「夜と霧」をようやく観ました。
 
 
DVDを購入しての鑑賞でしたが。
きっかけは、少し前に「関心領域」を映画館で観たからです。
今まで、観ることを何度か避けてきた感のあった「夜と霧」を今観なければ、機会がないかもしれないと思ったからです。
 
 
 
 
ところで、今年、現在(7月末)までに公開された映画の話題作の1本は、「オッペンハイマー」ですよね。
 
昨年7月にアメリカで公開され、日本での公開は、ずっと未定のままで、クリストファー・ノーラン監督作品だけに日本のファンは、その公開の動向が気になっていた人も多かったと思います。私も、その一人でした。
 
昨年末に、ようやく日本公開が発表されて、ほっとしました。
アメリカ公開の時から聞こえてくる「オッペンハイマー」の話題のひとつに「この映画は、広島、長崎の原爆の被害が描かれていない」とマスコミで何度か目にしました。
当時は、映画の情報もなかったので、何も言えるものでは、ありませんでしたが、正直なところ、何か違和感を感じましたね。
クリストファー・ノーラン監督が描こうとしていることと、何か違うのではないかと。勝手な想像でしたけど、そう思っていました。
 
「オッペンハイマー」については、日本公開時に、みなさん語り尽くされていると思いますので、今回はこの辺にします。でも、私の感想を、機会がありましたら、お話したいと思っています。)
 
今回は、「夜と霧」についてですが、その前に、少し「関心領域」について、お話しさせてください。
 
この作品も今年公開映画の話題作の1本です。

 
「オッペンハイマー」と同じ昨年、海外で公開されています。
 
2023年5月のカンヌ国際映画祭でプレミア上映され、グランプリを受賞しています。
今年のアカデミー賞では、国際長編映画賞を受賞で話題になりましたね。
また、音響賞も受賞しました。
 
 
2023年/アメリカ・イギリス・ポーランドの共同制作
アメリカでは、A24が配給なんですね。

上映時間115分(言語:ドイツ語・ポーランド語・イデイッシュ語)
 
スタッフ
監督 ジョナサン・グレイ
脚本 ジョナサン・グレイ
原作 マーティン・エイミス「関心領域」
音楽 ミカ・レヴィ
撮影 ウカシュ・ジャル
 
キャスト
クリスティアン・フリーデル
サンドラ・ヒュラー
「落下の解剖学」の奥さんです!こちらも、今年の話題作でしたね)
ラルフ・ハーフォース
 
 
 
 
アウシュビッツ収容所と壁を隔てて隣接する豪華な屋敷に住む、収容所長とその家族の日常生活が淡々と描かれています。
屋敷の壁の向こう側に何も動じないで平穏に日常生活をしていることが、何とも怖かったですね。
壁の向こう側は、いっさい映像にはでてきません
ただ、昼夜問わず、収容所内の様子が、遠く、かすかに、会話、銃声、叫び声が聞こえてきます。壁の向こうから、上がる煙で十分に異常な状況、臭いまでも、伝わってくるようでした。
アカデミー賞音響賞納得です。)
 
収容所長の家族の様子のほとんどは、低位置のカメラで固定されて撮影された遠景で、登場人物の表情、感情もあまり見えてきません。
 
屋敷内では、幹部たちは、今後の収容所について、普通の工場の作業の話をするかのように事務的に話し合いもしています。(「夜と霧」そうした屋敷の中の映像が少しありました)
 
私が、印象的だったのは、屋敷を生きがいにしている収容所長の奥さん(「落下の解剖学」の奥さん役のサンドラ・ヒュラー)の行動でした。
 
 
 
「関心領域」を観ていない方のために、この辺でやめときますね。機会があったら是非観てくださいね。
 
 
 
 「関心領域」「オッペンハイマー」とも第二次世界大戦を題材にした映画が昨年公開されたんですね。

映画制作は、相当な準備期間を要しますから、偶然、同じ年の公開となったんでしょうけど。
 
実際「関心領域」は、企画から公開までに10年を要したということです。
 
過去の歴史を描いた映画ですが、今の世界を描いた映画のようで偶然に製作され公開されたんですね。
 
「関心領域」は、ドイツ「オッペンハイマー」はアメリカの物語です。

映画の描き方は、2作品は、両極端でしたね。
 
「関心領域」は、登場人物も少なく、カメラも常に遠景で、セリフも余りありません。
 
「オッペンハイマー」は、ものすごい登場人物と洪水のようなセリフと編集で、いつものクリストファー・ノーラン監督らしく、時間は過去、現在が複雑で、説明的な、セリフも字幕もありません。
(いつものように映画についていくのが、やっとでした。実は、ついていけてなかっのかもしれませんけど)
 
2作品は、同じ戦争を題材にしていますが、直接的な戦争のシーンは、ありませんでしたね。
 
収容所、原爆の被害は、直接、描かれていませんでした。
それでも、戦争の怖さ、人間の怖さは、じゅうぶんに伝わってきましたね
 
2作品を鑑賞した後では、直接的なシーンが描かれていることは、考えられないと思いましたね。
全く印象の違う映画になってしまうと思いますもの。
 
 
それで、最初に、お話した「関心領域」を観た後「夜と霧」を思い出したんですね。

1956年/フランス
上映時間 32分
日本公開 1961年10月20日
 
 
 
スタッフ
監督 アラン・レネ
脚本 ジャン・ケイヨールほか
原作 ジャン・ケイヨール
ナレーター ミシェル・ブーケ
(大好きな「トト・ザ・ヒーロー」ですね
音楽 ハンス・アイスラー
撮影 ギスラン・ブロケ
   サッシャ・ヴィエルニ
 
ナチスがアウシュヴィッツ強制収容所でユダヤ人を虐殺したホロコーストを世界で初めて告発したドキュメンタリー記録映画だそうです。 
当時は、現在のように、映像などの情報がなかったので、世界には、大きな衝撃だったと思います。(私が思っているはるかに想像以上に)
 
32分の短編です。
撮影当時の収容所跡のカラーフィルムと、戦時中のモノクロのニュースフィルム、写真の構成になっています。 
最初に日本公開時には、残虐なシーンはカットされたそうです。
 
今までも、ホロコーストのドキュメントは、NHKなどで、見る機会は、何度かありましたが、テレビ放送は、制限がありますからね。
「夜と霧」で、初めて観る映像も多くありました。
 
還暦を過ぎて、この機会にDVDですが、鑑賞できたことは、よかったと思います。
(32分、本当に短時間ですが、壁の向こう側を観ておくと言うことです)
 
「関心領域」の映画のタイトルは、無関心に対する怖さ、観客の心の内を問われているタイトルなんだと思っていましたが、違うようなんです。
 
「The  Zone of Interest」(関心領域)は、ナチス親衛隊がアウシュヴィッツ強制収容所群を取り囲む地域を表現するために当時、使っていた言葉で、映画のタイトルのために考えられたのではないことを初めて知りました。

でも、やはり、お前は、どうなんだと問われている気がしますね、映画のタイトル。
 
この年になっても、まだまだ知らないこと観ていない映画がたくさんあります。
年齢的に時間が足りませんよ😭
反省しています。

本当に、映画は、昔から、いろいろなことを教えてくれる生涯の学校ですね。
(淀川さんが、よく言っていたことを思い出されます)