【まともでない「市民」】
日本に駐留する米軍は北朝鮮を含めた監視と行動任務があるが、もう一つがヘンリー・スタックポール少将の云う「ビンの蓋」である。

敗戦後、憲法上は軍隊も持たない情けない國になり下がったが、それでもいつの日か蘇る時が来る。その時に東京を抑える仕事を担うのが、横田・厚木・相模原に置かれた米軍基地である。

日本をビンの中に閉じ込めておく蓋こそ我々なのだ、と少将は告白した訳だ。それだけに首都圏の米軍基地は氣を使い、厚木はゴルフコースは一般に開放し、相模原も年に一度音楽祭を開く。

そこへ平成19年、鎌倉の男が基地内をビデオ撮影し、MPに拘束されフィルムが没収された。

すると朝日新聞は「相模補給廠監視団」と云う「市民団体」が出てきて、米軍基地の専横をなじっていたと伝える。

この新聞社には頻繁に「市民団体」が出てくる。米軍基地と市民と朝日新聞が絡むと、それ以上に危うさを孕んでくる。

そんな新聞と基地を撮影する「市民」には強い同志愛のようなものがあるのか、朝日が危うくなると市民団体が手助けに走る。

中越沖地震での朝日の報道は良識の一遍もなかった。

風呂桶1杯分の無害な「管理区域内水」が海に流れると、海は汚れた、原子炉は破壊寸前とか、まるでチェルノブイリを想起する記事を流し続けた。

風評被害が広がり朝日の責任が問われると「原発被災語る676枚」「市民団体が画像を公開要求」と、悪いのは東京電力で朝日ではない、と市民に語らせる。

しかし、それが地元「市民」ではなく、岡山の「市民」に公開請求を出させていた。

以上「モンスター新聞が日本を滅ぼす」高山正之著より

続いて「頂門の一針 6827号」より転載します。

【台湾有事で米国は軍事介入をする】  櫻井よしこ

『週刊新潮』 2024年3月21日号

軍人と家族、37万5000人の頂点に立って世界の海の65%を守る米インド・太平洋軍司令官にサミュエル・パパロ氏が就任する。2月1日に行われた米上院公聴会でのパパロ氏の発言からは、中国の脅威に向き合う米国の本音が透けて見えた。

パパロ氏は6人の子の父親である。シングルマザーに育てられたが、母は「理髪店とメークアップセンターで働き詰め」だった。海兵隊の志願兵だった父は、後に造船所で働いた。パパロ氏はその父を尊敬し、大きな影響を受けたという。

パパロ夫人の今は亡き父も軍人だった。次期インド・太平洋軍司令官は軍人家族出身で自らも根っからの軍人である。親戚は皆ペンシルベニア在住で大家族の絆はとりわけ強い。

公聴会で氏は米国の最大の脅威である中国と、台湾への対処を質された。米国は現在、台湾に対して有事の際に米軍が介入するか否かを明確にしない曖昧路線をとっている。同政策について公聴会の委員長で民主党上院議員のジャック・リード氏がざっと以下のように尋ねた。

2021年、米国家情報長官のアブリル・ヘインズ氏が、対中政策は曖昧路線がよい、介入路線を明確にすれば中国は、米国が中国の台頭を力で押さえつけようとするとの確信を強め、世界各地で米国の国益を損ねる動きを取り、国際情勢は不安定化すると語った。この考え方をどう思うか、と。この問いに対するパパロ氏の返答については後述する。

ヘインズ氏の役職、米国家情報長官は中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)など全米18の情報機関・部局を監督するものだ。比類なく強力なこの地位に、ヘインズ氏は3年前の21年1月、51歳の若さで就任し初の女性長官となった。彼女の進める情報開示路線と、台湾有事に関する情報非開示の一例である曖昧路線はどう折り合うのか。

バイデン政権誕生と同時に情報長官に抜擢されたヘインズ氏は安全保障担当補佐官、ジェイク・サリバン氏やCIAのウイリアム・バーンズ長官らと共に、インテリジェンス・コミュニティ(IC)の情報の取り扱い方を変えようとしてきた。

ICといえばとかく秘密のベールに包まれた特異で暗い世界だという印象が強い。しかし、これを基本的に開放しようというのだ。

「大統領への報告」

プーチン氏がウクライナ国境にロシア軍を集結させ始めた21年秋、米国がウクライナ当局にロシア軍の異常な動きに関する情報を度々示し、国際社会にも公開し、ロシアが侵略すると警告したのは周知のことだ。

当時世界は、米国がインテリジェンス情報をここまで開示するのかと驚いたが、今もその開示路線は続いている。今年2月29日、ヘインズ氏がニューヨーク大学法学部で1時間強、語った。

「米国のICは議会と多くの情報を共有している。日々、時には刻々と報告を上げる。しかしそれでも十分ではないという感じがある」

つまり、議会はもたらされた情報に的確に対処していないということだろうか。彼女は秘密解除と情報開示に至った道筋をウクライナ侵略戦争を例にして語った。

「ロシアが大規模侵略を考えていることを示す情報が集まり始めた。我々ICの中でも『これは本当にそうした意味なのだろうか』という驚きがあった。『プーチンは何をしようというのか』『(ウクライナの国境に向かって)南下するのは(侵略の他に)何か理由があるのではないか』などの見方もあった。しかし我々の中でプーチンは侵略するつもりだという確信に至った時、大統領への報告に踏み切った。大統領が『情報を同盟国、同志国に伝え事態が起きたらどうするか、話し合いを始めなければならない』と言ったのを明確に記憶している」

ブリンケン国務長官、サリバン安全保障担当補佐官、オースティン国防長官らは、各国との話し合いを経てこんな返事をもたらした。

「同盟諸国はこの情報を疑っており、プーチンの侵略なんて起きないと考えている」

バイデン大統領が情報公開に踏み出すと決断したのは右の報告を受けたときだったとヘインズ氏は言う。

「もっと広く、情報をシェアしなければならない。米国のインテリジェンス界は各国のカウンターパートと会話して、我々の情報の意味を彼らに理解させ、その国の指導者に納得させなければならない」と大統領は語ったという。

ヘインズ氏は、米国の情報世界はいま質的変化を遂げつつあると指摘する。「情報透明化計画」の下で情報の秘密解除が進められており、安全保障の重要性がいよいよ高まる中で、世の中にもっと多くの情報を伝え議論を深めていくことが、より良い結果につながると米国は考えている。

偽情報で汚染される選挙

国際社会は今、中国、ロシア、イラン、北朝鮮などによる偽情報を強く警戒する。民主主義社会の根本をなす選挙が彼らの偽情報で汚染され世論決定の主導権を握られてしまう。防戦するにはこちら側の真実、ICの持つ深い情報を広く知らしめることが大事だ。米情報界の秘密解除と情報拡散政策には非常に大きな意味があるのである。

もう一点、公開の場での討議はICにも参考になる。彼らの考え方や判断にも影響を及ぼし、彼ら情報世界の人間が独善的になったり暴走したりするのも抑制されるだろう。

ヘインズ氏はロシア、イラン、中国を米国の3大脅威とし、最も警戒すべきは中国だとしてこう語った。

「米国の未来に中国の存在は基本的に欠かせない。侵略への抑止力と、協力可能な分野での協調力を両軸として、米中は最終的に平和共存し、幅広い繁栄を共有する土台を構築するよう目指さなければならない」

同時に彼女はこうも断言した。

「習は(台湾侵攻に)非常に真剣だ」

ここでパパロ氏の話に戻りたい。対中政策は曖昧路線がよいとするヘインズ氏の考え方に対して、パパロ氏は淡々と述べた。

「インド・太平洋軍には曖昧さはありません。台湾関係法で我々の使命は明確です。台湾が事態発生に際して自衛力を持てるよう支援します。台湾海峡問題を力で解決しようという試みには、インド・太平洋軍が台湾支援に赴く準備も整っています」

リード氏が重ねて尋ねた。外交レベルでは曖昧性があるが、貴下の司令の下では侵攻には軍の積極的戦闘も含めて全ての可能性に対応する準備が出来ているということか、と。

「イエス、サー。明確です。使命の焦点は合っています」
 米国の台湾政策は政治的には曖昧戦略だが現場は極めて明確だ。パパロ氏の公聴会での発言は非常に重い。

バイデン氏は中国が台湾有事を引きおこしたとき米軍は介入するのかと問われ、これまで4回、「イエス」と答えている。バイデン・パパロ発言を合わせると、米国の真の台湾政策は有事介入だと見るべきだろう。