絵本作家として有名なヨシタケシンスケさんを何かのきっかけで知って、とても関心を持って著作をいくつか読みました。

 

なるほどそうだよなあと思える箇所がとにかくたくさんあって大好きな作家の一人になりました。その一つを今日は紹介してみたいと思います。

 

ヨシタケシンスケさんはメンタルがとても弱いのだそうです。子供の頃から人に怒られたくないと思って生きてきたとか、自分で何かを決めるのが苦手で、誰かに言われればそれを受けてその範囲で自由に発想を広げていけるのだそうです。

 

私がなるほどと思った箇所は、メンタルが弱いので戦記とか読めない、戦争中に辛い思いをしてきた人たちのおかげで自分があるのだけれど、「その手記があまりにかわいそうで、僕はものすごく落ち込むんで読めない」という箇所です。他にも、犯罪被害者がどのような目にあったかなどを考えると、自分がのうのうと生きていて良いのかという気持ちになるらしいです。「我々が入ってはいけない部分に巻き込まれちゃった人々を、自分はどう捉えていけばいいのかって時に思うんだけど、それに向き合うことを避けているんですね。そういう人たちに対する何か罪悪感と、こっちは見て見ぬ振りしてごめんっていう気持ちが、どっかにずっとあるんです」と書いています。

 

でも知らないからできることもある、避けて直視してこなくて知らないからこそできることがあるという結論に到達しています。それが絵本作家としてのヨシタケシンスケさんを支えている考え方でしょう。この世に美しい音楽や絵や文学があるのもそういうことなのです。

 

これを読んで私は自分のこととちょっと関連づけて考えました。私も戦争、例えばウクライナ戦争の凄惨な部分についての映像はもちろん書かれたものを読むことができないのです。そのような衝撃的な出来事もきちんと受け止めなくてはいけないと、あたかもヨシタケシンスケさんのように思い悩むのですが、やはりできないのです。

 

かつては安全保障とくに軍事についても関心を持ち、アメリカのMITでも日本では教えてもらえない軍事に関する知識を大いに吸収しました。自衛官の知り合いもいるし、自衛隊のこともずいぶん勉強しました。今でも、軍事を知らずして安全保障を語ることはできないと思っています。

 

ところがある時点から、軍事の世界を直視できなくなってしまいました。それはヨシタケシンスケさんみたいにもともとメンタルが弱いからなのではなく、体調を崩して回復した2016年から17年にかけていろんなテイストが変わったことによるものです。ワインやビールが大好きなのに飲みたくなくなったり、アクション映画も大好きだったのに見たくなくなったりして、感じ方がずいぶんと変化しました。アメリカ政治を見るときも、民主党よりは共和党の視点を重視していましたが、トランプが登場するかなり前から共和党に嫌気がさし、それと反比例してオバマ大統領に対する評価は急上昇しました。今は心身ともにいたって健康ですが、お酒はやっぱりあまり飲みたくないし、アクション映画も見たくないし、暴力的な現実世界(言葉による暴力も含む)の細部を知りたくないことに変わりありません。共和党は大嫌いです。

 

国際政治の力の部分を理解するには別のやり方もあるのではないかと考え始め、安全保障を経済とりわけ金融面から見ようとしているのもそのあらわれです。年齢のせいかもしれません。自分や自分の周囲で起こったことが引き金になったのかもしれません。

 

ヨシタケシンスケさんの描くイラストの世界は、一見フワーッとしていたり、弱々しかったりするのに、とんでもなく鋭いところもあってびっくりすることがあります。だから、軍事研究者でなくとも力の世界をリアルに分析できるのではないかと思ってみたりするのです。