実現した政策はもちろんのことですが、政治家としての抜群のセンスが光るバイデン大統領なのです。

 

バイデン大統領の選挙戦撤退から始まり、ハリス副大統領が民主党候補者として選出されるに至ったこの数日間で、様々なことがわかってきました。

 

撤退声明を出した直後(20分後でしたか?)、カマラ・ハリスを支持するという声明を出したところがまず何と言ってもすごいと思った点です。というのも、民主党にはハリスを支持する声明をなかなか出さないNancy PelosiやBarack Obamaがいて、彼らの理屈はオープンプライマリーを実施して複数候補者間の競争がないといけないという点にありました。何を言うのかと耳を疑いましたね。時間がないのに、そんな複雑なことをやって何になるかということや、似たような主張をする候補者が出てくるに決まっていてその間の競争などどれほどの意味があるのかということが、多くの論者に指摘されていました。

 

PelosiやObamaのような意見を封じ込めるために、バイデンは直ちにハリスを支持すると声明を出したのでしょう。なんという見事な政治判断でしょうか。あのPelosiやObamaより一枚上手だったことを示しています。これにより一気にハリス支持が強まっていきました。実際にハリスが民主党の大統領候補になったわけですが、トランプはハリスとのディベートはしないなどと言っているようです。トランプ対策としてのハリス候補は最強なのかも知れません。もっと言えば、バイデンがハリスを副大統領にしたことがそもそもトランプ対策だったと言えそうです。強い女性に弱い男が勝てるわけがないと皆が言っていますよね。

 

さらに笑っちゃうのは、MAGAたちが選挙戦で大々的に反バイデンを繰り広げるためにTシャツやら何やらたくさん作ったのに、それが全部無駄になったことです。バイデンを訴えるとか言っているらしいけど、これほど笑っちゃうことはありませんよね。

 

さらに注目すべきは、バイデンが撤退を表明するタイミングをどのように考えていたのかという点です。トランプとのディベートでのパフォーマンスが良くなかったために、バイデンは撤退すべきという民主党内の意見は強まっていきました。それに対してバイデンは自分はやめない、続行するとの立場を崩しませんでした。愚かな人間にとっては、年寄りが自分の地位にしがみつくように見えたようですが、それは完全に間違っていると思います。

 

バイデンはまず、共和党大会が終わるのを待っていました。トランプが候補として選出されるのを待っていたわけです。そしてNATOのサミットに出席しました。外交上、これが自分の花道だと言うことでしょう。そして、これらが終わって民主党大会が迫る中で初めて撤退を表明する。すごいシナリオだと思いませんか?

 

バイデンと戦うつもりで自信満々だったトランプは完全な肩透かしを食らったわけですね。ハリスを相手に選挙戦のストラテジー(そんなものがトランプ陣営にあるとして)を立て直さなくてはなりません。prosecutorのハリスとconvicted felonのトランプで、どちらに勝ち目があるというのでしょう。

 

今日あたり、ThreadsにはRed Stateの有権者たちがハリスを当選させるべく、自分は60歳の男性でLGBTだ、とか自分は68歳の白人の主婦である、と言うように自分を紹介した後で、自分に与えられたassignmentはわかっているという投稿をしています。こういう無数の投稿を見かけました。

 

急速にハリス候補を中心とする動きが活気を帯びてきました。熱い政治の季節となりそうです。

 

それにしても、こうした民主党の盛り返しを可能にしたバイデン大統領の政治家としてのキレに改めて感動を覚えざるを得ません。