【なぜ日支事変がずるずると拡大し、日本は泥沼にはまったのか】
毛沢東の謀略をよめず「善意」で対処した日本外交の大失敗
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茂木弘道『日中戦争 真逆の真相
  誰が仕掛け、なぜ拡大し、どこが協力したのか?』(ハート出版)
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 近代史の四つの闇がすっきりする本である。真実は戦後の歴史学者の分析や歴史教科書の記述とは異なり、結局、日本は毛沢東の謀略にしてやられた経過が一目瞭然となる。日本人の『善意』は「悪党」たちには通じないのだ。

 「日本は国際法を尊重して、歴史の事実を重視する国です。しかし中国では国際法や歴史は、政治の武器に過ぎません。日本侵略者説を徹底論破した本書は、中国の真っ赤な嘘を暴く」として、本書を推薦するのはジェイソン・モーガン(麗澤大学准教授)だ。
日本が中国共産党が巧妙に仕掛けた謀略に巻き込まれたのが日支事変(左翼歴史学者は、これを「日中戦争」という)。
つまりうぶで善意に満ちた日本は世界のワルに欺されてしまったのである。
安岡正篤の言葉を思い出した。

 「悪党は一人でも悪党といわれ団結性を持っている。それに比べて善人は、善党といわれないように孤立的、傍観的である。従っていつも悪党に機先を制せられる。今日必要なことは善人が団結し、勇気と自信をもって民族の道議を回復することである」(安岡正篤。昭和四九年四月二日、日本会議結成会での基調講演)。

1937年に、すべての謀略が集中した。
日本を巻き込んで、対戦せざるを得なくなる蒋介石国民党軍を疲弊させるのが毛沢東の戦略だった。当時のシナを統治していたのは国民党主導の「中華民国」である。

中国共産党の狙いは戦争を長引かせ、泥沼化させることによって日本軍をも疲弊させる。国民党が疲労困憊、士気が弛緩した隙を狙って中国共産党が天下をとる。これが毛沢東戦略である。
徹頭徹尾、悪の論理で貫かれているのだ。

現在の中国共産党は、当時「正規軍」だった中華民国軍を「偽軍」と書く。中国各地の歴史記念館はかれらの政治宣伝の場だから、中国共産党が正統であると位置づけ、蒋介石軍は偽軍、なるほど分かりやすい歴史改竄だ。

そのうえ蒋介石軍たるや、度重なる猟奇的虐殺事件と休戦協定を平然と破り、そのうえに欧米の協力を得た南京大虐殺などのプロパガンダ戦。背後にはかれらのしたたかな謀略があった。

1937年に何が起こったか?
7月7日、盧溝橋事件(劉少奇らが日本軍に発砲し、戦端の糸口を仕掛けた)
7月29日 通州事件(在留日本人数百を惨殺し、日本を怒らせることを狙った)
8月13日、上海事変(無差別殺戮、日本は防戦。日本の世論は激怒)
12月10日、南京事件(国民党軍が逃げ去り、南京市民は日本軍入城を歓迎した)
これら一連の謀略によって日本は戦線を拡大させてしまった。ほくそ笑んだのは毛沢東だった。とくに日本が激怒したのは「通州事件」であり日本人多数が虐殺され、日本のメディアが大きく報道した。
「暴支膺懲」の特大文字が紙面を飾った。

 ところが、日本政府はと言えば、船津和平案を策定して、満州事変以後、日本が北支で得た権益のほとんどを放棄しようという和平案だった。日本人の「善意」は悪の前にころりと欺され、まさか1949年に毛沢東が天安門で人民共和国なる独裁国家を構築することになろうとは! この独裁国家成立に結果的に日本の無作為と愚昧な外交と宣伝ベタが手を貸したのである。
まさに日本の致命的欠陥は「宣伝ベタ」である。
四つの事変の詳細は本書にあたっていただくとして、評者がなによりも重要な指摘と瞠目したのは、アメリカ人ジャーナリストだったフレデリック・ウィリアムズの『中国の戦争宣伝の内幕』(田中秀夫訳、芙蓉書房出版)である。本書で紹介されている。
彼はこう書いた。

 「世界はこれらの非道行為を知らない。もし他の国でこういうこと(虐殺など)が起きればそのニュースは世界中に広まってその空恐ろしさに縮みあがるだろう。しかし、日本人は宣伝が下手である。商業や戦争において西洋諸国のような方法を取ることに熟達していたとしても、日本人は自らの敵が世界で最強のプロパガンダ勢力であるにもかかわらず、宣伝を無視するだろう」
(いまでも世界中に建立されている慰安婦像建立というかれらの陰謀に対して無為無策だ)

「満州で無辜の日本人たちを虐殺した正にその中国兵たちが、捕虜になったときは日本軍によって給養され、『罪を憎んで人を憎まず』のサムライ精神によって、『もうああいうことはしてはいけない。さあ行け』と説かれていたのである。日本軍の将官は虐殺の罪を無知な兵隊に帰するのではなく、南京の軍閥やモスクワ、無知な耳に叩きこまれた反日宣伝のせいだとしたのである」
こうしてワルたちは日本の善意を徹底的に利用した。

以上「宮崎正弘の国際情勢解題」より。

続いて「頂門の一針 6823号」より転載します。

【消費税に殺されたんです】   佐高信

日本で零細業者や自営業者が次々と倒れていく理由

領収書の整理も確定申告も消費税申告もしない政治家たちを横目に、税をぶんどられるために、慣れない事務作業に貴重な時間を奪われた中小零細事業者や個人事業主の悲鳴は、国には届いていないようです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で、評論家の佐高信さんは、消費税の逆進性によって自殺者が増加すると警鐘を鳴らした書籍『消費税のカラクリ』を紹介。

税務署ともめ重加算税まで課されて自殺に至った経営者がいる一方で、4億円もの申告漏れがありながら訴えられることすらなかった脳科学者・茂木健一郎氏のような人もいると、国税の「恣意的な運用」を批判しています。

消費税に殺されたんです
今年初めて、税金を申告した後の還付金を消費税が上回った。ある集会のプラカードに「市民は増税、自民は脱税」とあったが、折りも折りとて新たに怒りが湧いてくる。

1987年春、売上税という名で消費税が導入されようとした時、国民の怒りはすさまじく、党派を超えて各地で集会やデモが行われ、岩手の参議院補欠選挙で自民党の候補者が惨敗した。当時、社会党委員長だった土井たか子が、それで「山が動いた」という名文句を吐いたのである。

しかし、翌年、売上税は消費税と名称を変え、ほぼ同じ形で導入される。国民の怒りも長続きしなかった。消費税はそもそも不公平な税であり、景気を冷え込ませる。その逆進性は、所得の低い人ほど負担が大きくなるのである。

斎藤貴男は2010年に出した『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)で、これによって「輸入比率の高い企業は収益を拡大し」その代わりに「中小零細の事業者、とりわけ自営業者がことごとく倒れていく。正規雇用から非正規雇用への切り替えがいっそう加速して、巷にはワーキング・プアや失業者が群れを成す光景が見られる」と予測している。

「自殺に追い込まれる人々がこれまで以上に増加する」とも付け加えているが、誇張とは言えないだろう。消費税は事業の業績に関係なく大赤字でも取り立てられる。また、なかなか価格に転嫁できない。

仕入れに税額控除をめぐって税務署ともめた小出義人の事件がある。追いつめられて自殺した小出の妻がこう語っている。「うちの商売は下請けのまた下請けでしたから元請けさんに消費税分を請求し、払ってくれたとしても、必ずそれ以上の値引きを強いられる。いくら働いても儲からないんです」

大阪で電気工事業を営んでいた小出が亡くなった後、彼女がつぶやく。「消費税に殺されたんですよ。あんなものがあったのでは、何の展望も持てません。本来は明るくて、みんなに好かれていた人やったのに、最後の頃はお酒ばかり飲んで、『もう、あかんねん』って」

小出は当局の恣意的な運用で重加算税まで課せられ、それを払うためにサラ金もあるではないかと示唆された。「恣意的な運用」で忘れられないのは、2009年に発覚した脳科学者、茂木健一郎の一件である。彼は2006年から3年間の4億円の収入を申告しなかったのに東京国税局は悪質性が低いとして重加算税も課さなかった。

申告的には「脱税額が単年度で3千万円を超えたら起訴、1億円超えは実刑というのが相場」なのに茂木がそれを免れたのは権力側のタレントだからだろう。そんな茂木をNHKは「プロフェッショナル」に登場させ、「本人も深く反省し、今後は税務処理を適正に行うと表明している」として、「予定通り」それを放送した。