◾️「全員が一皮むけたプレイをした」



2024年4月12日

By Robert Adams(Metal Talk)


約30年前、私はイエスの最新アルバム『トーク』がリリースされる直前に、イエスのベーシスト、クリス・スクワイアにインタビューする機会に恵まれた。

当時、私が執筆していた雑誌は、イエスを取り上げるのにふさわしいバンドだとは思っていなかったので、このインタビューは現在まで私の個人的なアーカイブにとどまったままだった。

しかしSpirit Of Unicorn Musicは2024年5月24日にアルバム『トーク』の30周年記念エディションをリリースする予定なので、クリス・スクワイアとのインタビューがついに掲載されることになった。


その日、クリス・スクワイアから自宅に電話がかかってくると、イエスのプレス・エージェントから聞かされた。Zoomやオンライン会話が普及するずっと前のことであることを忘れてはならない。私は質問のリストを用意して、電話が鳴るのを心待ちにしていた。


私はトーク・アルバムのプレリリース・カセットをもらっていて、それにすっかり魅了されていた。

クリスも私も、この素晴らしいアルバムにどんな災難が待ち受けているのか知る由もなかった。


約束の時間を数分過ぎたとき、私の電話が鳴った。

「もしもし、ロバート・アダムスさん?」

「そうです。スクワイアさんですか?」と私は尋ねた。

「いいえ、スクワイアさん(Mr. Squire)は私の父です。クリスです」

なんて紳士なんだろう。


私はクリスに、熱烈なイエス・ファンではないが、「ラウンドアバウト」、「アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル」、「燃える朝焼け」などの曲はよく知っていると説明した。彼は私の率直な気持ちを理解し、実際に感謝してくれた。


初めて買ったイエスのアルバムは『90125』で、素晴らしいアルバムだと思ったと話した。彼はまた、その賛辞に感謝し、自分も好きだと言った。


『90125』は、多くの人が恐竜と見なしていたバンドに、商業的成功のまったく新しい道を開いた。

クリス・スクワイアに、ポップ・スターになった気分はどうかと聞いてみた。

彼は笑って言った。

「とても奇妙な状況だよ。もちろん、『90125』の成功は喜ばしいことだし、特にここアメリカでは聴衆が劇的に増えた。ここ数年で初めてアリーナを完売させたんだ。ステージから熱狂的なイエス・ファンを見つけたり、セットで古い曲を演奏したときに彼らが熱狂するのを見るのは素晴らしかった。

私たちが「同志」と「スターシップ・トゥルーパー」を演奏すると、「ロンリー・ハート」の観客は愕然とした表情をしていた。それを見るのは私にとってとても楽しいことだったし、多くの新しいファンが私たちの初期の曲を調べてくれることを期待しているよ」


その後、アルバム『トーク』についての話になった。

クリスには、インタビューの数週間前にアルバムのプレリリースのカセットをもらって、聴いてぶっ飛んだことを話した。彼はそれを聞いて喜んでいた。


私は、『トーク』が完全にデジタル録音された最初のアルバムのひとつであることを踏まえ、録音された音楽の歴史の一部であることをどう感じているかと彼に尋ねた。

「それについては、トレヴァーに聞いてみてほしい。他のメンバーにとっては、通常通りのレコーディングだった。でも、トレヴァーがそのテクノロジーに苦労していたのは知っているよ」


私は2023年にトレヴァー・ラビンにインタビューする機会に恵まれ、クリスが『トーク』のレコーディングについて語ったことを彼に話した。

「よく覚えているよ。プログラムがまだ完成していなかったから、レコーディング中、常に新しいコンピューター・コードを書いていたんだ。

また、コンピューターはクラッシュし続け、特に素晴らしいテイクが撮れたときは苦痛だった。特に、素晴らしいテイクが撮れたのに、コンピューターがそれを記録していなかったりすると、もう一回やり直すように言わなければならなかった。トーク・アルバムは今でも誇りに思っているし、今でも十分通用すると思う」


クリス・スクワイアはアルバム『トーク』を当然のように誇りに思っており、1994年のイエスが持っていたより商業的なサウンドを受け入れていた。

「今のような商業的なサウンドは、しばらく前からあったんだ。アルバム『90125』の大部分は、私とトレヴァー、のアラン・ホワイト、そしてトニー・ケイが始めた『シネマ』という新しいプロジェクトのためのアルバムとして書かれたんだ。

ジョンに何曲か聴かせたら、とても気に入ってくれた。そして、『90125』をイエスの新たな始まりにしようとマネージメントから提案された。

最終的に『90125』に収録されることになった『シネマ』の素材では、私たちはもっと広がりのある曲から既に離れ始めていた」


アルバム『トーク』には、『90125』に収録されている曲よりも長い曲がいくつかある。

クリス・スクワイアはこう説明している、 

「『トーク』には、『90125』に収録した曲よりも長い曲があることには同意するよ。でも、『90125』は生まれたばかりのバンドのアルバムだったことを忘れてはいけない」


「『トーク』では、自分たちがイエスのユニークだと思うものを包括し、それをより商業的な展望に取り入れることを選んだ。『トーク』に収録されている『ステイト・オブ・プレイ』という曲は、モダンなサウンドのグルーヴとヘヴィなロック・ギターが融合している。このアルバムのために、私たち全員が一皮むけたプレイをした。結果には、これ以上ないほど満足している」


クリス・スクワイアに、『トーク』の曲作りのプロセスは『90125』のセッションと似ているかと尋ねた。

「前にも言ったように、『90125』の曲は新しいバンド、シネマのために書かれたもので、トレヴァーと私とアランが書いたんだ。トニーとジョンも参加したときに意見を加えたが、その時点で曲はほとんど完成していた」


「『ビッグ・ジェネレイター』では、全部とは言わないまでも、ほとんどの曲はトレヴァーが書いて、ジョン、トニー、アラン、そして私が後から意見を加えた。

トレヴァーは『トーク』のために最初からジョンと一緒に曲を作りたがっていたから、2人とも数週間アイディアを出し合った」


「バンドとして集まって彼らのアイデアを聴いたとき、曲はかなり完成していた。今回も、トニー、アラン、そして私がいくつかの曲について提案したけれど、トレヴァーは特にジョンに最初からこのアルバムの作曲プロセスに関わってほしかったんだ」


トーク・アルバムのツアー予定はあるのかとクリスに尋ねた。

「ツアーの計画はすでに進行中だ。トレヴァーはライヴ・サウンドについて素晴らしいアイディアを持っている。それで、彼のビジョンを実現できる適切な会社を探しているところだ」


クリスとの時間が終わったので、私は彼の時間を割いてくれたことに感謝し、私が思うに本当に素晴らしいアルバムの成功を祈って、インタビューを終えた。


「話してくれてありがとう」とクリスは言った。

「そして、『トーク』について温かい言葉もありがとう。この先、ツアーのどこかで会えるといいね」


こうして、偉大なるクリス・スクワイアとのインタビューは終わった。


残念ながら、のちにどこかで会うことはなかったが、あのインタビューのことは一生忘れないだろう。

彼はすぐに私を安心させてくれたし、とても面白くて寛大な男で、私に対して完璧な紳士だった。


フィル・カーソンは1992年、ユニオン・ツアー終盤にトレヴァー・ラビンに声をかけ、彼の新しいインディペンデント・レーベル、ヴィクトリー・ミュージックのためにイエスのニュー・アルバムを書いてくれないかと頼んだ。『トーク』はその結果生まれたアルバムで、1994年3月21日にヴィクトリー・ミュージックからリリースされた。

『トーク』がリリースされた直後、レーベルは倒産し、アルバムはそれに値するプロモーションを受けることはなかった。

トレヴァー・ラビンとトニー・ケイはトーク・ツアーを最後にイエスを脱退し、イエスにとって最も商業的に成功した時期のひとつは、かなり不名誉な終わりを迎えた。


2015年6月27日、クリス・スクワイアが急性白血病で死去し、音楽界は真の革新者のひとりを失った。

1994年にクリスと行った上記のインタビューは、私のジャーナリストとしてのキャリアのハイライトのひとつであり、彼の思い出と私の兄に捧げたい。



◾️トーク・ツアーを欧州で行うことはできませんでした。来日公演を観られたのは幸運な奇貨でしたね。


出典:

https://www.metaltalk.net/exclusive-interview-chris-squire-reflects-on-yes-and-talk.php



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ジョン・アンダーソンによると、トーク・ツアーがライヴ収録されたことはなかったそうです。したがって、ボックスセットに収録されたライヴのサウンドボード(ミキシング・コンソール)音源は、「コンサートソニックス」のエアチェックから制作されたブートレッグを利用したものだと思われます。