◾️「クリスのベースは独自の生命を持っていた」



2018年4月23日

By Bill Bruford


クリス・スクワイアの『未知への飛翔』が豪華なボックス・セットとして再リリースされることになり、私の関与に関心が集まっている。

いつも信頼できるシド・スミスとのインタビューで、私はクリスが私にとって最初のベーシストだったことを指摘した。

私はまだ経験が浅く(それゆえ、経験を積むためにキング・クリムゾンに移籍した)、ベーシストが何ができるのか、何をするのか、何をしたいのか、よく分かっていなかった。

クリスがベースではどちらかというと撥弦楽器のような、高音のサウンドを採用しているようで、ギター・パートと同じようにベースが主役になることを望んでいたことを、私はまったく変だとは思わなかった。

彼は対位法がとても上手だったので、ベース・パートは独自の生命を持っていた。歌ったり、一緒に口ずさんだりできるようなものだった。


私たちのどちらも、「リズム・セクション」が特別なアイデンティティを持つというドラム文化の考えに完全に傾倒していたとは思えない。

コリンズ辞書の定義では、バンドのリズム・セクションは「リズムを供給することを主な仕事とするミュージシャン」となっているが、優れたロックや多くのジャズ・グループのように、その機能がグループ内でその時々に異なるメンバーに割り当てられている場合には、この定義が崩れてしまう。


私は、自分がビッグバンド時代から派生した意味でのリズムセクション(例えばホーンセクションに匹敵する)にいるとは思っていなかったし、クリスもそうだとは思っていない。

私の耳は、どんなアンサンブルでも、最大のリズム情報や密度を提供するミュージシャンに自然と引き寄せられる。

例えば、80年代のキング・クリムゾンでは、ギタリストのロバート・フリップやエイドリアン・ブリューがそうだった。


とにかく、このアルバムは、クリスとのほとんどのことがそうであったように、耐え難いほど遅いテンポで展開されたとしても、私にとってはまた新たな鋭い学習曲線であった。

彼のホームスタジオで録音されたこのレコードは、よく聴いたのですり減っている。その理由の多くは、2003年に他界したアレンジャー兼オーケストレーターのアンドリュー・プライス・ジャックマンの骨の折れる仕事によるものだ。


このアルバムのレコーディング・エンジニアは、アンドリューの弟のグレッグだった。

グレッグは、2006年にアメリカで開催されたリッケンバッカーのベース・イベントで、クリスが急遽、アンドリューの息子で、自身もオーケストレーター、アレンジャーとして成功を収めているヘンリー・ジャックマンに声をかけ、手伝ってもらったことを語っている。

「クリスは、ヘンリーがアンドリューの代わりにキーボードを弾き、オーケストレーションを再現できるかどうかを確かめたかったんだ。ヘンリーがそのレコードを聴いたのはそのときが初めてで、彼はその素晴らしさを信じられず、父親がやったことを再現するためには自分がいかに頑張らなければならないかを考えた」


出典:

https://billbruford.com/chris-squires-fish-water/