◾️ベノア・デイヴィッドがミステリーを語る



2024年5月1日

By Malcolm Dome(Prog)


2010年、カナダ出身のシンガー、ベノア・デイヴィッド(母国語の仏語読みではブヌワ・ダヴィッド)は、イエス陣営に身を置いて幸せな日々を送っていたが、前所属バンドであるミステリーに戻り、バンド通算4枚目となるアルバム『One Among The Living』をレコーディングした。彼とバンド・リーダーのミシェル・サンペールに話を聞いた。


その名にふさわしく、ミステリーは特に知名度の高いバンドではない。

実際、カナダ出身の彼らが最大のブレイクを果たしたのは、ヴォーカルのベノア・デイヴィッドがイエスのジョン・アンダーソンの後任に抜擢された2年前のことだった。突然、ミステリーは脚光を浴びることになったのだ。しかし、このバンドの歴史は1986年まで遡る。


当初ミステリーは、創設者のミシェル・サン=ペールがギター、レイモン・サヴォアがヴォーカル、ブヌワ・デュプイがキーボード、ステファン・ペローがドラムを担当していた。バンドがセルフタイトルの5曲入りデビュー・ミニ・アルバムをリリースするのは1992年のことで、その頃にはゲイリー・サヴォアがヴォーカル、リチャード・アディソンがベースを担当していた。

しかし、ペローが衰弱性の病に倒れたため、バンドは活動休止を余儀なくされ、1993年に復帰したが、その時にはドラマーは足が不自由になっていた。

1996年までには、バンドはサン=ペール、サヴォア、ベーシストのパトリック・ブーク、ペローの4人組となり、デビュー・フル・アルバム『Theatre Of The Mind』をサン=ペール自身のレーベル、ユニコーンよりリリースした。


デイヴィッドは1999年に加入したが、『Beneath The Veil Of Winter's Face』でレコーディング・デビューを果たすまでには2007年までかかった。 

そしてさらに3年のブランクを経て、ミステリーは『One Among The Living』という、これまでで最も国際的に高く評価されたアルバムを発表した。

デヴィッド、サン=ペール、ガニュは前作から引き続き参加し、ダリル・ステュアマー(ジェネシス)、オリヴァー・ウェイクマン(イエス)、ジョン・ジョウィット(アークとIQ)ら多数のゲストが参加している。



フロントマンにとって、モントリオールのバンドが活動を再開したことはホッとすることだが、この遅れの理由も理解している。

「これはミッシェルのプロジェクトで、彼が原動力なんだ。他のメンバーはミッシェルに雇われているわけではないが、ミッシェルが新しいアルバムを作る決断をするのを待たなければならない。彼は多忙な男だし、ミステリーのレコードを作るには明らかにコストがかかる。ユニコーン・レーベルの代表として、ミシェルは資金を調達しなければならない」


「でも、彼とまた仕事ができることを嬉しく思っている。今回は自分たちのサウンドを見つけることができたと思う。前2作での問題は、まだ方向性を模索していたことだった。私たちのスタイルは、ピンク・フロイドやジェネシス、マリリオンに少し似ているという事実によって定義されてきた。今回は、本当に飛躍できたと思う」


デイヴィッドは、彼らのキャリアの中でストップ・スタートの瞬間が何度もあった後、ミステリーは今、真のインパクトを与える態勢にあり、それはイエスへのコミットメントによって妨げられることは全くないと感じている。

「もちろん、私には私の優先順位があるし、イエスが最優先だ。でも実際、バンドのスケジュールには十分な空白があるから、ミステリーと一緒にたくさんのことができる。彼らは、私がここでデートができる、あそこでショーができると言うのをじっと待っている必要はない。ミッシェルがそう決めるなら、このアルバムでツアーをする時間はたくさんあるだろう」


デイヴィッドのミステリーに対する情熱がどれほど遠く、深いものであるかは、ニュー・アルバムで初めて曲作りに参加したことからもわかる。

「1、2曲のクレジットがあるんだけど、その経験を楽しんだよ。今まで作曲のプロセスから外されたことはなかった。ミシェルがすべてを独り占めしているわけではない。でも、これまではただ曲を演奏することに打ち込むだけで幸せだった。というのも、ミッシェルは優れた作曲家であり、どのように歌詞を構成すればいいかを常に理解していたからだ」


このアルバムには、デイヴィッドの現イエスのバンドメイトであるオリヴァー・ウェイクマンをはじめ、豪華なゲストが参加している。ウェイクマンの子供を説得したのはシンガーだったのだろうか?いや、違う。

「彼に声をかけたのはミシェルだ。私は全く関係ない。このことが証明しているのは、ミッシェルがプログレ界で高く評価されていることだ。オリヴァーはダリルと強い絆で結ばれており、それが彼が参加した理由でもある」



実際、ミステリーは現在、デイヴィッド、サン=ペール、ガニュに、復帰したデュプイ、さらにディーン・ボールドウィン(ギター/キーボード)、フランソワ・フルニエ(ベース)を加えたツアー・ラインナップを組んでいる。そして、この新しいラインナップが一日も早く演奏する機会を得ることを望んでいる。

「ツアー日程はまだ決まっていない。でも、このライヴ・ラインナップを組んだという事実が、間違いなくやるつもりだということを物語っている」


実際、デヴィッドはミステリーが今後もっと多作になると確信している。

「これまで以上にバンドの一員であることを実感している。『One Among The Living』のレコーディングでは、私たち全員がひとつになれた。今までのどの作品よりも、家族のように感じられた。だからこそ、ようやく自分たちのサウンドを見つけられたのかもしれない。

ミッシェルと私が他のプロジェクトに参加することで、私たちは常にリフレッシュしてこのバンドに戻ってくることができる。逆の見方をする人もいるだろう。しかし、そうではない。ミステリーは前進している」


ミステリーのディスコグラフィーは以前から急がないが、デイヴィッドはミステリーのニュー・アルバムは遅かれ早かれ出ると断言している。

「次回作まで3年の空白はないだろう。私たちは今、とても準備万端だし、たくさんのアイデアを持っている。新しいアルバムもそれでうまくいった。以前のセッションから残ったものはほとんどない。ほとんど新しいものばかりで、新しいアイデアはいつもみんなを興奮させ、スパークさせるんだ。だから、次に一緒にレコーディングするときも、同じようなアプローチで臨むよ」


長い年月がかかり、途中、失敗もあったが、ついにミステリーはカナダ・プログレの新たなムーブメントの先頭に立つ準備が整ったようだ。それは、過去の偉大なミュージシャンたちの影響を受けつつも、未知の領域へと向かっているのだ。

「こう言っておこう。ミステリーの曲をもっとたくさん聴いていただけると確信しているよ。そしてそれは、これまでに聴いたことのないようなものになるだろう。私たちはまさにそのゾーンにいる」


出典:

https://www.loudersound.com/features/our-style-has-always-been-defined-by-the-fact-that-we-sound-a-little-like-pink-floyd-genesis-and-marillion-mystery-and-the-making-of-one-among-the-living


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