【恥を忘れた日本人】
「三等車は最も貧しい日本人で一杯になった。彼らは礼儀正しく親切で美しかった。わが英国でも女性の一人旅は侮辱や強請にあうが、ここでは一度も不快な思ひをしたことはなかった」

明治の日本を旅したイザベラ・バードの言葉である。日本では下層の民も高貴な振る舞いをする。

戦国時代に来たルイス・フロイスも江戸中期に来たツェンベリも、身分の低い日本人の礼儀正しさや正直さを驚きで書いてゐる。「日本人で悪いのがいたら、それは出島のオランダ人の影響を受けた者だ」とツェンベリは云う。

シュリーマンが横浜の税関役人に金を握らせようとすると、役人は「武士に対して失敬な」と怒った。彼はその非礼の報復を覚悟したが、役人は「笑顔で送ってくれた」と「旅行記」に書いた。

清潔を尊ぶ武士が役人を兼務し、ためにお上は清潔と云う形が出来上がり、それが下々にも定着したとシュリーマンは示唆する。

「雪印」が恥を忘れた不祥事をやったら、「白い恋人」が同じようなインチキをやる。「ミートホープ」は段ボール以外は何でも入れて食肉を加工していた。

恥を忘れたのは個人も同じ。イザベラが感激した清潔な民は、我が子の給食費を払わないし、保育費も払わない。督促されると恥知らずな言い訳に終始する。

日本人が溶け出したのを証明したのは、偽装耐震設計の姉歯だった。彼はインチキ計算書を役所に出した。昔ならお上がすぐ見破ったが、今はすんなりと通る。なぜなら、お上はもはや武士ではないからだ。

「従軍慰安婦」を捏造し日本人を貶めた「朝日新聞」は謝罪もしない。日本軍が自決命令を出したと書いた大江健三郎は、ウソがばれてもとぼけ通して恥じない。支那人と変わらない。

以上「モンスター新聞が日本を滅ぼす」高山正之著より

続いて「頂門の一針 6828号」より転載します。

【美しき勁き国へ】【国益反する再エネ投資】   櫻井よし子

 河野太郎デジタル相が内閣府で主導した再生可能エネルギーに関するタスクフォース(TF)の会議で事件が起きた。河野氏の推薦でTFに加わった「自然エネルギー財団」事業局長大林ミカ氏が中国の国営電力会社「国家電網公司」のロゴ入り資料を正式に提出していた。わが国のエネルギー政策を議論する政府中枢で中国の資料が使われていた。ここまで浸透されていたかと驚愕(きょうがく)したのは私だけではないだろう。

 河野氏肝煎りのTFは構成員4人のうち、大林氏と高橋洋氏の2人が自然エネルギー財団関係者で大林氏はすぐに辞任した。が、トカゲの尻尾切りのような終わり方で済む問題なのか。

 2011年に孫正義氏が創設した同財団は中国を中心に広くアジア諸国にまたgるエネルギー供給網「アジアスーパーグリッド(ASG)」の実現を目指す。ASGに組み込まれる国は民生、産業、国防、全分野でエネルギー供給の安定を必然的に中国に頼ることになる。国家の首根っこを中国に押さえられるに等しいASGを孫氏らが目指すのは自由だ。しかしなぜ、河野氏はそうした人々を重用するのだろうか。

 気になることを国民民主党幹事長の榛葉賀津也参院議員が指摘した。

 「河野氏が外相当時、気候変動の有識者会合を設置しました。その異常な人選と内容をわが党議員が国会でただした。有識者各氏は意見書で化石燃料由来の発電は中止、石炭火力発電の段階的廃止計画を明示せよなどと再生可能エネルギーを強く推していました」

 平成30年3月23日、参院経済産業委員会で同党の浜野喜史議員がただした。

 「今年2月、外務省は気候変動に関する有識者会合で、エネルギーに関する提言を取りまとめています。これは外務省の見解を示したものですか」

 外務省側は「あくまでも有識者の現状に対する危機感の表明」で、それが「外相(河野氏)に対して提出された」(だけ)と答えた。外務省見解ではないということだ。浜野氏はさらに、有識者9人のうち3人が孫氏の財団の執行メンバーだと指摘した。前述のように今回のTFでは4人中2人が財団関係者だった。

 この人選の偏りは何を示すのか。著名な政治家が主催する会議の結論はおのずと大きな影響力を発揮する。河野氏が再エネ推進で影響を及ぼそうとしているのは明らかだ。動機は何か。氏の自然再生エネルギーへの肩入れ、化石燃料否定はわが国の国益にどう合致するのか。この疑念に関して河野氏はきちんと説明すべきだ。

 政府は、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づく温室効果ガスの削減目標の達成に向け、脱炭素化に10年で官民合わせ150兆円超の投資が必要だと想定し、うち20兆円を支援する方針だ。専門家らはわが国のエネルギーを再エネで賄おうとすると、この額はやがて何倍にも膨らんでいき、日本経済を押し潰すと危惧する。

 いま莫大(ばくだい)な資金を風力発電などに注入することが正しいとは思えないのだ。それがわが国の産業を下支えし、国民生活を豊かにするとも思えないのである。加えて風力発電に関しては設備のほとんどが中国からの輸入だ。利益は中国に吸い取られる。さらなる再エネ賦課金で、ただでさえ国際的に高額なわが国の電気料金は高騰する。国民負担も国内産業への負担も尋常ではない。

 河野太郎氏や自民党の小泉進次郎衆院議員は再エネに莫大な資金を投入し電気自動車(EV)をふやすという。しかし、日米欧のどこでも政府が補助金を出してもEVは消費者から敬遠され始めた。

 EVに熱心だったドイツ政府はEVへの補助金を前倒しで停止した。中国はEVで最先端を走っていたが、今や中国のEV大手、比亜迪(BYD)さえも方向転換してハイブリッド車などに傾いている。にもかかわらず、わが国はまだEVへの補助をやめない。

 再生エネルギー全体に関して国際社会は大きな揺り戻しの中にある。2050年までに二酸化炭素(CO2)排出ゼロを目指し、気温の上昇を1・5度までにおさえるとしたパリ協定への各国政府の姿勢が変化しているのである。

 パリ協定の目標数値に縛られているのは主に先進国であり、ロシアやグローバルサウスの国々には有利な条件が与えられている。先進国が年間5兆ドル(約750兆円)を温暖化対策費用として途上国に払うとき、はじめて彼らも先進国同様のCO2削減の努力をするという条件だ。

 中国がインドとともに途上国に分類されているのは周知の通りだ。そうした中で日本がCO2ゼロに向けて、巨額を支出するのは愚策である。

 ドイツは30年までに石炭から脱出する方針を延期する可能性がでてきた。英国はCO2ゼロの実現よりもエネルギー安全保障の方が重要だとして、化石燃料の段階的廃止に距離をおいた。

 キヤノングロ^バル研究所の杉山大志研究主幹が紹介する「脱炭素からの撤退が始まった」(ロス・クラーク著)には、パリ協定崩壊を示す事例が満載だ。たとえば昨年12月にドバイで開催した国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、議長を務めたアブダビ国営石油公社の会長が3年で石油生産量を約50%増やすと発表した。ブラジルとカナダが石油生産量の拡大を決定した。インドは30年までに石炭生産量を60%拡大する。そして中国だ。21年までの2年間に新規石炭発電所127基の建設を承認し、
その後の2年で承認数は182基まで増えた。

 繰り返す。パリ協定は破綻した。再エネへの巨額の支援、投資はやめるのが国益だ。広く世界を見つめて、日本だけが世界の潮流に取り残され、国力を衰退させる事態は防がなければならない。エネルギー分野でわが国が中国の影響下に置かれることも回避しなければならない。一般常識から見れば奇々怪々の動きを見せてきた河野氏だからこそ、その行動の意味と意図を国民に説明する責任がある。

☆☆☆☆☆☆☆  松本市 久保田 康文    産経新聞令和6年4月1日号採録