【KADOKAWAがハッカー攻撃でやられたが】
  犯行声明のブラックスーツはロシア諜報機関系から派生
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2024年6月8日にKADOKAWAのデータセンターのサーバーがランサムウエアによるサイバー攻撃を受けた。とくに動画配信「ニコニコ動画」ならびにシステムにハッカー攻撃による障害で復旧に一ヶ月以上を要すると発表された。

同月27日になって、犯行声明がロシア系のハッカー新興集団の「ブラック・スーツ」から出され、サイバー攻撃によって同社の事業計画やユーザーなどのデータを盗み取ったとした。

データはあわせて1.5テラバイト。身代金の支払いに応じなければ7月1日にすべてのデータを公開すると脅迫した。一説に身代金は四億円ともいう。

「ブラック・スーツ」の暗躍はロシアのロイヤル集団の分派で、23年5月からその暗躍ぶりが米国で確認された。手口はランサムウエアを使った攻撃で、標的企業や組織のデータを暗号化し、事業を立ちゆかなくさせた上、解除と引き換えに身代金を要求する。北朝鮮の遣り方の大型化である。

 最初の被害が確認されたのはマイクロソフト社で、「ロシア政府が支援するハッカー集団が同社の内部システムに侵入し、顧客の電子メールにアクセスした」とユーザーに通告した。

ついで全米の自動車販売店ネットワークが被害に遭った。
CDK は、自動車販売店で販売やその他の取引に使用されるソフトウェアを製造している。米国内のフォルクスワーゲンのディーラーの約半数とアウディのディーラーの約60%が深刻な影響を受けた。またオペラや音楽祭、演奏会、ミュージカルなどのチケットをオンラインで行っている企業も襲撃を受けた。

ロシアのハッカーは最初はロシア諜報機関が濃厚に関与したとみられるアノニマス集団が有名で、身代金というより政治的な宣伝、フェイク、攪乱情報などが主体だった。
2006年頃にオーブリー・コトルなる人物が創設し、米国の外交工作の邪魔をする意図が濃厚だった。

アノニマスは2010年の「アラブの春」ではエジプトやチュニジア政府のHPを改竄したり、12年には日本のJASRACや裁判所を攻撃した。2015年にはISISを攻撃し、またトルコ政府攻撃、2021年にはミャンマー軍事政権の政府サイトをハッカー攻撃するなど、政治活動の一環だった。

このコトルの「弟子」たちがロシアでファンシーベアなどを創設し、2020年の米国大統領選挙では民主党から多くの機密を盗み出し、この時期には中国の「ムスタングパンダ」なとどいうハッカー集団も出現した。

 ▼政治宣伝から身代金狙いへ

政治宣伝を離れ、身代金要求というビジネスに転換したのがロシアの「ロイヤル集団」で、2023年5月に、そこからスピンオフしたとされる「ブラックスーツ」によって、世界の95の組織のシステムが侵入された。攻撃を受けたのは主に工業製品や教育などの分野のアメリカの政府組織や企業だった。

FBIと米国のサイバーセキュリティ機関CISAは、「ブラックスーツ」はロイヤル集団の亜種であるとし、「ロイヤルに類似したいくつかの特定されたコーディング特性を共有している」と報告した。ロイヤルの身代金要求額は2 億 7500 万ドルを超えた。

ロイヤルは病院や医療機関を標的にしており、ランサムウェア・ギャングと言われた。
FBIは長年、ハッカーの身代金を支払わないよう被害者に勧告してきた。身代金を支払えばさらなるサイバー攻撃が誘発されるからだ。

 現在、ハッカーの標的は多彩で、政治宣伝目的は全体の三分の一、身代金要求のハッカー集団は、エネルギー、発電、通信目、医療機関、運輸などを攻撃目標にしている。中国では民間企業の「アイスン(ISOON)」などにハッカーの機密盗取などを委託していたことも判明した。

以「宮崎正弘の国際情勢解題」より

続いて「頂門の一針 6913号」より転載します。

【夫婦別姓で失う自民の価値】  【阿比留瑠比の極言御免】 

 自民党が性懲りもなく選択的夫婦別姓に関する党内議論を再開させるという。経団連や経済同友会のビジネス的見地からの要請に後押しされた形だが、不必要だったLGBT理解増進法に続いて夫婦別姓にまで突き進むとしたら、自民の存在価値をまた一つ自己否定することになろう。

 「多様性」というはやりの聞こえのいい掛け声に目がくらみ、安易に取り込もうとするのでは、立憲民主党や共産党、社民党ともはや選ぶところがない。

 もっとも、岸田文雄首相は21日の記者会見で、選択的夫婦別姓については次のように慎重だった。

 「さまざまな立場の方に大きな影響を与える問題だ。だからこそ世論調査でも意見が別れている。前向きな意見の一方、家族の一体感や子供の姓をどうするかなどに関心を持つ消極的な意見もある」

 LGBT法を巡っては、元首相秘書官の性的少数者差別とも受け取られかねない発言や米民主党政権の圧力に屈して成立に前のめりになった首相だが、今度はぶれないでもらいたい。

 安倍晋三元首相もかつてこの問題に関し、首相にこう信頼を示していた。

 「岸田さんはそうリベラルではないんだ。以前、夫婦別姓の議論が高まったときに『子供の視点が全然ない』と話していた」

[アンケートでは]

 やはりこの点が重要だと考えるので、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を紹介する。子供対象の世論調査自体が珍しく、古い調査だが寡聞にして他に知らないのでご容赦願いたい。

 それによると、両親が別姓となったら「嫌だと思う」(41・6%)と「変な感じがする」(24・8%)の否定的な意見が、合わせて3分の2に達した。一方で「うれしい」はわずか2・2%しかいなかった。

 また、成人を対象とした令和3年実施の内閣府の「家族の法制に関する世論調査」結果をみても、選択的夫婦別姓制度導入を求める回答は28・9%にとどまった。「夫婦同姓制度を維持した方がよい」が27・0%、「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」が42・2%で、夫婦同姓維持が7割近くに達している。夫婦の姓が異なることでの子供への影響に関しては「好ましくない影響があると思う」と答えた者の割合が69・0%で「影響はないと思う」は30・3%にとどまっている。

 留意すべきは「兄弟の姓が異なってもかまわない」がわずか13・8%で、「姓は同じにするべきだ」が63・5%に上ることだろう。夫婦どちらの姓を名乗らせるかを巡り、親族間のトラブルも予想される。

[フェミニストの議論]

 選択的夫婦別姓については「選択的」だから別に同姓を選びたい人はそうすればいいだけだという意見もあるが、ことはそう単純ではないだろう。

 既に平成17年刊行の『ザ・フェミニズム』(上野千鶴子、小倉千加子著)でフェミニストである小倉氏がこんな議論をしている。

 「(選択的)夫婦別姓になったら、まるで夫婦別姓をしている人の方が進んでいて、夫婦同姓の人の方が遅れているみたいになりかねない。そこでまた一つの差別化が行われるわけじゃないですか」

 女優でタレントの橋本マナミさんが今月「私は一緒の名前がいいです。好きで結婚したから」とテレビで発言しただけでニュースとして取り上げられる現状をみると別姓導入で同姓夫婦が肩身の狭い思いをする日が来るかも知れない。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   松本市 久保田 康文  『週刊新潮』令和6年7月4日号採録