崖の上が崩落していたのだ。
登る人たちを上から見下ろす敵達の姿を見て愕然とした。
僕はとっさに駆け寄ろうとしたが、自分の足場の存在が危ういことに気づき、遊歩道を翔けだした。
遊歩道や橋の上では、覆面を被った兵が機関銃を持って集まりだしていた。空にはヘリコプターまでもが浮遊し、僕を視姦している。
後ろを振り返ることもできずに走った。
あと300メートるも走れば、先の橋の下へとたどり着けることが分かっていたからだ。
だがその想いとは裏腹に、正面からも追っ手がやってきたのである。
挟み撃ちの状態に陥った僕に小銃を向ける兵達。
先端恐怖症の僕は、手を挙げることしかできなかった・・・。
それからのことは、あまりに目まぐるしくて記憶が混乱している。
ヘリに乗せられ、僻地の真ん中を車で搬送されたこと。
車内では、日本語とは思えない言語で中東系の男2人が会話していたことくらいだ。
恐怖を通り過ぎて、地に足が付いていない気持ちの行き場を失っているうちに
僕は一軒のアパートへと連れ込まれた。
6畳ほどの間取りしかない一室で、7人の男が虚ろな表情でTV画面を眺めていた。
そこへ放り込まれた僕は、隠れて携帯で外部と連絡を取ろうと試みた。
所持していることがバレるのは危険だと、本能で察したからである。
そんなタイミングの悪いときに、1人の長身の男が部屋へ入ってきた。
とっさに後ろ手で携帯をしまい、対峙する。
男は、頭に僧侶が付けるような籠を被っていた。
籠には2列に3つずつの穴が空いているが、正直、息苦しそうだと感じた。
男は僕に向かって言葉を発した。
「この籠を被って、世界を見通してみるといい。」
わけがわからなかったが、逆らうことができずに籠をかぶせられた。
あまりの異臭に籠にてを突っ込んで、内側から口元を覆ってしまった。
が、気がつくと、別の施設へと運ばれ、白装束に着替えさせられていた・・・。
続く。