【いきにえに尽くる命は惜しかれど国に捧げて残りし身なれば】
  甦る松井石根の愛国の魂 南京戦の指揮官は親中派だった

早坂隆『評伝 南京戦の指揮官 松井石根』(育鵬社)

 本書は13年前に文春から出た『松井石根と南京事件の真実』の復刻版である。当時、拙評した記憶があるので、此の書評は今日的意義をかたることにする。

 松井石根は意外や意外、親中派だった。帝国陸軍きっての中国通が、なぜ反中軍人に評価替えさえたうえ、南京大虐殺の汚名を記せられ、処刑されなければならなかったのか。どこかでボタンの掛け違いがあった。

本書では松井石根の思想形成から処刑後、帰還した兵士たちの証言をあつめ、また膨大な資料と日記を精査して描きだしたリアルな松井石根像である。

 大虐殺の虚報はコレヒドール「死の行進」と同様のでっち上げで、アメリカは自らの残虐を隠すために広島、長崎、東京など五十都市の爆撃の死者に匹敵する日本軍の蛮行を『創作』する必要があった。前者は珈琲ブレークもあった遠足のようなものだったが、ホントのことを書くとアメリカが検閲する。

 評者(宮崎)は十年ほど前に、実際にこのコレヒドールからの『死の行進』のルートを高山正之氏らとツアーを組んで、たどったことがある。歩いて見れば分かる。パターン死の行進はでっち上げだったことが!

 中国は南京を政治カードに利用し、日本からむしり取る政治武器に転用した。

 アメリカでは本当の戦史を語ると歴史修正主義と言われ、罵られ、メディアから批判される。すなわち真実はいまもって語ることが出来ないばかりか、大東亜戦争を太平洋戦争と言わないとGHQの手先の某新聞から批判を受けるほどに精神のドン底にまだいる。

 さて本編の主人公である松井石根は清和源氏を先祖とする武家の流れ、今川藩では義元とともに桶狭間で戦死した。桶狭間の長福寺には義元と石根のご先祖、宗信の木像がある。石根は三回、この寺に参詣にきたという。

時代が移り、尾張藩の武士の家庭で産まれ、八男四女という多くの兄弟姉妹、石根は六男である。 
 松井の辞世は三首。

 「天地も人もうらみず一すじに無畏を念じて安らけく逝く」
 「いきにえに尽くる命は惜しかれど国に捧げて残りし身なれば」
 「世の人に残さばやと思ふ言の葉は自他平等の誠のこころ」

 昭和三十四年になった。三ヶ根山に大きな『七士之碑』が建立され、軍人の東条英機、土肥原賢二、板垣征四郎、木村兵太郎、松井石根、武藤章。文官では広田弘毅の分骨がおさめられた(らしい)。

 この七烈士の御霊を鎮める墓碑で、揮毫は岸信介。二十年ほど前、案内してくれる人があってドライブでしか行けない場所だったが、評者もこの地へ登り合掌した。

以上「宮崎正弘の国際情勢解題」より

続いて「頂門の一針 6958号」より転載します。

【デマの末に起きた日本人襲撃】   天沼康

中国の日本人学校はスパイ養成所? 

SNSで物議をかもした1本の動画がある。「上海の日本人学校」とされる運動会で、子供が選手宣誓をしている、これに次のような中国語の字幕が付いている。「上海は我々のものだ!」「中国も間もなく我々のものだ!」─この動画は元々は日本の小学校で撮影され、子供は単に「正々堂々と戦います」と言っているものを加工した捏造動画だ。報道によれば1千万回以上再生されたという。

「これは日本の『換国計画』という野心を示したものだ」と動画では主張している。つまり国土が狭い日本が、中国の政治や経済、社会に浸透して重要な地位を押さえ、いずれは中国を日本化するというのだ。中国の日本人学校はその計画を実施するため、顔つきが中国人に似ているという特徴を利用し、中国語や中国文化を学ばせ、スパイを養成する機関になっていると言いたいらしい。

この動画が広がったのが2年前と言われるが、その後SNSでは日本人学校が中国でスパイを養成しているというデマが広がった。その日本人学校には無論、6月下旬にスクールバスが襲撃を受けた、蘇州の日本人学校も含まれていた。そして日本と戦い、裏切り者を一掃するという意味の「抗日鋤奸隊」と呼ばれる中国人が日本人学校の入り口を「監視する」動画も次々と流れた。厳密なネット検閲が行われる中国では、事実上の放任とも言ってよい状況だった。

こうした「仇日」(日本ヘイト)の広がりについて、中国出身のブロガー、和気猫さんは「中国の官民にとって、日本は経済的な面で利用価値が高いだけでなく、政治面でも国民の一致団結や共産党への忠誠を促すため、外敵として扱っていい国であり、日本人には何をしてもよい、という雰囲気が広がっている」と指摘した。そして「日本政府や大使館は、こうしたリスクについて、在留邦人にもっと警告すべきだったし、日本人学校のデマについても抗議すべきだった」と語った。

蘇州の事件では、不幸なことに日本人の生徒を守ろうとした中国人女性が亡くなった。中国メディアは彼女の勇気ある行動をたたえ、英雄視する動きが広がるとともに、SNS上での過激な言論への取り締まりが始まった。だが、そもそも犯人はどのような人物か、どのような動機があったのか、事件の核心について中国当局は一切明らかにしていない。

6月は吉林省の公園で米国人の大学教員が襲撃されるなど、外国人への暴力事件が相次ぎ発生した。このような過激な中国の民族主義の現状について、カナダ在住の中国人ユーチューバー、多倫多方臉は、中国の民族主義拡大は三つの力、すなわち中国共産党、動画アカウント、そして民衆の力が働いていると指摘する。

共産党は社会の矛盾を転嫁し、民衆の党への忠誠を強化するため民族主義を必要としている。動画アカウントは民族主義を扇動し、アクセスを稼ぐことで金銭や地位などの利益を得られる。最近、「鉄頭」という中国人が靖国神社を汚損する動画を発表して物議をかもしたのがいい例だ。さらに民衆はこうした民族主義扇動の受け手であり、自らの不満を解消するために民族主義の感情を必要としている。

そしてここ1年ほどは、中国の民族感情の担い手がもはや共産党やその意を体現するメディアではなく、動画アカウントや民衆など、民間の民族主義者となり、彼らがより世論を極端な方向に推し進めている状況だという

中国は現在、経済が低迷し、失業者が街にあふれるなど社会の不満が増大している。蘇州の事件を起こしたのも、52歳の無職の男だという。

民族主義は中国の底辺社会の人々にとって、政府が公認する唯一の不満のはけ口になっているのだ。

自分たちが放任してきた「仇日」を取り締まれば、はけ口を失った人々の不満は政府に向かうことになる。民族主義を政権維持に利用するという基本構造が変わらない限り、暴力は再び日本人へ向けられるだろう。