この本、どこかで書評を読んで興味を持ちました。

 

健康や医療に関する情報が氾濫していて何を信じたら良いのかわからないことが多いと思いませんか?山本健人さんがソーシャルメディアで発信している内容や、この本の内容は信頼できると思います。

 

面白かった箇所を部分的に抜き出すと次のようになります。

 

例えば肝臓について。肝臓は500以上の化学反応を担う人体の化学工場であり、その機能を全て肩代わりできる機会は実用化されていない、機能があまりにも多様すぎるからである。なるほど。これだけの簡潔な表現で臓器を説明できるなんてすばらしいですよね。

 

また、人体は一分間に約250mlの酸素を消費してエネルギーを生み出しているが、常に呼吸し続けないと約2分で底をついてしまう。体の中に酸素を貯蔵しておける場所はなく、その意味では人体は恐るべき「自転車操業」をしていることになる。呼吸は実は非常に効率の悪い営みである。食事は一日3回で済むのに呼吸は25000回必要だからである。(まあ、1日3食以上とる人も多いかもしれませんけどね。)

 

怪我については次のように書いてあります。人間が生きる限り、外傷は免れられない。人体は自然界にある物質を寄せ集めた有機物にすぎず、驚くほどに壊れやすい。これはハッとしました。一昨年肋骨を折った時に実感しました。骨って簡単に折れるんです。

 

歯の危険性について。私たちは普段食事をする時に何気なく食べ物を噛んでいますが、その歯の力というのはものすごいものなのだそうです。例えばにんじんを手で握り潰そうとしても潰せませんが、噛むことで簡単に食いちぎれます。硬いお煎餅やナッツ類をぽりぽりと食べることからもよくわかります。口の中にはバイキンがたくさんいるので、特に動物に噛まれると非常に危険だとのことです。

 

酸素をたくさん必要とする脳は体の一番上にあって、心臓から血液を重力に逆らって送り込まなくてはならない。非常に理にかなわない作りになっているとのことです。立ちくらみを経験する人は多いですが、立ちくらみはなぜ起こるのかではなく、問われるべきはなぜ普段立ちくらみが起こらないのか、である。本当にそうですよね。

 

他にもいろいろと面白い箇所はあるのですが、上記に挙げた箇所が特に印象深く、人体についての理解が深まった気がしています。

 

最後に、あとがきのなかで著者が述べている言葉に感動しました。

 

医学を学ぶと2つの相反する感情を抱く。一つは「人体はいかによくできているか」であり、もう一つは「人体はいかに弱くて脆いか」であ     る。人体は進化の過程で優れた機能を持つまでになった。しかし一方で、「自然界にありふれた物質や、目に見えないほど小さな生き物によって人体の生命維持機能はあっという間に破綻する。自動車や電子機器に比べても、人体というのは想像を絶するほど脆い。」

 

医学というのは、ともすれば容易に壊れてしまう人体をそれでも守り抜きたいと願う試みだというのです。生命が誕生して約40億年。医学の進歩によって長生きができるようになったのはそれに比べればごく一瞬のことに過ぎません。それでもなんとか人体を守りたいという医学や医師たちの日々の戦いに敬意を表したいと思います。日本のような長寿社会になって、長生きが本当にすばらしいことなのかとふと思ってしまうこともあるわけですが、与えられた寿命を最後まで全うするのはやはりすばらしいことなのでしょう。医学の貢献とともに、私たちが「長く生きる」ことをどのように受け止めるか、その覚悟がとても大事ではないかと思うこの頃です。