◾️イエスはもはやアンダーソン、スクワイア、ウェイクマンのバンドでない
By Laurence Todd(RAMzine)
イエスが背負わなければならない十字架のひとつは、70年代プログレの覇者として君臨していたころのバンドと現在のバンドを比較され続けることだ。
しかし、スティーヴ・ハウの存在によってのみ繋がり、ジャンルを定義するのに役立った壮大なアルバムをもはやリリースしていない、全く異なる2つのバンドであることは明らかなのに、なぜ悩むのか。
2021年の『ザ・クエスト』から続く、スティーヴ・ハウのプロデュースによるイエスの最新アルバム『ミラー・トゥ・ザ・スカイ』は、クリス・スクワイアが参加した最後のアルバムということもあって多くのイエスファンが絶望した2014年の『ヘヴン&アース』から大きく進化したと認識されている作品だ。
このアルバムは2枚組で、アラン・ホワイトが亡くなった後、初めてジェイ・シェレンを専任のドラムマンとして起用した。
スティーヴ・ハウは『ミラー・トゥ・ザ・スカイ』も同様に、バンドにとって非常に重要なアルバムであると主張している。
「70年代のイエスがアルバムごとに成長したように、私たちもまた成長していくことを実証している」
パンデミックによってツアーができなくなった時間を利用して、イエスは『ザ・クエスト』終了後にスタジオに残された素材に取り組み続けていた。
ベースマンのビリー・シャーウッドは、「アルバムとアルバムの間に明確な区切りはなく、ただ素材を作り続けていた」と語っている。
確かに、このアルバムはやや商業的なアルバムである。
9曲の新曲は、瑞々しく重なり合うバラエティに富んだコレクションで、絶妙なヴォーカル・ハーモニー、一流の音楽性、束縛されないという決意など、常にイエスの本質の一部であった要素が多く含まれている。
「All Connected」はシングルとしてリリースされ、素晴らしい演奏、豊かなヴォーカルのハーモニー、スティーヴ・ハウの美しいギターワークが全編にわたって際立つ、9分間の楽しい作品だ。
同じくシングル曲の「Cut From The Stars」は、ジョン・デイヴィソンがジョシュア・ツリー国立公園のダークスカイ保護区を訪れた際に生まれたもので、久々に良いイエスの曲のひとつである。
しかし、この2曲はどちらも良い曲だが、ラジオで取り上げられることはないだろう。
「Living Out Their Dreams」や「One Second Is Enough」のような、より短く、より商業的な曲の方が良い選択だっただろう。
あるいは「Circles Of Time」はほとんどラブソングで、「早くあなたのドアを叩いて、あなたの愛すべきそばにいたい」と歌う。
「愛こそ魔法の薬だ」と主張する「Magic Potion」(いや、サイコクラシックじゃない)もそうだ。
特にタイトル曲の「Mirror To The Sky」は14分弱で、バンドはかなり冒険的な演奏と控えめなオーケストラのバックで、以前のアルバムの複雑な曲との再会を試みている。
「Luminosity」は9分もあり、他の長い作品と同様に、スティーヴ・ハウの美しいギターワークなど、表面下で起こっていることがたくさんある。
現在のプログレ界にイエスの居場所はあるのか、というファンの議論はともかく、全体としては、期待に違わぬ良いアルバムであり、『ザ・クエスト』よりも強力なアルバムであることは間違いないだろう。
イエスはもはやアンダーソン、スクワイア、ウェイクマンのバンドではなく、『海洋地形学の物語』よりもむしろ、現代の彼らの良さで判断されるべきだろう。
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