【TVの規制は何のため?】
この数十年でTVでの表現の幅が恐ろしい狭くなる。差別語とされる言葉が使えなくなった。「メクラ」「ビッコ」「カタワ」(平仮名で書くとNGなのでカタカナにする)は問答無用に禁止だ。他にも規制された言葉は多数ある。
 
だが、メクラは差別語だろうか?昔からそれは普通名詞であったが、昭和50年代から始まった「言葉狩り」で使えなくなる。「メクラ」がNGになったので、「メクラ蛇に怖じず」や「群盲、象を撫でる」の諺も禁止。しかし、英語で「メクラ」を表す「ブラインド」はOKなのだ。
 
「キチガイ」は駄目だが、英語の「マッド」「クレージー」はOKである。理解できないのは「片手落ち」がNGな事。障碍者を意識するとの事だが、これは片方だけに「手落ち」がある状況の言葉である。
 
「馬鹿でもチョンでも」と言う表現もNGだ。この「チョン」が朝鮮人を指すと言うのだが、これは江戸時代から使われた言葉である。「取るに足らない」と言う意味だ。しかし、点の「チョン」もダメで「バカチョンカメラ」も使えない。
 
「高所恐怖症」を禁止用語にするTV局もある。実際に「高所恐怖症」の視聴者から抗議が来たので、禁止にしたらしいがこれも本来差別語ではない。抗議の度に禁止にして行く事が、優しい社会と言えるのだろう。
 
夏に風物詩である「スイカ割り」もダメである。「目の不自由な人を笑うから」と言うのだが、同じように「福笑い」もNGである。「それを観た人が傷ついたと感じる映像を流してはいけない」とする自主規制があるからだ。
 
たった一人でも傷つく人がゐれば放送してはならない。その論理は一見正しい様に見えるが、やはりおかしいのではないだろうか。例えばハゲの人が「TVのハゲのかつらで傷ついた」と抗議がくると放送を止めるのだろうか。
 
「障碍者」の「碍」は当用漢字にない理由で「害」の字であった。すると差別的ニュアンスがあるとして、「障がい者」となり、一部人権派は「障」もイカン「しょうがい者」と言い始める。その影響で小学校の「障害物競走」は「興味走」に変わった。
 
TVの刑事ドラマで犯人が逃走する場面があるが、犯人は必ずシートベルト着用しなければならない。警察からの指導である。また、赤信号で突っ走る事も、歩行者を妨害する行為もダメである。単車の犯人がヘルメットを被らないもの禁止。
 
凶悪犯人が道路交通法を守ると考える方が、おかしいと思ふ。殺人を犯す場面はOKで、シートベルトをしない場面はNGと言うのは矛盾ではないだろうか。そんな規制が当たり前の社会自体が不思議である。

以上「大放言」百田尚樹著より

続いて「頂門の一針 6792号」より転載します。

【エンジン回帰は近い?】    斎藤満

テスラの苦戦が示唆するEVの命運。自動車「家電化」で低価格競争へ突入

米国株が最高値を更新する好調さを見せる中で、EV(電気自動車)の先駆者テスラの株価が、昨年夏から3割も下げる苦戦を続けています。これはEVが抱える問題を示唆している可能性があります。(『 マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

中国が仕掛ける価格競争

テスラの苦戦をもたらしたきっかけは、中国のEVメーカー「BYD」の低価格戦略です。

中国の雇用対策とも相まって、中国のEV生産が高まり、早くも過剰供給との声すら上がるようになりました。インドでの低価格EVの供給とともに、低価格のEV供給の増加がテスラの価格戦略にも影響するようになりました


中國では国策としての住宅供給策が、1億戸以上の供給過多をもたらし、住宅市場の需給バランスを壊してしまいましたが、EV生産もその二の舞となりつつあります。

中国内でのEV過剰は、低価格EVの海外への輸出を通じて、EV価格の低下圧力となります。

車と家電、価格戦略の違い

EV化は、自動車を「輸送用機械」から「電気機械」「家電製品」へのシフトをもたらします。

この両者の間には、価格戦略で大きな違いがあります。これまでの自動車業界の価格戦略は「値上げの歴史」を持っていました。日本でも初代カローラや初代カムリに比べて、今日のカローラ、カムリの価格は初代の約2倍になっています。

そして高級車でもクラウンからレクサスに進むにつれて、ハイエンドのレクサスは1台2,000万円もします。初代クラウンのハイエンドモデルの5倍以上になります。

このように自動車は技術革新の中でも「値上げの歴史」を辿ってきました

これに対して、電気機械、家電は技術革新の下で、ひたすら「値下げの歴史」を展開してきました。カラーテレビが典型ですが、他の電気製品も大方、時がたつと販売価格が引き下げられています。液晶の薄型テレビは出現当初、40インチでも1台60万円以上しましたが、今日では50インチでも10万円強で手に入ります。

自動車が「輸送機械」から「電気機械」化すると、この価格戦略が変わる可能性があり、走行機能よりも走る音響製品、走るコンピューターの機能が前面に出ると、より電気製品化します。

中国EV、テスラの動きは、早くもこれを暗示している可能性があります。