前回から、
不妊治療中でトラブルになった病院からの
転院のお願いは法律違反?
というテーマについて、
過去の裁判例を
数回に分けて
解説をしています![]()
(前回の記事)
第2回である今回の記事では、
簡易裁判所での判断内容を、
具体的に解説します![]()
なお、
この裁判は、下記の通り、
簡易裁判所→地方裁判所
の合計2回の審理が行われていますので、
それぞれでどのように判断がなされたのか、
について、解説していく予定です![]()
事案の概要(おさらい)![]()
✔️ 裁判例
第一審:
弘前簡易裁判所平成23年12月16日判決
(LLI/DB 判例秘書登載)
第二審:
青森地方裁判所平成24年9月14日判決
(LLI/DB 判例秘書登載)
✔️ 事案の概要
X1(妻)とX2(夫)は夫婦。
X1とX2はY病院で不妊治療を受けていた。
X夫婦は、採卵後、受精卵を培養した過程で培養器に事故が起こり、胚移植ができなかったことについて、Y病院の責任を求める、損害賠償等の裁判を提起した。
この裁判が起こされたことを受けて、Y病院は、同病院の事務方である医事課長から、X1に対して、転院と診療延期のお願いという文書を送付した。
X夫婦は、この病院からの文書の送付は、診療拒絶に該当し、医師法19条1項の応召義務違反に該当する違法な行為であると主張した。
そして、Y病院(と上記の文書を送付した医事課長)に対して、
慰謝料の支払いを求める裁判を提起した。
※当事者のアルファベットは実際のイニシャルなどとは全く無関係に記載しています。
今回の解説のキーワード
医師の診療拒否が認められる正当事由とは![]()
ポイント解説(前回のおらさい)
医師の応召義務とは![]()
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医師法第19条1項に規定されている、
診療に従事する医師は、
「正当な事由」がなければ、
患者からの診療の求めを拒んではならない、
と規定されている義務のこと![]()
応召義務の違反と認められるためには、
医師や病院の診療拒否という行為があったこと![]()
と
診療拒否に「正当な事由」がなかったこと![]()
という2つの点が必要となる![]()
「正当な事由」があるかどうかは、
主に以下の
3つのポイント
が重要![]()
1.緊急対応が必要であるか否か(病状の深刻度)
2.患者から診療を求められたのが診察時間内か時間外か
3.患者との信頼関係の有無
応召義務違反と損害賠償![]()
応召義務の違反の有無と、
診療拒否された患者の損害賠償請求が認められるかどうかは
【別の問題】
![]()
医師の応召義務違反を原因として、
患者に何かしからの
損害が生じた
と証明できて、
初めて賠償責任の問題となる![]()
弘前簡易裁判所の判断内容![]()
医事課長に対する訴えについて![]()
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まず、裁判所は、
X夫婦が、文書を送付した事務方の医事課長を、
応召義務違反として訴えていることについて、
応召義務は医師を対象としたものであるため、
医事課長は対象にならない、
と判断して、
この医事課長に対する訴えを退けました。
診療拒否の行為があったかどうか![]()
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次に、裁判所は、
病院から、
転院と診療延期のお願いの文書を送付したことについて、
夫であるX2への診療拒否にはならないものの、
文書の宛名になっている妻X1との関係では、
診療拒否に該当する
と判断しました。
理由![]()
この文書の内容は、
明確に診療を拒絶したとは言えないものの、
もともとの予約が入っていた診療を延期・取り消しており、
新たに予約をしないと診療を受けられない状態になったことから、
このような取り扱いは、
実質的に診療拒否といえる
と判断しました。
診療拒否に正当事由があったかどうか![]()
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診療拒否があったとすると、
その拒否に正当な事由がなければ、
病院の対応は、応召義務違反になる、
ということになります![]()
そこで、次に、裁判所は、
診療拒否に正当な事由があったかどうか
という点を検討しました![]()
結論![]()
![]()
裁判所は、診療拒否に、
正当な事由があった
と判断しました![]()
理由![]()
![]()
まず、裁判所は、
医師が患者に対して診療を行うにあたり、
患者との間の信頼関係が必要で、
信頼関係が失われたときは、
患者の診療・治療に緊急性がなく,
かつ、
代替する医療機関等が存在する場合に限り,
医師または医療機関がこれを拒絶しても,
診療拒絶に正当事由があると
考えるのが相当だと述べました![]()
そして、
本件の具体的な事情を検討しています。
本件では、
X夫婦が、既に病院に対して裁判を提起していたこと
その裁判の書類にX夫婦は、
Y病院の対応について、
「まったく誠意のない言い訳としか取れない態度に終始していた。」
という記載をしていたこと
以上の事情から、
Y病院との間の信頼関係が失われていた
と判断しています![]()
そして、本件では、
不妊治療を受けていたこと、その予約状況からしても、
直ちに治療をしなければならない緊急性がないこと
X夫婦が居住していた市区町村には、
他に治療を受けられる不妊治療クリニックが複数存在していたこと
以上の2点から、
裁判所は、
Y病院の診療拒絶には、
正当事由がある
と判断しました![]()
つまり、今回の
簡易裁判所は、
X夫婦の訴えを
認めませんでした![]()
(病院側の勝訴)
この裁判所の判断を踏まえると、
病院側との間でトラブルが生じた場合、
それが裁判に発展した場合は、
基本的に、以後同じ病院に通院するということは、
病院側に拒否された場合は難しい、
(ただし、地域に他の代替治療機関が存在しなければ別)
ということになりそうです![]()
まとめ ![]()
患者と病院間で裁判に発展している場合は、
基本的に病院側の診療拒否がやむを得ないと
判断される可能性が高い![]()
なお、今回紹介している裁判例は、
上記の通り、あくまでも裁判例の1つです。
実際の結論は個別のケースで異なる可能性があります。
実際の個別ケースについてお困りのことがあれば、
一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。
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【ご注意】
当ブログに記載されている内容はあくまでも筆者個人の見解であり、
全てのケースに必ず当てはまるものではありません。
ケースごとに色々な事情があり、
最終的に判断するのは裁判所であることはご留意ください。
したがって、実際のケースでお困りの際には、
当ブログの内容をそのまま鵜呑みにするのではなく、
弁護士に相談されることをお勧めします。
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