【経済版 悪のすすめ】
(読者の声3)宮崎先生の新刊「悪のススメ ── 国際政治、普遍の論理』は注文済みなれどまだ届かず、拝読しておりませんが、あの小泉内閣の郵政民営化は「経済版 悪のすすめ─この世の経済の論理」だったなかもしれないとこの頃思うのです。
「財政投融資が(無駄な)公団等公的機関・組織に流れ、役人天国を助けている。
これを退治するためには郵貯を使わせないようにすべし。郵貯は民間の経済活性化に使わせるべし」という(行政改革はすべて良しとする)論理で郵政民営化騒動が生まれ大騒ぎしたと記憶しますが・・・
その結果はどうだったか?
国民は相変わらず貯金をためて、それを投資にはあまり回さないで過ごした。一方財政投融資が経済の活性化に寄与して居た分が消滅してしまった。それがために「日本は30年間も停滞してしまった」。
つまりあの郵政民営化は財務真理教者の唱える均衡財政派と同じ結果、(深刻で長期にわたる)デフレを招いてしまった。学者たちは今も日本があのような長い不況を経た理由を金利がどうのこうのといろいろ「研究」していますが、実は簡単な事だったのでは?
まことに郵政民営化・行政改革は高い買い物でした。
(SSA生)
(宮崎正弘のコメント)小泉政権を当時、西尾幹二先生は「狂人宰相」と批判しました。その頃、鳥越某のラジオ番組にでたら「小泉政権をどう思うか?」と聞かれたので、小生は「靖国参拝はプラス百点、郵政改悪はマイナス百点。よって『プラマイ零点』と答えたことを思い出しました。鳥越氏は絶句していました。
以上「宮崎正弘の国際情勢解題」より
続いて「頂門の一針 6917号」より転載します。
【志ある総裁で再出発を】 【美しき勁き国へ】 櫻井よしこ
バイデン大統領は退くべきだとの声が米国内で広がっている。米紙ウオルストリート・ジャーナルは6月28日、「党派的見地でなく愛国心」から、後進に道を譲れと社説を掲げた。顕著な衰えが見られるバイデン氏では、米国はもたないとの判断だ。
憲法改正と安定的な皇位継承の法整備ができなければ、岸田文雄首相にも同じことを申し上げる。自民党は岸田氏に代わる志ある総裁を選出し、徹底的に国の在り方を議論し、再出発する。それが国益だ。
首相就任直後の令和3年10月、岸田氏は衆院選で圧勝し、翌4年7月の参院選で単独過半数を得た。同年12月には歴史的な安全保障に関する戦略3文書を閣議決定した。憲法改正を誓う発言と相まって、国民は岸田氏が安倍晋三元首相の遺志を継ぐ決意を固めた、国防の本質を理解していると受けとめた。だから圧倒的支持だった。
岸田氏が幾度も公約した憲法改正と安定的な皇位継承のための法整備は、日本国の価値観と国柄を取り戻すのに必須の課題だ。両課題の完遂は自民党政治家にとって単なる公約を超えた党創立に由来する命題のはずだ。
が、安倍氏が暗殺され世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題が浮上すると岸田氏の本質がこぼれ出始めた。事件の核心は安倍氏の暗殺だった。日本国最大の喪失、悲しみと憤りを国民と心を合わせてどう埋めるのか。法的、社旗的にどう対応して乗り越えるのか。これが主題だった。しかし、メディアが一斉に旧統一教会問題を報じると、岸田氏は事の本質から外れて旧統一教会と自民党の関係清算に力を注いだ。本質を見る目が欠落していたのだ。支持率低下は当然だ。
安倍氏亡き後、岸田氏への財務省の影響力は強まり、国民は氏を「増税メガネ」と呼んだ。これを苦にした岸田氏は5年10月、定額減税を打ち出した。
多くの人は選挙目当てと受け止め、支持率はさらに下落。減税策で支持率を下げるというあり得ない現象が起きた。岸田氏は国民が感じ取ったうさん臭さの本質を理解できなかった。
その先に起きた自民党派閥パーティー収入記載事件は、記載すべき政治資金を記載しなかった形式犯だ。だが、朝日新聞が「裏金」と書き、他メディアが追随すると、岸田氏はまたもや本質を踏み外し、自ら泥沼の議論に埋没した。半年以上泥沼につかったが、その間、政治とカネのあるべき関係も議論されず理解も進まなかった。岸田氏は今日までずっと、事の本質をずらしたままだ。
本質を読みとれない岸田文雄首相は大局観も欠いている。
安倍晋三元首相は度々地球儀外交について語った。権威主義国の中国、ロシア、北朝鮮に囲まれている日本にはとりわけ欠かせない戦略的思考だ。その重要性を痛感して、国家基本問題研究所は総合安全保障研究会を主催してきた。研究会の共同主催者、岩田清文元陸上幕僚長は、中露朝イランの「新・悪の枢軸」が協力を強める状況下、ロシアのウクライナ侵略戦争で「われわれの側」が敗北すると危機感を強める。
米国が中露朝イの4つの敵対国に同時に直面したことは過去にない。4カ国の協力体制の強化で、ロシアへの軍事支援は尋常ならざる水準に達している。
ロシア軍は今春から、ウクライナ軍の反転攻勢を見越して1,コンクリート製の対戦車障害物のばらまき2,塹壕(ザンゴウ)堀削3,地雷埋設─に集中した。作業の徹底ぶりはすさまじく、反転攻勢に出たウクライナ軍は苦戦中だ。
ロシアの一連の軍事行動を物質的に中国が支えていると岩田氏は指摘する。
「中国の対ロシア堀削機輸出は2022年9月の統計で前年の4倍以上に増加しました。中国の塹壕堀り機材の提供を受けて、ロシアは見たことのないような防衛要塞を建設できたのです」
地雷についてもロシア軍は通常の軍隊が行う地雷埋設の10倍以上の密度で撒(ま)いた。これではいかなる反転攻勢も難しい。
一事が万事、武器弾薬装備提供でも、軍事産業の下支えでも、中国が力を発揮している。集積回路も半導体もボールベアリングも工作機械も、およそ全ての軍民両用部品が中国からロシアに渡る。
その結果、中露朝イと、西側の民主主義陣営の軍事産業の生産能力は開きすぎるほど開いてしまった。一例が155ミリ榴弾(リュウダン)だ。ロシアは年産210万発、北朝鮮100~230万発で計310万~440万発。西側は米国が30万~40万発、欧州140万発、チェコなどが50万~80万発、計220万から260万発だ。
権威主義陣営の総合力が増加し、このままなら力による支配が既成事実化する。これが国基研の警告である。
ロシアによる核の脅しも続く。わが国の政治家は今まで考えたこともない次元の危機につて、日夜眠れないほど考えなければならない。足元の具体策は無論のこと、国家としてわが国の形の歪(いびつ)さを正さなければならない。憲法改正は、岸田氏が好んで口にする「先送りできない課題」の筆頭だ。万が一、それを先送りするなら岸田氏には退場しかないだろう。
思い出そう。安倍氏は拉致問題、夫婦別姓問題など、派閥を超えて価値観を同じくする同志を集めて首相になった。強力な官僚群の財務省と戦って経済成長を遂げデフレ脱却への道を開いた。これらは全て、価値観と政策を共有する仲間たちとの連携にの結果だ。
だからこそ今、志ある政治家は手を挙げよ。政策集団を創(つく)れ。若さゆえに、経験不足ゆえに、あるいは知名度不足ゆえに身を潜めている人よ、志一筋に日本を強く立派な国にするために立ち上がれ。
☆☆☆☆☆☆ 松本市 久保田 康文 産経新聞社令和6年7月1日号採録