺す決心をして脱走をしようとしますが失敗してしまいます。
その後、母が死亡したとの連絡があり服役している仲間の尽力もあって、1日だけの出所が許され故郷に帰ります。
浜田を殺すことを目的にしているのですが・・・


反戦映画としてのメッセージは充分伝わってきます。それでいて山下の出所後のエピソードはサスペンスとして緊張感があります。
また他の服役している男の戦時中の回想で、清純な少女との淡い恋のエピソードがあり、服役中も少女への思いは変わらず、いつか再会できることを生きる励みにしているのですが戦後の厳しい状況で少女は娼婦になっており性格も全くの別人になっています。その事実を知らない男の悲しさ、また戦争の怖さが伝わってきました。
その少女と娼婦を岸恵子さんが演じています。
またノンクレジットですが仲代達矢さんもエキストラ出演されているそうでしたが確認できませんでした。一般に知られている映画初出演と言われている「七人の侍」より前なんです。


またスゴイのが脚色を担当したのが作家であり「砂の女」(1964年)の脚本を書いた安部公房さんなんです。
小林正樹監督は「人間の條件」「切腹」「上意打ち−拝領妻始末−」「東京裁判」と社会の矛盾を題材にした映画が多くありましたが、監督デビュー間もない本作で既に描いているのを知ることができたことは、貴重な作品になりました。