糞道は「白契」--胡同トイレ物語④ | いーちんたん 

糞道は「白契」--胡同トイレ物語④

糞夫らはすべて「某街某巷の便、某人の拾取に帰す。他人勝手に取るべからず」の証明書を所有し、他の私有財産と同様に売買、譲渡、相続、賃貸できる権利となった。



もっともこの権利は、あくまでも非公式のものである。北京城内の不動産でさえ所有権を認めなかった清朝という政権が、いわんや便所の「汲み取り権」を、だ。



清朝は北京城内の居住を満州族を中心とした「旗人」のみに制限し、「旗人」らにも城内の不動産の売却を禁止していた。しかし時代が下るにつれて困窮し、家を手放す旗人が続出、さすがに漢族に売ることはタブーだったが、旗人同士で売買関係が生まれた。複雑な売り買いの経緯を繰り返した所有権について、正式な権利がないことでトラブルが続いて、どうにもこうにも処理できなくなり、最終的には認めざるを得なくなる。



この際、非公式な契約は「白契(バイチー)」と呼ばれ、これに対して正式な権利書は「紅契(ホンチー)」といい、区別された。便所の「汲み取り権」が「白契」でしかなかったことはいうまでもない。



汲み取り権の1区画は、1「糞道」の単位で呼び習わし、その持ち主は「糞道主(フェンダオジュー)」と言った。大規模な糞道主になると数百戸、小規模であれば数戸のみという場合もあった。




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           写真: 友人・女優の土屋貴子さんのブログ より。安陽に向かう途中のトイレ。



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