【噛みつく相手が違う】
岐阜県美濃加茂藤井市長が市議会定例会で、市議からの質問に対して謝罪したという記事が2023年3月にあった。

又しても不祥事かと思えば、河村たかし名古屋市長との写真が理由と知り驚いた。

藤井市長は美濃加茂市特産「堂上蜂屋柿」のPRに河村市長を訪問した。

河村市長が柿にかぶり付き、にっこりと笑う両市長の写真が翌日の新聞に掲載される。

すると市議が「堂上蜂屋柿」は1000年の歴史がある尊い干し柿で、8つに割いて食べるのが美味しい食べ方だ。

「河村市長はそのままガブリ。それを横で笑っているとは何事だ」と言うのである。

河村市長は訪問者へのサービスでかじったのだろうし、どんな食べ方をしても自由な筈である。

「こう食べなければいけない」と言われるのは心外だったとおもう。

更に市議は「この柿は(生産者にとって)金メダルのようなもの。生産者には侮辱されたと感じた人もいる」と発言。

河村市長が東京五輪のソフトボール選手の金メダルをかじって批判を受けた事まで引き合いに出したのである。

藤井市長は「撮影時に食べ方を伝えなかった自分の落ち度だ」と謝罪した。

そんな事より「お前こそ何にでも噛みつくな」と言った方が良かったと思ふのだが。

以上「大常識」百田尚樹著より

続いて「頂門の一針 6865号」より転載します。

【「普通の国軍」再生急げ】      【美しき勁き国へ】 櫻井よしこ 

 4月26日、中国の王毅外相(共産党政治局員)は、ブリンケン米国務長官に「レッドラインを踏み越えてはならない」と言い渡した。しかし踏み越えているのは中国だ。

 ブリンケン氏は訪中を締めくくる会見で、中国がロシアのウクライナ侵略戦戦争に加担していると、強い不満を表明した。1年以上前の2022年10月、ロシアはウクライナでの劣勢挽回のために核兵器を使いかねない状況にあった。ロシアが思いとどまったのには中国も重要な役割を果たしたと氏は述べたが、今は状況は全く異なると強調した。

 武器ではないがその構成部品、工作機械、電子部品、軍民共用物資の援助がロシアに継戦能力を与え、ウクライナと欧州諸国を深刻な危機にさらしている、中国が戦局に根本的影響を及ぼしていると非難した。

 トランプ政権で大統領副補佐官を務めたポッテンジャー氏は22年3月18日のテレビ電話でバイデン米大統領がロシアの戦争を物質的に助ける可能性について習近平中国国家主席を厳しく戒めたと指摘した。

 恐らくその結果、中国は22年10月、前述のようにロシアを牽制した。では今なぜ、米国の警告を無視するのか。ロシアに大量の無人機を供給したイランに米国が制裁らしい制裁をしなかったことが原因だとの指摘には説得力がある。中国は米国は対中制裁に踏み切れないと踏んだのだ。

 習氏が現在の世界情勢の混乱を100年に一度の好機ととらえ、米大統領選挙の混乱を観て、「時間は中国に味方する」と考えているのは明らかだ。習氏は「中国の夢」で世界の諸民族の中にそびえたつ中華民族の姿を賛美している。

 ポッティンジャー氏は長年にわたる中国研究に基づき、「中国首脳が好んで語るのは、リベラルな価値観を促進する大国と長く共存する気はないということだ」と『フォーリン・アフェアーズ』誌に書いた。従って、バイデン政権は米中競合の「管理ではなく、勝利を目指せ」と説く。これこそ多くの国々、民族のみならず、果ては中国共産党の圧政下にある漢民族の人々の希望であろう。

 他の大国と共存するのでなく、独りそびえ立ちたい習氏の最大、最後のよりどころは軍事力だ。ポッティンジャー氏は米国は中国と対峙(たいじ)するために、現在、GDP(国内総生産)比3%の軍事費を4~5%に引き上げ、台湾防衛に日本・台湾周辺で軍事的に圧倒的優位を確立せよと主張する。「日本はアメリカとともにある」と公約した岸田文雄首相も同じ方向を目指すべきだろう。

 岩田清文元陸上幕僚長は5月3日の言論テレビで、中国が類例のない規模で増やし続ける核戦力を解説した。

 「地球規模で米国の軍事力は中国を圧倒しますが、軍事力の中核をなす核戦力で、中国は近い将来、米国と対等にわたり合える大国になります」

 中国の飽くなき軍事力増強を日本は鋭く意識すべきだ。日本も台湾も中国が最も重視する標的だからだ。中国がどこまで日台への侵略を準備しているか、衛星画像から相当読みとれる。

 「国家基本問題研究所」では、公開情報を基に、まず台湾侵攻をうかがう中国人民解放軍(PLA)の水陸両用部隊の動きを分析した。

 2021年9月、PLAは香港の北方、深川市の奥から東に150キロの地点に新駐屯地の建設を始め、24年2月までに司令部庁舎、軍人用隊舎、倉庫群も完成した。近くの港には着上陸訓練場があり、水陸両用戦車群が訓練を重ねてきた。戦車が編隊を組んで海上を泳ぎ回る映像も見てとれる。岩田氏の解説だ。

 「台湾正面に新駐屯地を建設し、着上陸訓練を見せつける。これを前方展開と言います。前方展開の怖さは、PLAが訓練に見せかけてそのまま台湾に攻め込む戦術が可能になることです。平時だと思っていたら、極めて短時間で本物の侵略が始まりかねないのです」

 PLAの水陸両用戦車は、陸上自衛隊の74式戦車と同じ口径105ミリの戦車砲を積んでおり、海を渡りながら撃つ。

 「砲兵部隊も同様です。台湾正面、わずか180キロ地点に新駐屯地を建てました。衛星画面では22年8月に更地だったのが今年1月、新駐屯地が完成し、本庁舎以下建物が並んでいます。隣接地は長距離多連装ロケット砲の演習所です」

 多連装ロケット砲システムでは口径の異なるロケットを撃てる。最大で750ミリ。射程は600キロ。台湾、与那国、石垣島まで届く。PLAはこれを200門以上保有しており、これらを沿岸に並べて、台湾をにらむ。

 わが国も台湾同様の脅威にさらされている。中国は極超音速滑空体(HGV)を搭載するミサイルDF─17用の基地を中朝国境からあまり遠くない吉林省金廠鎮に設置した。岩田氏がDF─17は日本が標的だと指摘した。
 「マッハ5以上で60キロ以下の低い高度で飛びます。これを迎え撃てる地対空ミサイルはまだどの国にもありません」

 22年11月段階の衛星画像にはトレーラーに積まれた2基のDF─17が写っている。それから1年弱、同基地には完成した高層施設が写っている。DF─17の数も当然、増えたはずだ。

 極超音速ミサイルを迎撃するミサイルは防衛省主導で開発中だが、開発に成功しても、50発も100発も同時に撃たれれば日本を守れない。わが国を狙ってミサイルを発射する国の基地をたたく能力、反撃力が文字通り死活的に重要だ。

 悪びれることもなくロシアを支える中国。米国に挑戦し、戦後の世界秩序反転を狙う中国。日台双方への軍事的脅威を高めてやまない中国。中国のこの異形の大国振りと厳しい現実を私たちは肝に銘じよう。自衛隊、海上保安庁の予算を大幅に増やし、必ず憲法を改正しよう。自衛隊を普通の国の普通の国軍に生まれ変わらせることが日本と台湾を守る第一歩だ。

☆☆☆☆☆☆☆☆        松本市 久保田 康文  産経新聞令和6年5月6日号採録