ファンの間では
まだ気持ちの整理がつかない人も多いようです。

まぁ、実際にユニフォームを着て試合に出れば
必然的に応援してしまうでしょう。

私はむしろ
新井本人の気持ちに不安を感じます。

ファンの間では
「どの面さげて」
みたいな言われ方をしていますが

私が思うに
新井は 「」 とか 「大義名分」 といった
ことを、むしろ
普通の人より重要視するタイプだと思います。

こういうタイプは往々にして
自分にウソをついてしまうことがあります。

7年前の新井の心情を推察しますとですね

チームの方針に、なんらかの不満があったことは
確かでしょう。
しかしそれは新井の価値観では
「我慢すべきこと」なんです。
中心打者である自分が率先して変えなければ
いけないことなんです。

さらに言えば
FAでチームを去るということ自体
新井の価値観にはそぐわないのかもしれません。

また、2003年に移籍した金本が
2003年と2005年に優勝、2006年と2007年も
終盤まで優勝争いをしていたことを
羨む気持ちは当然あったでしょう。

しかし新井の価値観では
そういう気持ちは「みっともないこと」です。

チームに不満がある、もっとお金がほしい、
優勝争いできるチームに行きたい、金本さんと
同じチームに行きたい

こういうことは、たとえ本音であっても、
新井のような人間は
口にすることができません。


その結果、7年前の会見では

環境を変え、自分自身、野球人として
前に進みたい


という言葉を選びました。

これはこれでいいと思うんですよ。

しかし、その場の空気が
「もっとしゃべらなければいけない」
ような感じになってしまい

その結果

喜んで出て行くわけではないのを
わかってほしい


とか

つらいです・・・

という言葉を選択してしまったんですな。


自分にウソをつくのは、本当につらいです。
私も経験ありますが、じつにきつい。

それが何日も続くと
いつの間にか 「被害者意識」 が出てきます。

加害者も自分自身なんですが、それでも一応、
被害者ですからね。

しかもあのときは
会見前から、阪神移籍が規定路線みたいに
報じられてしまい
引っ込みがつかなくなった可能性もあります。

「引っ込みがつかない」というのは、周囲からすれば
理解できない心情でしょうね。
周りが何を言おうと関係ないじゃないか
というのはそのとおりなんですが

「筋」を重んじる性格だと

ここまで来て後戻りできない

って思ってしまうんです。


もし7年前

「広島に残るのなら、会見でこういう言い方を
するといいよ。出て行くなら、こういう言い方を
しなきゃダメだよ。」

っていうアドバイスをしてくれる人がいたら
結論が変わった可能性もあるでしょうし
仮に阪神に移籍するにしても
あそこまで後味悪い形にはならなかったはずです。


私も経験あるんです。

最初の転職のときですが
転職先から採用の連絡を受けてから
迷いが生じました。
しかし、ヘッドハンティングされたのならまだしも
自分で応募した転職において、それを断る
ってアリなのか?という、今思えば笑ってしまう
ような気持ちが強くありました。
それに、一度こういう動きを見せてしまったら
今後、仕事がやりづらくなるのではないかとも
思いました。
勤務先の慰留の仕方も、型どおりのもの
でしたしね。

そして1年半後
転職先でも同じことが起こりました。
その際、当時の社長は

「実はうちも、この前内定出した人に
断られた。これこれこういう経緯があり、
考え直したと言ってきた。納得できる内容
だった。」

という話をし
断ることは非礼ではないということを
示してくれたことで
私は残る決心がつきました。
それがよかったかどうかは、10年以上経った今でも
疑問ではあるんですけどね(笑)。


まぁ、サラリーマンだった私と
個人事業主のプロスポーツ選手である
新井とは比較できないかもしれませんが

少なくとも、新井の中に
7年前の後悔があった のは
間違いないでしょう。

阪神に行ったことは後悔していなくても
「筋を通すつもりだったのに裏目に出た」
一連の経緯については悔いているはずです。


年俸2000万円での復帰というのは
新井らしい 「不合理な選択」 です。
戻るにはそれぐらいの条件でないとダメだ
という気持ちがあり
それが「筋」なんでしょう。

でも、それが心配なんですよ。

まず
本人にとって重要度の高い「筋」を重んじる選択
をしたことで
それだけで満足してしまう可能性があります。

それと
年俸2000万円で、レギュラーの確約もないというのは
やっぱり厳しい条件ですよ。
本音では不満が大きいかもしれません。
しかしその不満は表に出せません。
自分の内に溜めて、そして被害者意識になって、
モチベーション低下・・・みたいなことになりかねません。

そこまでいかなくても
「一度裏切った立場」
という自責の念が強く残っている可能性は高い。
そうなると「卑屈」になるんですよ。

正直、7年前と比べて、7つ年を取っているのですから
選手として、大きな期待はしづらいです。

しかし、7年の間に
「広島に居続けたら学べなかったこと」
を学んだのは間違いないですし
「客観的に、カープを見てきた」
ことも事実。

だから
「経験豊富なベテラン選手」として
若手にいろいろ伝えてほしいんですよ。
大いに出しゃばってほしい

卑屈になってしまったら、そういう働きは
できません。


不合理な選択でも
充実感があれば満足度も高くなります。

過去を引きずらず
卑屈にならずに
存分に働いてもらいたい。

そう願っております。