■ リック・ウェイクマン、アルバムレヴュー



2024年2月19日

By Ian Fortnam(Prog)


この4枚組ボックス・セットのスリーヴ・ノーツによると、リック・ウェイクマンは当初、ここに収められたコンサートがうまくいくとは思っていなかったと告白している。

ロンドンの象徴的なパラディアムで行われた2つの連続公演で、1回目は『ヘンリー8世の6人の妻』と『アーサー王と円卓の騎士たち』を組み合わせたもの、2回目は『地底探検』(これまでの彼のキャリアの中でチャート上位にランクインした最高傑作)を含む、洗練されたイエスの「ヒット曲」のセレクションだった。


これは、核となる楽曲に多大な労力を費やす大仕事だった。オーケストラが参加していないため、『アーサー王』と『地底探検』は彼の強力なライヴ・バンド、イングリッシュ・ロック・アンサンブル用にアレンジし直さなければならなかった。

ましてや、200分以上にも及ぶ複雑極まりないメガ・プログレのリハーサルという気の遠くなるような試練もあった。まだ元気だった25歳の時に、この曲のほんの一部を演奏しただけで死にかけたことを思えば(1974年のクリスタル・パレスでのジャーニー公演の後、3度の軽い心臓発作に襲われた)、73歳の彼にとっては桁外れに大変なことだったに違いない。


マントとズボンに身を包み、センターステージに立つマエストロの最も印象的な特徴は、キーボードを打ち鳴らすのがいかに巧みかということだ。

ウェイクマンが少し弾けることはニュースではないが、『6人の妻』の「アラゴンのキャサリン」の冒頭の小節から『地底探検』の「エトナ山」の終盤のクレッシェンドに至るまで、明らかに本能的に流れるような流暢さ、正確さ、フレージングには目を見張るものがある。


この『6人の妻たち』のバージョンは13分も拡大されており、その豊富なスタイル(シンコペーションのエマーソン風ジャズ・ヌードルからエルトン風キッチュまで)のパレットは、ウェイクマンの名人芸を顎が外れるほど見せつける。


『アーサー王』は、その中心的なテーマや本質的なドラマを失うことなく、オーケストラのワグナーソンから、軽快でアイスショーのない、クインテットとコーアによるコンセプチュアルなロック・ショーへと完璧にアレンジされている。


クラシック・イエスと銘打たれたディスク3は、通常ジョン・アンダーソンが担当するリード・ヴォーカルが、ヘイリー・サンダーソン(TV番組『ストリクトリー・カム・ダンシング』のヴォーカル)になっているのが最大の特徴だ。

純粋主義者にとっては少々ショッキングだが、「ラウンドアバウト」や「不思議なお話を」でのサンダーソンのピュアな歌唱は、今や幅広いイエス組曲に組み込まれている。

※他に「南の空」、「同志」、「スターシップ・トゥルーパー」、「ザ・ミーティング(ABWH)」なども演奏している。

「不思議なお話を」


そして『地底探検』。率直に言って、リックの王冠の宝石だ。フルーティーなピーター・イーガンのナレーションが魅力的なこの50分のスリルは、2012年の再録音の大部分と、恥ずかしげもなくキャンプ的で合唱的なオリジナル・セッティングが盛り込まれている。美しく捉えられ、完璧に実現された、必要不可欠なパッケージだ。


出典:

https://www.loudersound.com/reviews/rick-wakeman-live-london-palladium-2023


■ リックはお別れソロツアーを発表したので、本作がフルバンドでの最後のライヴになりました。


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