まずは、今日出た記事をそのまま記載します。Yahooニュース

にあった、時事通信社の記事です。


財務省は26日、全国財務局長会議を開き、各地域の

2010年10~12月期の経済情勢を踏まえ、景気の総括判断

を前回報告の「持ち直し」から「足踏み状態」に下方修正した。

エコカー補助金の終了など政策効果の息切れによる

企業の生産・販売活動の低迷が主因。



次に…

日銀の金融経済月報について。同じくYahooにあった、

ロイターの記事です。


日銀は26日、1月の金融経済月報を公表し、景気の

先行きについて

「改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな

回復経路に復していく」との見通しを明らかにした。

従来の景気判断を上方修正したものではないが、踊り場

から脱却する確度が高まったため、「景気改善テンポの

鈍化した状況がしばらく続いた後」回復する、との

12月の表現を改めた。
1─3月は、エコカー補助金終了の「反動減の影響が

徐々に薄まるとみられることに加え、電子部品・デバイス

でも在庫調整が進ちょくすると見込まれる」とし、

生産が、統計上高めに数値が振れる影響を除いた

「実勢ベースで増加に転じる」と予想。先行きの生産に

ついても「緩やかな増加基調に転じていく」としている。

景気の現状については、「緩やかに回復しつつある

ものの、改善の動きに一服感がみられる」と前月の

判断を据え置いた。前月は「下げ止まっている」と

していた住宅投資について、「持ち直しに転じつつある」

とした。輸出は11月まで実績を反映し

「やや弱めとなっている」とした。



そして…先週(21日)に出た、政府の月例経済報告について

の記事(ロイター)です。


政府は21日に発表した1月の月例経済報告で

「景気は、足踏み状態にあるが、一部に持ち直しに向けた

動きがみられる。ただし、失業率が高水準にあるなど

依然として厳しい状況にある」とし、基調判断を上方修正した。

上方修正は2010年6月以来7カ月ぶり。各論では

鉱工業生産を上方修正した。 
生産については「下げ止まりの兆しがみられる」とし、

「このところ減少している」から上方修正した。上方修正は、

2009年6月以来1年7カ月ぶり。鉱工業生産指数は11月、

輸送機械工業など自動車関連がけん引して前月比プラス

1.0%と上昇に転じ、12月、1月もプラス見通しとなっている。

内閣府幹部は、昨年秋ごろからの輸出の減少、

エコカー補助金終了の影響を背景に、景気は足踏みと

なっているとの認識を引き続き示したが、自動車の

販売・生産に底打ち感が出てきていることを踏まえ、

全体の基調判断を上方修正したと説明。

これまでの判断は「景気は、このところ足踏み状態と

なっている。また、失業率が高水準にあるなど厳しい

状況にある」だった。




う~む…

なんなんでしょう、この違い。

冒頭の景気の総括判断は「直近の過去」の話、

金融経済月報や月例経済報告は「直近と、少し先

までの話」という、時間軸の違いはありますけどね。

それにしても、こうまで相反する見方が出るのは

珍しいことです。


財務省としては、「景気が低迷している、だから

税収が少ない」ということを主張したい。

日銀や政府としては、政策余力がないので、

「景気が上向いているので、政策の必要性がない」

ということを主張したい。

こうした意図が見える、「恣意的な景気判断」と

言えるでしょう。



わからないのがね。金融経済月報や月例経済報告

にある「生産の底打ち感」ってやつ。

根拠がわからないんですよね。


11月の鉱工業生産指数が前月比プラスになったこと

に言及していますが、前月比は「季節調整値」による

ものです。季節調整値は人の手によって作られる数字。

実態を表すかどうか、専門家の間でも不透明です。

少なくとも私がシンクタンクに在籍した頃は、ほとんど

アテにしていませんでした。


そして製造工業生産予測指数。

これは、一部企業を対象に当面の生産計画を

聞き取り、それを指数化したもの。

サンプル数が少なく、しかも「計画」ですので、

実績と大きく乖離することはしょっちゅうです。


少なくとも、「鉱工業生産指数が前月比プラス」

「製造工業生産予測指数がプラス」といったことは、

景気判断の材料になりえないものです。

弱い根拠によって、「景気判断の上方修正」と

捉えられるような内容を文書化することに、

大いに疑問を感じます。