【JDヴァンス、って誰? トランプの副大統領候補に急浮上】
中絶反対、同性婚反対、カソリックに改宗したベストセラー作家
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 日本では読書好き、映画マニアなら彼の名前を知っているかも知れない。

 ちょうどトランプの息子のような若さ。39歳。ジェームズ・デイヴィッド・ヴァンスは自伝的な小説『ヒルビリー・エレジー』を書いて世界的なベストセラーとなった。日本語訳は原題そのものの『ヒルビリー・エレジー』、中国語訳は『絶望者之歌』である。ほかにイタリア語、ポーランド語、フランス語版もある。映画の邦題は『郷愁の哀歌』だった。

 この作品は白人労働者階層の悲哀を祖父母や故郷の人々との経験やアイデンティティ、そのアメリカの田舎の風景と心情を描き、多くの人々の共感を得た。

 本人は故郷の公立高校を卒業し、海兵隊に入隊。イラクに派兵された。除隊後、オハイオ州立大学、イェール大学のロースクールで博士号。
 政治的思想的には確立されたものがなかった。2016年にはトランプをヒトラーと批判していた。ところが政治的に目覚めたのだ。カソリックへの改宗は2017年だった。

 2022年、オハイオ州の共和党予備前で、突如、上院選に名乗りを上げ、ドナルド・トランプの支持を得たため正式に共和党候補となった。勢いがついて、2022年の中間選挙で民主党候補のティム・ライアンを破り上院議員となった。政治経験のない人物がいきなり連邦上院議員だからメディアが注目するのは当然だろう。

JDヴァンスの政治的立場は殆どトランプである。
中絶反対、同性婚反対。ウクライナ支援をやめろ、イスラエル支持は継続。

突然の副大統領候補としての急浮上は6月23日のフィラデルフィアで即席にCBS記者が「副大統領候補を決めたか」との質問に対してトランプが、「すでに決めた。党大会前に発表するかもしれない。いま名前は明かせないが、私の四年のあと、つぎの八年で『アメリカを再び偉大な国家に再現できる人物』に決めたのだ」と発言したからである。

本命視されたニッキー・ヘィリーやダークホウスだったトゥルシー・ギャバードの可能性はこの発言で薄まった。

四年後を見据えると、若さでいえばヴァンスは44歳、現在、本命視され始めたマルコ・ルビオ議員は四年後にまだ57歳。ルビオはフロリダ州議会八年を経て2010年上院議員に当選し四期目、政治家としては四半世紀を超える政界のベテランでもあり、対中国強硬派として知られる。

ただしルビオは自身がキューバからの移民二世であり不法移民には寛大、モルモン教からカソリックへの改宗組であって、このあたりはトランプと共鳴しない。

以上「宮崎正弘の国際情勢解題」より

続いて「頂門の一針 6907号」より転載します。

【菅氏の「岸田嫌い」は筋金入り】    歳川隆雄

大政局への筋書き、それぞれの思惑は 

先週6日夜、菅義偉前首相と、加藤勝信元官房長官、萩生田光一前自民党政調会長、武田良太元総務相、小泉進次郎元環境相が、東京・麻布十番の寿司(すし)店「おざき」で会食した。

「反岸田連合の旗揚げか!」と、マスコミ各社の政治記者は気色ばんだ。

そう思われても何ら不思議ない。菅氏の"岸田文雄首相嫌い"は筋金入りだ。解体を余儀なくされた旧安倍派の萩生田氏も本音はほぼ同じ。旧二階派の武田氏も根強い反発を抱く。

もともと温厚な加藤氏は力づくの「岸田おろし」に動くタイプではない。だが、永田町で「HKT」と呼ばれる萩生田、加藤、武田各氏の中で、唯一の次期総裁候補と目される。行動を共にせざるを得ないという心情であろう。

通常国会閉会後、夏にかけて、この「HKT+菅」が、「反岸田」を鮮明にするとしても、政治資金規正法改正案をめぐり岸田首相との間に大きな亀裂が生じた麻生太郎副総裁・茂木敏充幹事長ラインとの間合いをどうするのか。

麻生、菅両氏の関係は、岸田、菅両氏の関係同様、というより、それ以上に良くない。「HKT+菅」が「麻生・茂木」と連携して岸田首相を引きずりおろすシナリオにはリアリティーがあるとは思えない。

それにしてもだ。早くも永田町で流布されたが、岸田首相の解散権が封じられて、9月の自民党総裁選が地方党員・党友を含むフルスペックで実施される場合のシミュレーションは必要である。

その前提は2つ。1,は岸田首相が出馬・再選を断念するケース。現状では石破茂元幹事長、上川陽子外相、高市早苗経済安保相、加藤氏らが名乗りを上げるはずだ。そして、次期総裁(首相)は衆院選で集票力が期待できる「顔」が求められる。でなければ、選挙に自信がない当選4回生以下は戦えないと言う。


仮定の話を重ねる。
仮に、7月7日投開票の東京都知事選で、無所属で出馬する立憲民主党の蓮舫参院議員が当選すると、野党は都政を国政に連動させて政権交代を目指す。秋の臨時国会衆院本会議の首相指名選挙で、立憲民主党の野田佳彦元首相を担ぐと国民にアピールする。

立憲民主党も9月に代表選がある。そこで次期代表が泉健太代表でなく、野田氏に代わった場合だ。自衛官の父の下で育ち、松下政経塾1期生の野田氏は、立憲民主党にあっても生来の保守政治家である。

では、自民、公明与党候補が誰であれば、野田候補に勝利できるのか。最後は、小泉氏を担ぐしかないという声が出てくるのではないか。

しかし、父・純一郎元首相は「早すぎる」とダメ出しする。そこで、前提2,の岸田首相も参戦である。首相周辺は「勝てる」と自信を持つが、いかがなものか。(ジャーナリスト・歳川隆雄)