【自由と身勝手をはき違えてはなりませぬ】
明治37年に始まった日露戦争が二年後に集結すると、軍需景気は急速に終焉を迎え、高い税率と物価高に多くの國民が貧窮しました。

日露戦争後の日本には、「自由主義」「自然主義」が風潮が起こります。

「私も友人たちのように、いっぱしの自由と云う言葉を使ってみたくてね。だけどその実、何が自由か分っていなかったものですよ。
せいぜい厳しい父の教えから逃れるのが自由だと思ったぐらい。父への反発心に火をつけて反抗したい氣持ちになったのですよ」


武家の誇りを守り通してきた父親にすれば、訳も分からずに自由を論じている者に、わが娘が迎合している事などとうてき我慢できない事でした。

「空論は許さぬ。たやすく風の流れに従うとは根無し草も同然じゃ。自由と身勝手をはき違えおって。
そんなくだらん輩迎合するぐらいなら、いっそお前は孤独を選べ!」

その様子を見ていた母親は娘に云いました。

「本当は親身になって話せる友が欲しいのではないですか。お前が友に話したいのは自由主義の事ではなかろう。
安心しなされ。必ず本物の友が出来ます。一時の氣を紛らわせる相手ではなく、生涯の友を見つけなされ」

昨今の「自由」について誤った認識はますます酷く為っているように見受けられます。
風潮に乗じるのが仲間の証であるかのような意識さえ蔓延しています。

陰湿化するいじめの根底にも、こうした意識が在るのではないでしょうか。

『徳は孤ならず。必ず隣あり/道徳は孤立しない。きっと親しい仲間ができる』

人と違ってもそれが道徳として正しいのであれば孤立などしない。

それどころか眞の仲間が出来るという事を、勇気を以て信じたいものです。

以上「女子の武士道」石川真理子著より

続いて「頂門の一針 6797号」より転載します。

【消費者物価とマイナス金利】
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【高橋洋一「日本の解き方」】金融機関へギフト、住宅ローンの変動金利上昇 日銀が狙う「2層構造化」で日本経済全体への悪影響

 総務省が2月27日発表した1月の全国消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く)は、前年同月比2・0%上昇の106・4となった。伸び率は3カ月連続で鈍化した。

 今後の物価の動きについて、1月の日銀展望リポートでは、消費者物価指数(生鮮食品を除く)の前年比は2・4%と昨年10月の2・8%から下方修正されている。

 マスコミは、日銀のインフレ目標である「2%を上回る水準での上昇が続く」と表現するが、2%には「プラスマイナス1」くらいの幅がある。それに加えて、金融引き締めは遅れて行うという「ビハインド・ザ・カーブ」の運営なので、少なくとも「4%」くらいまでは動くべきではない。

 これとインフレ率の今後の見通しから、「筋論」としては動いてはいけない。

 米国のインフレ目標は、コア個人消費支出価格指数(対前年同月比)でみているが、金融引き締めを開始した22年3月のコアは5・4%だった。金融引き締めによりその後一時上がったが、すぐにピークアウトし低下に転じて、昨年11月のコアは3・2%になっている。この動きは、まさに金融引き締めは遅れて行う、ビハインド・ザ・カーブだ。

 つまり、2%を超えたらすぐ金融引き締めでも構わないと思っているのは大きな間違いだ。そもそも、「金融正常化」などというスローガンで金融政策を行うのは筋違いであって、金融政策はインフレ率との関係で動かすか動かさないかしか意味ない。

 しかし、日銀は金利を動かそうと思っている。今年1月にあっても不思議ではなかったが、3、4月の金融政策決定会合では動くとみられている。今のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)は、短期はマイナス金利、長期は10年国債がゼロ%というのが建前の金利政策だ。ここ数年で、長期での10年国債のゼロ%は完全に崩れている。ただし、もともと、金融政策は短期金利だけを決めて、長期金利は自由にするというのが標準なので、実質的な弊害は少ない。

 一方で短期金利は金融政策の根幹なので、慎重に扱う必要がある。今の日銀当座預金は3層構造で、昨年末の当座預金残高518兆円のうち、0・1%のプラス金利が適用されているのは206兆円、ゼロ金利は284兆円、マイナス0・1%の金利適用は28兆円だ。単純な方法としては、この28兆円のマイナス金利適用分をゼロ金利にすることが考えられる。3層構造の2層構造化だ。

 植田和男総裁体制の日銀は金融機関に優しいので、これは28兆円の金融機関へのギフトになる。と同時に、短期金利は一斉に上がるはずで、例えば住宅ローンの変動金利は上がるだろう。

 さらに、短期金利で打ち止め感が出なければ、長期金利も連動して上がる可能性もある。短期金利と長期金利が連動して上がると、円安も方向転換し、日本経済全体への悪影響も考えられる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  松本市 久保田 康文  夕刊フジ令和6年3月2日号採録