朝は雨だったので、テニスは中止となり、荒川区にある吉村昭 記念文学館へ行く。

天然痘やコレラなど、感染症の歴史は古く、新型コロナ同様、人々は苦しんだ。

ところが、これらと戦った人は、例外なく世間から疎まれ、注目もされずという境遇にあった。

笠原良策、中川五郎治、川尻浦久蔵という名前で天然痘と結び付けられる人はどれくらいいるだろうか?

 

企画展は彼らを小説で伝えた吉村昭の作品展である。

福井藩の町医者の笠原良策は命がけで雪の山を越えて痘苗を持ち込むという話は小説「雪の花」になり、

長崎から正規のルートで入る痘苗の10年も前にロシアルートの知識で種痘を行っていた中川五郎治は

小説「北天の星」となり、五郎治とは異なるルートでロシアで天然痘治療を学んだ安芸の国加茂郡川尻で

種痘を広めようとした久蔵のことは小説「花渡る海」となった。

 

一番驚いたのは、私の文学の師匠が創刊した雑誌「海」に、「花渡る海」が掲載されたということだった。

途中で海は終了し、書き下ろしになったという。

久蔵は正規のルートで種痘の治療具が入る35年も前にロシアから持ち帰り、治療に当たったが

広島藩の理解が得られず、世に知られぬままに生涯を閉じたようだ。

平成16年川尻小学校のPTAが中心となって、「花渡る海」を紙芝居にして子供たちに伝えているという。

随分年月がたったが久蔵も「はじめて故郷でよみがえった」と吉村は喜んだという。

新型コロナが流行っているうちに、これらの本を読んでみたい。

 

こんな日には If you are with me を聞きたい。