今からもう20年近く前、2005年から2006年にかけて、マサチューセッツ工科大学のSecurity Programというところで客員研究員をしていました。

 

その時に多くを学んだ教授陣は今でも感謝しかありません。その1人のOwen Coteが死去したというニュースを今朝知りました。ずっと車椅子で生活をしていて、大学では学生たちの介助を受けながら授業をしていました。障害を持ちながら、いつも明るくて気軽に話ができた人でした。

 

日本では安全保障の根幹をなす軍事について誰も教えてくれません。東京大学では軍事研究はしてはいけないことになっていて、時代錯誤もいいところです。今でもそのルールが生きているのか知りませんが、とにかく学問の世界に極めて強い統制が敷かれてきたことに間違いはないと思います。

 

私がMITを選んだ理由は軍事研究の基礎、兵器のこと、戦術のことなどを学びたかったからです。Owenの授業ではまさにそうしたことが学べてとても新鮮な気持ちで1年間を過ごすことができました。テキストの一覧を見ただけで胸が躍ったことを覚えています。第二次大戦の戦略爆撃から始まって、当時イラク戦争真っ只中だったこともあり戦争の実態についても学べて非常に嬉しかった。

 

もちろん情報量があまりにも多くて、全てを咀嚼することはできませんでしたが、その時学んだことは今でもロシアや中国の軍事行動を見るときに役立っています。

 

日本には軍事の専門家もたくさんいますが、どうしても私はそういう人たちの言うことを信じられません。時には的外れ、間違っていると思うこともあります。Owenは、安全保障や軍事研究で何を考えなくてはいけないかという根本のところを教えてくれました。いわゆる軍事オタクとは全く違う世界を見せてくれたのだと思います。

 

Owenのプライベートな部分は全く知りませんが、冥福を祈りたいと思います。