【ユダヤ人の起源がハザール人の改宗という誤謬は否定された】
古代日本:「渡来人」が文字を書き、技術をもちこんだという説は?
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 モンゴル系遊牧民が中央ヨーロッパに進出し、彼らがユダヤ教に改宗したのが、今日のユダヤ人の多数派であるとする不思議な説は半世紀ほど前に突如流布し、いまでも信じている人がいる。

 嚆矢は『アメリカの鉄のカーテン』を書いたジョン・ビュティとされ、ユダヤ人がメディアを握り、かれらの不都合な真実が伝わらないように鉄のカーテンを降ろしたのだという社会分析のついでにハザール説を唱えた。

 ベストセラーとなったのはアーサー・ケストラーの『13部族』、そしてシュモロ・サンド『ユダヤ人の発明』、ミカエル・グラントの『ローマ帝国におけるユダヤ人』と続く。グランドの説ではローマ帝国の最盛期に800万人のユダヤ人がいたと人口比からの影響力を説いた。
 
 最新の医学の発達はDNA鑑定である。結果、ユダヤ人とハザール人とは遺伝子の繋がりがないと証明され、ジョン・エンティンは『アブラハムの子孫たちーー人種、アイデンティティ、選民のDNA』を出版して世の中に訴え、同様にハリー・オストレーが『ユダヤ人の遺伝史』という医学専門書で学問的な証明を行った。
 
 さて、なぜこのことを書いたか。日本の古代史で、歴史学者が「朝鮮半島を経由して渡来人が文字や窯業、建設技術、土木の新技法などを日本に伝えた」と、『渡来人』への高い評価である。これはおかしくないか。
ハザール人説とまったく逆で、古代の「渡来人」とは「倭人」のこと、かれらは「帰国」したのであり、この点では『魏志倭人伝』も、ちゃんと書いている。倭人は半島南部にも大勢いる、と。
 
そこで、「朝日新聞」(令和五年九月二八日)の報道を次に掲げる。
 「弥生人像、核ゲノム分析が変えるーー古人骨の核の遺伝子分析を最新機器が可能にした。(中略)意外なことがわかってきた。渡来人の故郷である当時の朝鮮半島にも、縄文人に似た遺伝的要素をもつ人々がいたらしいのだ。つまり、二重構造モデルではまったく異質なはずの列島往来系と渡来人がじつは縄文時代以前から海を挟みつつ同じ遺伝子を共有していた」。

 任那は日本の飛び地だった。朝鮮半島南部には前方後円墳がいくつもある。神功皇后の三韓征伐以前から日本海沿岸部と交流が深く、交易は活発であった。倭人同士だった。

したがって応神天皇があちらの人だったトカ、素戔嗚尊がそうだったとかの説は成り立たないのである

以上「宮崎正弘の国際情勢解題」より

続いて「頂門の一針 6882号」より転載します。

【大手町の片隅から】  乾正人

不適切にもほどがあった川勝知事~権力に弱すぎるNHK
 
人間という生き物は、なかなか生まれ変われないものだ。

辞意を表明した川勝平太静岡県知事は3年前の11月、不適切発言をめぐって県議会で辞職勧告決議が採択された直後、「猛省する。来年は生まれ変わると富士山に誓った」と語ったが、やはり生まれ変われなかった。

このとき知事は、参院補選の応援で、対立候補の地盤である御殿場市について、「コシヒカリしかない」とやって県民の顰蹙(ひんしゅく)を買っていた。

今回は、「毎日毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかとは違い、基本的に皆様方は頭脳、知性の高い方たち」と、県の新人職員を持ち上げた。

権力に弱すぎるNHK

どこをどう読んでも職業差別発言だが、ご本人はそう思わなかったようだ。2日夕、知事の発言に怒った県民らから抗議の電話が県庁に殺到したことについてこう語った。

「それは読売新聞のせいだと思っています」

少し解説が必要だろう。知事の発言は、1日に行われた県の新規採用職員に対する訓示で飛び出した(このとき小紙記者は別の取材で立ち会っていない)。

普通の報道機関なら、知事の発言を問題視して即、記事にするところだが、地元の静岡新聞やNHKはそうはしなかった。

リニア中央新幹線建設を妨害してきた川勝知事を紙面で強く「支持」してきた静岡新聞が、「いつもの川勝節だ」と黙殺するのもあり得るだろう(「報道しない自由」もあるからね)が、国民の受信料で成り立っている「皆様のNHK」が、知事に忖度(そんたく)してどうするのか。

1日午後7時8分に配信されたNHKのネット記事では、「川勝知事 新人職員を前に能登半島地震などを踏まえて訓示」という見出しで、知事の訓示をかなり詳しく紹介しているが、「牛の世話」のくだりは、一字も載っていない。


川勝発言が炎上したのは、読売新聞が2日午前にネットで配信してから。小紙も知事発言の全容をつかみ、午前中から産経ニュースで報じた。NHKが本格的に知事発言を報じたのは、知事が辞意を表明してからだった。

まあ、毎度のこととは言いながら、NHKは権力に弱すぎる。しかもその権力者が、地位を離れることがはっきりすると、徹底的に叩(たた)く。このような報道を続けるなら受信料制度をやめて「国営放送」にした方が、よほどすっきりする。

「自分の責任果たした」

それにしてもリニア中央新幹線建設をめぐる彼の抵抗ぶりは、常軌を逸していた。4期15年に及んだ川勝県政に、日本全体が振り回された。

JR東海が、令和9年の開業断念を正式に表明したのを見届けた彼は、立憲民主党の渡辺周衆院議員に「自分の責任は果たした」と述べた。リニア中央新幹線の開業を大幅に遅らせることが、自らの使命と考えていたのである。

彼は若いころ、「農村が都市を包囲する」毛沢東理論に傾倒し、知事に就任後も中国の習近平国家主席が唱える「一帯一路」構想に諸手(もろて)を挙げて賛成している。このような人物を4回も知事選で当選させた県民の責任は大きい。次の知事選こそは人物を見極めて投票していただきたい。(コラムニスト)