【日本の武器使用】
日本の陸海空自衛隊の武器使用については、國土防衛軍としての所謂「独立法規」はない。
警察法「警察官職務遂行法第7条ー武器の使用」に拠る事を原則としている。

だが国防活動と警察活動とでは、事態形態の重大性に大きな開きがある事は明白である。
故に警職法第7条による武器使用法規で対応できない不安が出てくる。

而も我が國には憲法第9条がどっしりと腰を据えている。
「日本國民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する」
「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。國の交戦権はこれを認めない」

この警職法第7条と憲法第9条を視野の端に据え、頭が混乱するような諸解釈・諸判断を加えてきた。
国防事案に対処するための武器使用法規を日本政府は何通りも作り上げてきた。

「領空侵犯」「治安出動」「警護出動」「防衛出動」「海上警備行動」「船舶検査活動」「弾道ミサイル防衛」などである。
武器使用に関連した抑制的条文の数は実に20数通りにも及ぶ。

この抑制的条文の多くは非常に難解な金縛り条文となっている。
「正当防衛又は緊急避難など一定の要件に該当する場合」
「他にこれ(敵対者)を排除する適当な手段がない場合」
「事態に応じて合理的に必要と判断される限度で」
「生命又は身体の防護のため已むを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」
「人に危害を与えてはならない」

敵を目前にした自衛隊員はこの難解なクイズを解かない限り武器を使用できない。
分厚い六法全書や隊法規全集なりを背負って出動せよ、と言う事なのだろう。

難解なクイズを解く時間的余裕を敵は与えてくれるのだろうか。
判断・選択に迷う間に自衛隊員に甚大な犠牲者を生じさせないだろうか。
國民の間に犠牲者が出てしまう恐れはないのだろうか。

以上「続 存亡」門田泰明著より

続いて「頂門の一針 6837号」より転載します。

【川勝知事が辞職】
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【高橋洋一「日本の解き方」】リニア開業急ぎ"経済損失″取り戻せ こじれた背景に財界確執と国の対応も「突貫工事」で工期短縮できる 


 静岡県の川勝平太知事は10日午前、辞職願を県議会議長に提出した。川勝氏がリニア中央新幹線の静岡工区(8.9キロ)のトンネル工事に反対し続けたこともあり、JR東海は品川─名古屋間の2027年の開業を断念、34年以降になると表明した。

元内閣参事官で嘉悦大教授の高橋洋一氏は、問題がこじれた背景に財界など関係者間の確執があったと指摘する。総工費約7兆円はJR東海が負担するが、リニアは交通機関として利便性が高まるだけでなく防災や新技術の実用化など、国益に直結する国家的事業だ。高橋氏は工期の巻き返しに期待を込める。
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 川勝知事は10日、辞職願を提出した。辞職により、リニア中央新幹線の品川─名古屋間の工事は加速できるのだろうか。

 それにしても、川勝知事はひどかった。辞職理由として、「この2~3カ月でリニア問題が大きく動いた」ことを挙げ、27年の開業阻止が目的だったことを事実上、明らかにした。

 他方、川勝知事を長年支援してきたとされるスズキの鈴木修相談役は、川勝知事について「上出来だった」と述べたと、地元メディアなどで報じられた。

 筆者は、東海地方の財界における確執が、リニア問題がこじれた根本原因だと考えるが、国交省がリニア推進のために毅然(きぜん)とした対応をとらなかったことも事態を混乱させたと思っている。

 川勝知事は、記者会見の中で、「静岡の工事は13年弱かかるので、静岡工区の完了は2037年になる」と発言しており、やはり開業時期を引き延ばしたかったようだ。ただし、JR東海は、工事期間は10年なので知事の発言を「誤り」と否定している。

 JR東海は、当初計画では、品川─名古屋間の開業が27年、大阪─名古屋間の開業が45年だったが、全線開業までの期間を最大8年前倒しするとされていた。静岡工区を今から着工できても、計算上は、品川─名古屋間の開業が34年になってしまう。

 一般論であるが、工期は全作業量を単位期間の作業量で割って得られる。一定の物理的な限界はあるが、その範囲内であれば、単位期間の作業量を増やすと工期は短縮できる。いわゆる突貫工事というやつだ。

 単位期間の作業量を増やすには、投入資源量の増加が肝だが、全線開業までの期間を最大8年前倒しするために、国による資金投入が行われる。静岡工区でも同じ手法で完成を前倒しできるかどうか、ぜひ検討してもらいたい。

 希望的観測であるが、これまで静岡工区が遅れていたわけであるが、その分の資金は余っていたはずで、その分、他の工区の進捗(しんちょく)がはかどっていたと思いたい。そうであれば、一定の前倒しは可能だろう。

 また、リニアは経済効果が高く、開業が1日遅れると200億円のロスともいわれている。であるとすれば、年間7兆円ほどになるので、追加的な資金支援をしても前倒しは十分に合理的だ。

 34年に静岡工区完成というのは、従来通りの投入を前提とした計算上の話だ。静岡工区はわずか8・9キロにすぎない。安全性を十分に考慮した上でなんとかこれまでの遅れを取り返せるなら、取り返してほしいものだ。

 静岡の両隣の山梨県と長野県の一部について、JR東海は完成時期を「31年」とも言っている。このあたりで、品川─名古屋間についても開業を目指してほしい。 (高橋洋一元内閣参事官・嘉悦大教授)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   松本市 久保田 康文   夕刊フジ令和6年4月11日号採録