【反日プロパガンダの原点は、百年前の、この文書にあった】
  ドイツ軍の残虐を日本兵に置換させたのがアイリス・チャンだ
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JWロバートソン・スコット著、ルイ・ラマカース画
  和中光次・現代語訳、大高未貴・解説『是でも武士か』(ハート出版)
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 原書は百年前、日本や米国の「反ドイツ」という世論形成に決定的な影響を与えた宣伝文書。その復刻である。原題は『IGNOBLE WARRIOR』(卑劣な戦士)。
邦訳はわかりやすく題名には『それでも武士か、おぬしは!』という意味を持たせた。つまり日本に対しての反ドイツ政治宣伝書なのである。

 プロパガンダ文書はベルギーにおけるドイツ兵の蛮行を、さもあったかのように描写した『創作』で、じつは英国が日本において自国の批判が起きないように仕向けるという戦略的配慮からばらまかれた。

 たとえば、「痛ましい状態の屍体が山のように積まれており、独軍の一兵士は一人の赤ん坊を連れてきた、その頂に載せ、子供の両足を屍体の間に挟み、その陰惨な光景を写真に撮影した」、「独兵等が青年と少女をその親の目の前で射殺し、その後、ふたりを裸にして一緒に縛り付け、藁に包んで火を放った」

 この本がなぜ重要なのか、それは政治宣伝の巧妙さを象徴する典型モデルであり、プロパガンダこそが情報戦に日本が勝つための格好の反面教師となるからだ。
 当時、陸軍参謀本部嘱託だった池田徳真(徳川慶喜の孫)は「この一冊で私のドイツ観は歪められてしまった」と述べたほどの宣伝効果を上げた。

 赤ちゃんを銃剣で串刺しにした等という悪質な宣伝はアイリス・チャンの『レイプ・オブ・ナンキン』に転用され、「残虐なドイツ兵」が「日本兵」と入れ替わった。「捕虜虐殺」とか、「731部隊」(防疫部隊だった)、「性奴隷」などが、創造された。この原書を最初に匿名を条件に翻訳したのが柳田国男だった。

 戦時中、じつは本書が日本の宣伝機関のテキストとなった。政治的プロパガンダとはこうやるのだという見本である。
 ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』(岩波書店)は、ありもしなかった日本軍の「悪行」を書き連ねた。ダワー夫人は日本人女性で、彼は金沢で教鞭を執った知日派だが、思想は治癒の見込みのない左翼。MIT名誉教授だが、日本の近代史をやぶにらみでみた。ベ平連に協力していた。

 前掲アイリス・チャンは、「日本軍は占領地で略奪し、女を襲い、赤ん坊を放り上げては笑いながら銃剣でさしていた」などと見てきたような嘘を並べた。評者(宮崎)は、往時、アジア各地の空港書店で、この出鱈目本のペンギンブックス版が山のように積まれている風景を不快感で眺めていた。つまり、この国際的な反日プロパガンダ謀略は、中国ばかりか、米国が便乗し、英国が支援していたことがわかる。
  高山正之氏が『週刊新潮』で、こう批判した。

「それはみな聞いたことがある。第一次大戦さなか、ベルギーを占領した独軍は民家まで襲い、暴虐の限りを尽くした。将来の抵抗勢力になる子供たちは銃が持てないよう、その手首を切り落とされた。産院も襲われ、看護婦は犯され、保育器の赤ん坊は放り上げて銃剣で刺した。(中略)ところが戦後、「資産家が手首のない子供たちを引き取ろうと探したが、見つからなかった」。

 アーサー・ポンソンビー『戦時の嘘』には「戦時下の報道を検証したら犯された看護婦も殺された赤ん坊もいなかった」と指摘した。
 こうしたフェイク情報、捏造記事は、米広報委員会(CPI)が関与した。ウィルソン大統領が創った組織で、嘘放送の発信で戦況を有利に導き、国民を戦争に誤導した。現代世界でSNS空間に飛び交うフェイク情報の元締めかも知れない。東京裁判では聞いたことない嘘が、GHQによって後追いで語られ、反日のメディアが報じた。目的は日本人が残虐だったことにねじ曲げて「2発の原爆も正義の鉄槌だった」という東京裁判史観に執拗に上塗りされた。

 それでも飽き足らない。
 そこで中国がまったく興味の無かった「南京大虐殺」なるものをでっち上げた。最初は二万人の虐殺死体がごろごろしていたと朝日新聞に書かせたが、それじゃ原爆の死者に勘定があわないので、十倍にした。江沢民は日本の援助をねらって、さらに南京の虐殺人数を30万人に嵩上げし、南京の出鱈目記念館を改装し、学生や軍の必見見学ポイントに指定した。

 これら悪質な政治宣伝モデルが、この本である。
 ところで、長いが鋭角的な解説を書いた大高さんの文章はド迫力満点、率直に言って、彼女の解説だけを読んでも全体が把握できる。また彼女の得意とする突撃インタビューは反日戦線の首謀者のひとり、クーパーらに挑んで、激論のなかから彼らの矛盾した論理を抉っていて読み応えがあった。

以上「宮崎正弘の国際情勢解題」より。

続いて「頂門の一針 6823号」より転載します。

【香港「国安条例」で中国化が加速】
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【高橋洋一「日本の解き方」】香港「国安条例」で中国化が加速 ビジネスへの影響も当然、スパイ容疑で邦人拘束も日本は金融ハブの座奪う好機 

 香港立法会は19日、国家安全維持条例法案を全会一致で可決し、23日に施行した。

 香港政府は8日に立法会に条例案を提出、同日に審議を開始し、わずか11日程度でのスピード可決となった。

 香港基本法第23条は、香港政府自身が、国家反逆、分離、扇動、中国政府に対する破壊行為などを禁じる法律を制定するよう義務付けている。今回成立した条例は、国家反逆、反乱、国家機密およびスパイ活動に関する犯罪、国家安全を脅かす妨害行為、国家安全を脅かす活動をする外部勢力と組織─の5つの分野を犯罪の対象として処罰することを可能とする。

 中国本土も同じであるが、法適用の範囲が恣意(しい)的であり、国安条例は国家の安全や国家秘密の範囲を行政長官が決められると規定している。

 条例は、実質的に外国人や外国組織を標的にしており、2020年、中国によって導入された香港国家安全維持法と補完的な関係になっている。そのため、中国本土で現在起こっているスパイ容疑での邦人拘束が香港で生じてもおかしくない状況になる。香港に進出していた日本企業もこれまでの方針を変更せざるを得ないだろう。

 これまで、香港はこれまでの歴史的経緯もあったので別な扱いと思われてきたが、今や中国本土と同じである。当然ビジネスへの影響もあるはずだ。

 と同時に、これで、香港の経済回復はますます遠のき、金融ハブとしての国際的地位を損ねるのは確実だ。中国が香港の一国二制度をほごにしたときに、香港が中国並みになることは予想されたとはいえ、予想以上のスピードで達成されつつある。

 本コラムではしばしば「民主主義指数」を取り上げている。エコノミスト・インテリジェンス・ユニット研究所が公表している0から10までのランク付けだ。

 167カ国中1位はノルウェーで9・81だ。先進7カ国(G7)では、12位がドイツで8・80、13位がカナダで8・69、16位が日本で8・40、18位が英国で8・28、23位がフランスで8・07、29位が米国で7・85、34位がイタリアで7・69だ。

 一方、香港は88位で5・24、中国は148位で2・12、北朝鮮は165位で1・08だ。

 かつて香港の民主主義度は、ギリギリ先進国で最下位レベルの6程度だったが、今回の条例を含め、一連の一国二制度からの離脱により、中国レベルに収斂(しゅうれん)していくだろう。

 と同時に、金融ハブとしての金融市場の地位は望めない。どこがその代替をするのか。日本としては絶好のチャンスでもある。

 もちろん、外国人の受け入れについては慎重になるのは当然だ。それは前提としつつ、香港からの脱出者について、台湾では引き受けない方針なので、欧米や米国に行っているという状況で日本は何をすべきか。

例えば一定の厳格な審査の上、引き受けて香港の金融市場の地位を取ってしまうという戦略もあるだろう(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

☆☆☆☆☆☆  松本市 久保田 康文   夕刊フジ令和6年3月28日号採録