今日はカルシウムについて
①カルシウム
~おしながき~
カルシウムとは
過不足があるとどうなる?
摂取方法
食べ合わせ
カルシウムとは
カルシウムは、骨や歯の材料である。そう思ってはいませんか?実はそれだけではありません。カルシウムはすべての生命活動の中心的役割を果たしているミネラルなのです。
体内で重要な働きをするカルシウムは、骨にしっかり貯蔵されています。そして例えカルシウムを長い間食べなかったとしても、骨を溶かしてまでも濃度を保とうとするシステムが出来上がっています。
カルシウムの分布
カルシウムはからだの中で最も多いミネラルです。大人の場合、約1kgのカルシウムが存在するといわれ、そのうちの99%が骨や歯に、残りの1%が血液中や細胞に存在します。
- 骨や歯の材料となる
- イライラやストレスなどを静め、神経を安定させる
- 筋肉(平滑筋を含む)の収縮に不可欠
- 体内のイオンバランスを正常値に維持する
- 体内の浸透圧を一定に保つ
- 血液凝固促進作用
- 心筋の機能を正常に保つ
- 抗アレルギー作用
カルシウムはさまざまな反応の引き金になる
カルシウムで最も重要なことは、細胞内:細胞外=1:10000という割合で存在しているということです。
この割合がきちんと保たれることによって、ホルモンや神経伝達物質などがきちんと分泌されたり、筋肉が鋭敏に動いたりという反応がスムーズにできています。カルシウムはいろんな反応の引き金の役割を果たしているのです。
カルシウムの吸収
食品から摂ったカルシウムはまず胃酸などによって溶かされ、主に小腸で吸収されます。小腸上部の吸収には活性型ビタミンD3が必要です。
こうして吸収されたカルシウムは、いざというときに備えて骨に蓄えられていきます。
カルシウム吸収促進因子と阻害因子 ~CPPとカルシウム~
カルシウムを吸収するとき、小腸下部にリン酸があるとこの2つがくっついてしまい、カルシウムが吸収されにくくなってしまいます。
CPPはこのリン酸とカルシウムがくっつく邪魔をし、カルシウムの吸収率を上げてくれます。
カルシウムの主な働き
- 骨、歯などを形成
- 血液凝固
- 筋肉収縮
- 神経の興奮の抑制
- 細胞の機能調節
- 血圧上昇の防止
カルシウム不足の症状
カルシウムが不足すると次のような症状や病気が起こる可能性が出ます。
- 小児のくる病
- 骨粗鬆症
- 心疾患
- 高血圧症
- 動脈硬化
- 妊娠高血圧症候群
- 認知障害
- 免疫異常
- 糖尿病
- 肥満
- 腫瘍
- 軟骨の変性と変形性関節症
カルシウムが不足すると増える!? ~カルシウムパラドックス~
カルシウムが不足すると起こる、カルシウムパラドックスについてみてみましょう。
カルシウムが足りなくなると、からだは骨からカルシウムを溶かし出します。そして溶け出したカルシウムは血管に入り、細胞に運ばれていきます。このとき、細胞にある普段閉まっているカルシウムの通り道がホルモンの関係で開きっぱなしになり、細胞内にカルシウムが流れこんでしまいます。その結果、実はカルシウムが足りないのに細胞内のカルシウムが増えてしまうという逆説が起こります。これをカルシウムパラドックスといいます。パラドックスとは逆説という意味です。
カルシウムパラドックスが起こるとどうなるのでしょうか?
カルシウムパラドックスが起こると、カルシウムの1:10000という大切なバランスが崩れ、細胞がびっくりしてしまいます。そしてその結果、ホルモンなどの分泌の障害が起きたり、筋肉の動きに影響が出たりします。また、細胞の中にカルシウムがたくさんある状態が続くと、ついには細胞が死んでしまったりもします。カルシウムが骨から出続けると骨粗しょう症、カルシウムが血管にたまれば動脈硬化や高血圧、脳にたまればアルツハイマーの原因にもなるともいわれています。
「カルシウム不足」と言われて思い出すのが骨がスカスカになる骨粗しょう症ですが、それ以外にも、動脈硬化や高血圧、糖尿病などの病気、老化の原因となってしまうおそれがあるのです。
日本人はカルシウム不足?
日本人にカルシウムは足りているのでしょうか。
残念ながら、カルシウムは日本人に万年不足する栄養素となっています。平成21年の国民健康・栄養調査(厚生労働省)によれば、カルシウム摂取量の平均は約500mg強( 20歳以上男女)です。
日本人が摂った方がよいカルシウムの量は表のようになっています。これから見ると、平均500mgでは毎日150~300mgも足りないことになってしまいます。 生活習慣病予防のためにも、カルシウムは意識してしっかり摂りましょう。
せっかく摂ったカルシウム無駄にしていませんか?~リンとカルシウム~
リンは魚類、乳製品、大豆、肉類など一般的な食品に広く含まれている成分ですが、スナック菓子や冷凍食品、加工食品などに含まれる過剰なリンは、体内に入ったカルシウムを排泄してしまいます。リンの過剰摂取には気をつけましょう。
また、精製された糖を摂りすぎると、食事で摂取したカルシウムの80%近くが体外に排泄されてしまうことがあります。
骨の健康とカルシウム
骨の健康を保つのに、カルシウムが必要です。
骨はミネラルと骨気質でできています。そしてこのミネラルは主にカルシウムとリン酸でできています。この中にはマグネシウムも入っていて、骨の強さを保ってくれています。
よりよい骨の健康のために、カルシウムだけでなくタンパク質、マグネシウムもしっかり摂りましょう。
- ミネラル
- 主にカルシウムとリンでできています。ここにマグネシウムが入っていて、骨の強さを保つのに役立っています。
- 骨気質
- 主にコラーゲンでできています。ほかにオステオカルシンやオステオポンチンなど
マグネシウムと一緒に ~カルシウムとマグネシウム~
マグネシウムはカルシウムのブラザーイオンとも呼ばれるほどカルシウムの働きに重要な役割を果たしています。
カルシウムとマグネシウムが一定の比で存在することが、私たちのからだの調子を整えてくれるのです。
カルシウムを摂るときはマグネシウムも一緒に摂りましょう。
摂取するときの比はカルシウム:マグネシウム=2:1とする文献が多いですが、その比は1:1がいいのではないか、という意見もあります。
アルツハイマーとカルシウム
社会的に問題になっているアルツハイマー型認知症ですが、アセチルコリンという神経伝達物質が関わっているという仮説があります。
このアセチルコリンを分解する酵素アセチルコリンエステラーゼの分解と合成にカルシウムが関わっていることが報告されています。
ストレスにはカルシウム
ストレスによってカルシウムとマグネシウムは体外にすてられてしまいます。
ストレスの多い人は、意識してカルシウムとマグネシウムを摂りましょう。(西牟田守他、(1998)マグネシウム、7,123-132)上2図は、午前と午後各2時間30分を4℃の部屋で過ごした(環境的ストレス。n=12)。
対照は同一の食事でストレス負荷なしの日の値。
下2図は、午前と午後3時間、大学生女子12名が小学3年生の計算ドリルを解いた(精神的ストレス)。
過不足があるとどうなる?
カルシウム欠乏による骨の形成障害として、子どもではくる病が、成人では骨軟化症が知られています。欠乏に至らなくても不足状態が長く続くと、成長期であれば歯の質が悪くなって虫歯になりやすくなったり、あごの骨の発育に影響が出たりすることがあり、成人では骨量が減少し、骨折や骨粗鬆症のリスクが高くなります。慢性的なカルシウム欠乏になると、骨から血液中へのカルシウムの溶出が過剰になり、余分なカルシウムが血管に沈着するため、動脈硬化や高血圧の原因ともなります。
一方、通常の食生活を送っている限り、カルシウムの過剰症が起こることはまずありません。ただし、サプリメントなどで過剰に摂取した場合、腎臓結石や軟骨組織の石灰化を引き起こしたり、鉄、亜鉛、マグネシウムなど他の栄養素の吸収阻害を招いたりすることがあります。カルシウムのサプリメントを単独で大量に摂ったケースでは、心血管疾患の発症リスクが高まったという報告もあり、注意が促されています。
どのくらい摂ればいい?
カルシウムの食事摂取基準は、推奨量が下記のように設定されていますが、現状では男女共に全ての年代でこの数値を満たしておらず、日本人に不足しやすい栄養素といえます。カルシウムは体内で合成できず、吸収率も年齢と共に低下するため、毎日の食事から十分な量を摂取するよう心がけましょう。特に、骨粗鬆症のリスクが高まる閉経後の女性、高齢者、妊娠中・授乳中の人、成長期の子ども、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病が気になる人は、多めの摂取をおすすめします。
カルシウムは牛乳やチーズなどの乳製品、小魚、干しエビなどの魚介類、大根の葉や小松菜などの葉物野菜、大豆製品、海藻類などに多く含まれます。
●カルシウムの1日の食事摂取基準(推奨量)
男性
18〜29歳:800㎎
30〜74歳:750㎎
75歳以上:700㎎
女性
18〜74歳:650㎎
75歳以上:600㎎●耐容上限量
成人:2500㎎
効率よく摂るポイント
食事からのカルシウムの吸収率は25〜30%程度です。牛乳・乳製品は、含有量も多く吸収率もよいのでおすすめです。小魚、豆類もよいカルシウム供給源となります。ほうれん草にはシュウ酸というカルシウム吸収を妨げる物質が含まれているので、吸収率が悪くなります。カルシウムを摂りたい時は、ほうれん草は一緒に食べないようにするとよいでしょう。一方、アブラナ科のブロッコリーやチンゲン菜は、シュウ酸を含まず、吸収率も高いです。食塩やタンパク質の過剰摂取は、カルシウムの排泄を促進するので注意しましょう。
骨粗鬆症の予防には、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、骨形成に必要なビタミンKも欠かせません。日光を浴びてビタミンDの体内での産生を促すだけでなく、運動をして適度な負荷をかけることで丈夫な骨がつくられます。カルシウムのサプリメントやカルシウム強化食品を利用する場合は、含有量を確かめ、耐容上限量を超えないようにしましょう。
摂取方法
カルシウムは夜に
カルシウムは、骨・歯の形成や、神経や筋肉の正常な機能に必要なミネラルの一つです。しかし摂取したカルシウムは、腸管でしっかりと吸収されず半分以上は排泄されてしまいます。一般的にカルシウムの吸収率は20-40%程度と言われており、年齢が上がるにつれ吸収率はさらに低くなります。特に高齢者は、骨強度が低下し、骨粗鬆症やフレイル(虚弱)が起こりやすく、一度骨折してしまうと回復も遅くなりQOLの著しい低下をもたらします。そこで、せっかく摂取したカルシウムを効率よく体内に取り込む方法を知っておくことが大事になります。ここでは、時間栄養学として、カルシウムの摂取タイミングの話をします。
結論を言うと、カルシウムは朝よりも夜の方が、吸収率が高い可能性があります。まだマウスを用いた動物実験の研究報告しかありませんが、小腸のカルシウムを吸収する機構は、体内時計による調節を受けており、朝と夜でその機能が異なっていることが分かってきました。カルシウムを特殊な方法で標識して、マウスに投与し、その後の血液への吸収を見てみると、マウスが起き始めた時間帯(朝)よりも、寝始める時間帯(夜)の方がカルシウムの吸収が高い結果でした(1)。
別の研究では、カルシウムと一緒にイヌリンという水溶性の食物繊維を投与し、尿中のカルシウム排泄を観察しました(2)。その結果、やはり朝よりも夜の時間帯の投与で、尿中のカルシウム濃度が高まっていました。カルシウムはカルシウム単体で摂取するよりも、食物繊維やタンパク質、ビタミンDなどと一緒に摂取することで、吸収効率が高まることが知られています。この実験で使用された食物繊維は、腸内細菌によって短鎖脂肪酸に変わり、小腸や大腸のpHを下げます。腸管内のpHが下がることで、カルシウムの溶解度が上がり、吸収効率が高まります。このメカニズムはカルシウムだけでなく、鉄や亜鉛などのミネラルにも当てはまります。よって、骨の健康維持には、夕食時や寝る前にカルシウムを意識して摂取することが大事です。
食べ合わせ
カルシウムの吸収を高める
カルシウムは、タンパク質などに比べると吸収率の低い栄養素です。
カルシウムといえば骨を形成する重要な栄養素ですが、体内で作ることができません。
カルシウムが不足すると、骨がスカスカになる骨粗しょう症につながります。
食品の中で最もカルシウムの吸収率がいいのが牛乳で40%となっています。
次に小魚で33%、野菜は19%となっており、食品によって吸収率がずいぶん違うことがわかります。
カルシウムは単体では吸収率が悪いのですが、ビタミンDを摂取することで吸収率が高まります。
ビタミンDは、鮭、キノコ類、カツオ節、卵などに多く含まれている栄養素です。
ビタミンDは食品からも摂取できますが、太陽の紫外線を浴びることで皮膚からも作り出すことができます。
日焼けするから嫌だという方もいらっしゃいますが、たまの「日光浴」は、カルシウムの吸収率を上げるのに役立ちます。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに