◾️スウェーデンのグルーヴ・クイーン
メリット(またはメリト)・ヘミングソンは長年にわたって、数多くのアルバムをリリースしてきました。
スウェーデン国内ではレジェンダリーなミュージシャンとして有名なようです。
今度リリースされるロイネ・ストルトとのコラボアルバムを聴く前に、ストルトが10代の頃から影響を受けていたという70年代初期のアルバムを聴いてみました。
特にハモンド・オルガンの調べが印象に残りました。
「The Swedish Progg」というスウェーデンのプログレを紹介するサイトのレビュー記事を紹介します。
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メリット・ヘミングソンが長年にわたってリリースしてきた作品の多くには、どこか安っぽいところがあるが、ハモンド・ジャズ、ポップス、スウェーデンの伝統音楽のブレンドが彼女の好みに合ったとき、確かに抗いがたい魅力がある。
ヘミングソンは60年代にレコーディング・キャリアをスタートさせ、RCAカムデンから2枚を含む数枚のアルバムをリリースした。彼女はインストゥルメンタル・ソウル・ジャズ/イージー・リスニングの型にはまり、名を上げようとしていた。
民族音楽をベースにしたスタイルが確立されたのは、EMIからリリースしたファースト・アルバムからで、このアルバムはスウェーデンで人気を博し、数多くのテレビ出演や立派なアルバム・セールスを記録した。
彼女のベスト・アルバムは今でも多くの人に高く評価されており、近年はちょっとしたルネッサンスさえ起こしている。
Huvva! - Svensk Folkmusik På Beat [1971年]
(ビートで奏でるスウェーデンの民族音楽)
著名なフォーク・バイオリン奏者のオーレ・ヒョルトら、多くの著名人の協力を得て、メリット・ヘミングソンは彼女のビジョンを実現させた。
観客を喜ばせるイージー・リスニングの定番曲は後回しにして、伝統的な曲だけを演奏し、当時は完全に彼女独自のニッチを切り開いた。
「スウェーデンのグルーヴ・クイーン」という彼女の評判はここから始まった。
『Huvva!』は4枚目のアルバムだが、まるでデビュー作のようだ。そして強力なデビュー作である。
Trollskog - Mer Svensk Folkmusik På Beat
[1972年]
(スウェーデンの民族音楽をもっとビートに乗せて)
『Trollskog』は『Huvva! 』を引き継いでいる。フルートのBjörn J:son Lindh、ギターのJanne Schaffer 、パーカッションのSabu Martinezらがスタジオ・メンバーに加わった。
部分的なメンバーチェンジにより、ややファンキーなスタイルとなり、いくつかの曲にはサイケデリックな色合いさえ感じられる。
『Huvva!』と同じくらい良い作品である。
Merit Hemmingson & Folkmusikgruppen /
Bergtagen [1973年]
ヘミングソンは『Det for två vita duvor - folkton i Vikens kapell』をリリースした後の1973年、コメディアン/詩人/子供番組の司会者/思想家/偏屈者というありえないほど大物なBeppe Wolgersとともに新たに結成された3人組バックバンドFolkmusikgruppen(「民族音楽グループ」)とのアルバムで戻ってきた。(ウォルガースは『Trollskog』にも数曲参加している)
自信に満ちたアルバムであり、彼女はベテランのスタジオ・ミュージシャンと仕事をするのとは対照的に、自分のバンドを持つことに安らぎを感じているのは明らかだが、同時にそのコンセプトは徐々に薄れ始めていた。
素晴らしいトラックもいくつかあるが、彼女の最初のちゃんとしたフォーク・アルバム2枚をあれほど魅力的なものにしていた先駆的な探究心は薄れ、ジャズの影響が色濃く出ていることが、妙に音楽を息苦しくしている。
とはいえ、『Huvva!』から始まったフォーク・アルバムの非公式トリオを完成させるには、持っていてもよいアルバムだと思う。
出典:
http://swedishprogg.blogspot.com/search/label/Merit%20Hemmingson
【プロフィール】
1940年、スウェーデン北部の小さな農村ヤールスタ(イェムトランド)で生まれた彼女は、生まれたときから音楽フリークで、4歳でアコーデオン、7歳でピアノを始めた。学生時代はジャズにどんどんのめり込んでいった。
60年代の初め、学校卒業後はトロントのオスカー・ピーターソンのジャズ・スクールに通うつもりだったが、その代わりにニューヨークに行ってバンドを結成した。
有名なジャズ・クラブ、バードランドで毎晩のようにジャズを聴き、ヴィレッジ・ヴァンガードではマイルス・デイヴィスのバンドにも参加した。ジョー・ザヴィヌルとラロ・シフリンからピアノのレッスンを受けた。
アメリカで4人の黒人女性ジャズ・ミュージシャン(アルトサックス、トランペット、ベース、ドラムス)とバンドを結成し、彼女がピアノを担当した。
Merit H. And Her Girl Starsとして、半年間スウェーデンでツアーを行った。
1960年代半ばにはジャズ・シーンを離れ、ハモンドB3オルガンに「愛」を見出し、メリトーンズというグループを立ち上げ、1967年に最初のアルバムを作った。
70年代の初めには、スウェーデンのフォーク・ミュージックが彼女の人生に入り込んだ。
『Huvva!』(1971年)では、スウェーデンの民族音楽とロック、そして彼女自身の言葉のないハミングがミックスされている。
アルバムは高く評価され、続く『Trollskog』(1972年)と『Bergtagen』(1974年)は、彼女のスウェーデン民族音楽三部作となった。
この頃、詩人ベッペ・ウォルガースと2枚組のアルバムを録音した。(『Det for två vita duvor』1973)
2人のバイオリン奏者とリズム・セクションとともに、このまったく新しいコンセプトでスウェーデン中をツアーし、大成功を収めた。
シンセサイザーを使って他の音楽分野も探求し、さまざまなアーティストと共演したり、曲を書いたり、共作したりした。
長年にわたり、ハープのグロリア・ルンデル、ヴォーカルのマリッツァ・ホーン(アルバム『Orgel, harpa och horn』1983年をリリース)や、アニタ・ストランデル、パンフルート奏者のダナ・ドラゴミルらと共演している。
2017年スウェーデンの音楽殿堂入りを果たす。
2019年Gannevik賞を受賞。
2022年6月、英国王室よりLitteris et Artibus勲章を授与される。
2024年5月ロイネ・ストルトとアルバム「Mother Earth Forever」をリリース。
現在ゴットランド島在住。
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