◾️キース・エマーソンは2016年の本日3月11日に亡くなりました。享年71歳でした。



2023年12月28日

By David West(Prog)【抜粋】


パブロ・ピカソはかつてこう言った。「プロのようにルールを学び、アーティストのようにルールを破る」

キース・エマーソンの並外れたキャリアは、ピカソの信条をエレガントに表現した事例を提供してくれる

60年にわたり、エマーソンはジャンルの垣根を取り払い、ステージ上でのワイルドなパフォーマンスでキーボード・プレイヤーのイメージを再定義し、マーキーのようなイギリスの小さなクラブからアメリカの大規模なアリーナ・ツアーまで、プログレッシヴ・ロックの急成長において極めて重要な役割を果たした。

彼のカタログから15曲を、影響を受けたアーティストのコメントとともに紹介する。




1. The Diamond Hard Blue Apples Of The Moon

『The Thoughts Of Emerlist Davjack』1968

イアン・アンダーソン(ジェスロ・タル) :

私が初めてこの曲を聴いたのは、ザ・ナイスとタルが常連バンドだった1968年の初期、マーキー・クラブだった。そのオリジナル・レパートリーの恩恵で、ザ・ナイスはより複雑な曲とプログレッシヴ・ロックの始まりを告げる音楽アレンジで、通常のブルース・バンドとは一線を画していた。この曲は、クラシックのファンファーレのような要素を取り入れている点で、初期のナイス、そして後期のEL&Pの典型である。これからの数ヶ月の私の大きな励みとなった。


2. Rondo

『The Thoughts Of Emerlist Davjack』1968

デレク・シュルマン( ジェントル・ジャイアント):

ザ・ナイスのキースの演奏はずっと好きだった。この珍しいデイヴ・ブルーベック・カルテットの9/8シグネチャー・クラシックを、4/4のロック・トラックに再解釈し、なおかつその魅力を保持できたことは、まったくの驚きだった。これは、キースがELPとソロの両方で、彼の音楽キャリアを通して常に見事にやってのけたことだった。

この曲は、ある意味、フランク・ザッパ、EL&P、クリムゾン、そしてもちろんジェントル・ジャイアントといったアーティストのジャズの先駆けだった。




3. America / The Nice single, 1968

ツリー・スチュワート(The Emerald Dawn):

私は8歳から18歳までオルガンのレッスンを受けていたが、オルガンは演奏するには心底かっこ悪い楽器だと思っていた。若い頃にキース・エマーソンを見せてもらっていればね。バンドがこの曲をオルガンの狂気的なシアトリックスで政治的なステートメントに変えるのを聴くのは、まったくの驚きだった。




4. Intermezzo From The Karelia Suite

『Ars Longa Vita Brevis』1968

ジェフ・ダウンズ:

キースのクラシック音楽の扱いはまったくユニークだった。特にザ・ナイスの初期の作品は、彼の素晴らしいキャリアの基礎を築いた。あの時期のアルバムで一番好きだったのは『Ars Longa Vita Brevis』で、シベリウスの『カレリア組曲』の間奏曲の彼の解釈は本当に際立っていた。真の天才だ。




5. For Example / 『Nice』1969

マイク・ケネリー:

キースのオルガンとピアノの演奏は、全体を通してとてもポイントになっている。基本的にブルースの構成に基づいた曲なのに、曲の途中でさまざまなスタイルが登場するのには驚いた。ホーンも突然入ってくるしね。


6. Hang On To A Dream / 『Nice』1969

スティーブン・W・テイラー:

ピアノはすぐに私の注意を引いた。このようなトラックが、スタイルとムードの変化を経て、素晴らしい謎めいた結末に至る本当の旅になったのは、私にとって初めてのことのように感じた。奇妙なアレンジ、素晴らしい演奏、そして非常に珍しく創造的なサウンド処理によって、まったくユニークな解釈となっている。




7. The Three Fates: Clotho/Lachesis/Atropos

『Emerson, Lake & Palmer』1970

ジョー・クエイル:

この曲を本当に理解できるようになったのは、年月を重ねたからであり、私自身の創造性の幅が広がるにつれて、この特別な作品に対する畏敬の念も深まっている。作曲の創造的な荒々しさ、ベースと平行和音の積み重ねによる力強いモチーフの繰り返し、テクスチャー/オルガンの意外な変化とそこでの休息、そして、その前の嵐に重みを与えるカデンツ・ポイントなど。半音階的和声と複雑な技巧のヴィルトゥオジティの枠の中で、この曲はこの領域の模範として独り立ちしている。


8. Knife-Edge

『Emerson, Lake & Palmer』1970

キット・ワトキンス(ハッピー・ザ・マン):

「Knife-Edge」には、特にダークでエッジの効いたクオリティーがあり、私はそれに魅了された。特にエマーソンのパートでのヴォイシングは最高だった。エマーソンに影響を受けたのは、特にロックとクラシックを融合させた音楽が好きだったからだ。彼のテクニックはあまりにも見事で、音楽はとても喚起的だったので、このミックスはたまらなく魅力的だった。


9. The Barbarian

『Emerson, Lake & Palmer』1970

ロイネ・ストルト(ザ・フラワー・キングス): 

1970年にEL&Pのデビュー・アルバムを聴いたことを覚えている。巧みでパワフルなキーボード、あのアルバムでのグレッグ・レイクの素晴らしいファズ・ベース・サウンドと歌声、そしてパーマーのドラムの熱狂。ジャズとクラシックとブラック・サバスの中間のような、そのすべてが好きだった。彼らのアヴァンギャルドとクラシックとジャズの融合はとても新鮮だった。

キースのオルガン・サウンドは、エディ・ジョブソンをはじめ、後に登場する多くのミュージシャンのスタンダードとなった。キースは、驚異的なピアニストであり、先駆的なムーグ奏者でもあった。そして偉大なショーマンでもあった。




10. Third Movement, Pathetique / 『Elegy』1971

リック・ピルキントン( ザ・ブラックハート・オーケストラ):

13歳のギタリストとして『エレジー』の中古盤を買ったとき、このアルバムが私にどんな影響を与えるのか見当もつかなかった。『エレジー』は音楽的エネルギーとアイデアに満ちている。一音一音に25歳のエマーソンの溢れんばかりの音楽的妙技が炸裂しているが、常に順応と無秩序の間の綱渡りをしている。




11. Bitches Crystal / 『Tarkus』1971

ニック・ベッグス:

この曲を初めて聴いたのは13歳の頃だった。タルカスのアルバム全体が素晴らしいと思ったし、木曜日の夕方、仲間がレコードを持ってくるレコードクラブでヘビーローテーションされていた。キースの名人芸にはいつも驚かされる。彼の妙技に魅了された多くの人たちと同じように、意識的にも無意識的にも、彼は数え切れないほどのレベルで私に影響を与えたに違いない。




12. Promenade / The Gnome

『Pictures At An Exhibition』1971

セオ・トラヴィス:

作曲とメロディーはとても力強く、印象に残るものだと思う。キース・エマーソンは荘厳で、オルガンをとても上手に弾いている。それに、初期の音楽のような、それからSFのような、未来の音楽のような面白いシンセサイザーの音も使っている。彼は本当に時代を先取りしていて、技術だけでなく、演奏に権威があった。

昔のキース・エマーソンの演奏はスリリングで、オルガンを逆さまにして弾いたり、ナイフで特定の鍵盤を押さえたりしていた。彼はヘンドリックスをキーボードに置き換えたんだ。とてもエキサイティングだった


13. Nut Rocker

『Pictures At An Exhibition』1971

リック・ウェイクマン:

私はこの曲をレコーディングしたいと強く思ったが、キースに先を越された。キースは私よりもずっとジャズ志向で、彼が演奏するさまざまなジャンルの音楽にジャズを融合させることにかけては最高だったと思う。それゆえ、「Hoedown」と 「Nut Rocker」はどちらも素晴らしいステージ曲であり、キースの華やかさにとても合っていた。




14. Trilogy / 『Trilogy』1972

マイク・ストビー:

キースは先駆的で、すべてのギター・ソリストに一泡吹かせていた。「Trilogy」はキーボーディストの夢だ。キースの驚異的に美しいヴィルトゥオージティが発揮され、彼のプレイは他の追随を許さない。聴いていてたまらないし、この曲を演奏するのが大好きなんだ。冒頭の美しいクラシカルなピアノの演奏に引き込まれ、一気に盛り上がる。複雑なリズムの上でムーグ・シンセサイザーのセクションに突入し、ジャズの影響を受けた歪んだハモンド・オルガンが続く。この曲には私が望むすべてが詰まっている。


15. The Endless Enigma / 『Trilogy』1972

ジョナサン・エドワーズ:

 「エンドレス・エニグマ」には、EL&Pの音楽を魅力的なものにしている要素がすべて詰まっている。キースの叙情的でヴィルトゥオーゾ的なピアノ演奏、特にバッハの影響を受けたフーガが2つのセクションに分かれている。ここでも印象的なのは、一般的な意見に反して、決して派手さやそのための複雑さがないことだ。彼のショーマンシップはともかく、キースは何よりもまず作曲家でありミュージシャンであり、頭と心のための音楽を作っていた。


出典:

https://www.loudersound.com/features/keith-emerson-homage