■ Unfold The Future(後編)



Artist : The Flower Kings 
Title : Unfold Future
Year : 2002(2022リイッシュー)

今年最後のリリースタイトルの新ミックスの内容です。


今回のリマスター盤のリミックス曲はクレジットによると以下の6曲になります。

① The Truth Will Set You Free

② Black And White 

③ The Navigator

④ Vox Humana

⑤ Solitary Shell

⑥ Devil’s Playground 


①、②、⑥は2017年に続いての再度のリミックスで、残りの3曲はクレジットどおりなら初のリミックスということになります。



数回比較試聴した範囲ですが、気がついたリミックスによる違いや特徴をメモしておきます。


 The Truth Will Set You Free

アルバムの冒頭を飾る30分を超える大曲をリミックス。

冒頭のベースの響きから違います。

シンセの音も差し替えられています。

長い曲なので違いをいちいち指摘できませんが、楽器やヴォーカルがより前面に出ているミックスだと思いました。


 Black And White

2017年リマスターでは尺が短くなっていたのが、オリジナルバージョンの尺に戻っています。

中間部のギターもキーボードもサウンドが変わっているようです。

ベースの低音もよく聞こえます。

特に終盤のギターはかなり違って聞こえますし、エンディングのあたりにピアノが聞こえます。

リミックスするたびに好みが変わるんでしょうかね。


 The Navigator

ストルト・ヴォーカルの曲。

楽器の差し替えや大きなバランスの違いはないのですが、全体に深いリヴァーブがかかってヴォーカルを筆頭にサウンド全般のプレゼンスが増したミックスに変わっています。


 Vox Humana

短いけど大好きなハッセ・ヴォーカルの佳曲。(ジェフ・ダウンズのアルバムと同じタイトルです)

冒頭のキーボードサウンドから明らかに差し替えられているのがわかります。

ギターのミックスバランスも変わっています。

エンディングは2017年リマスターはフェードアウトだったのが、オリジナルバージョンのようにフェードアウトがなくなっています。

そして驚いたことにヴォーカルも差し替えられています。

このヴォーカルはオリジナルと同じバージョンです。2:25あたりを聴くとよくわかります。


つまり2017年リマスターでこの曲はリミックスとは表示されていなかったのに、実際はオリジナルとは異なるミックスだったことがわかりました。

ちなみにコンピ盤『The Road Back Home』(2007)に収録されていたこの曲のヴォーカルは、2017年リマスターと同じバージョンです。そしてエンディングもフェードアウトでした。

リミックスと表示していない曲でもストルトがミックスをいじっていることがあることがはっきりとわかりました。

なかなかファン泣かせです。


 Solitary Schell

ピアノとストリングスをバックにロイネが歌い上げる小曲です。

ヴォーカルを差し替えたのかと一瞬思うほど存在感が増しています。

中間部に入っていたキーボードとギターがなくなって、よりシンプルなミックスに変わっています。

そういえば、ドリーム・シアターにも同名の曲がありましたね。


 Devil’s Playground

この曲も2017年リミックスで6分ほど尺が短くされたのが、オリジナルの尺に戻っています。いきなり冒頭部分のカットされていたSEも復活。

とにかく2017年リミックスとは尺が全然違うので印象は異なります。

長い曲なので中間部のインストは短いほうが聴きやすいような気がします。

同じような尺のオリジナルの方が近いですが、ハモンドのバランスやギターの響きが違うので、全く同じではありません。

しかし愛聴曲ではないので違いはあまり気になりませんでした。


 その他

他に気がついたのは「Monkey Business」。

リマスターで確かに音は変わってはいますが、リミックスと表示されていないこの曲もミックスがいじられています。

冒頭からギターサウンドが違うんですよね。

メロトロンも女声(2017)がストリングスに変わっています。

リミックスと表示していない曲でもいろいろいじっているのでしょうね。


ミックスの細かい違いについては、わざわざ聴き比べないとサウンドのプレゼンス以外はなかなか気がつかないと思います。

最新のミックスが最良のミックス、と考えればよいのでしょうかね。



ほかのアーティストのリマスターは基本レコード会社任せですし、アーティストの意向を無視してリミックスされることはまずありません。

しかしストルトはこのバンドのリーダー&オーナーであり、自身がスタジオを所有する優秀なエンジニアでもあるので、自分の作品の音を意のままに弄ることができるところが違います。

彼の凝り性とこだわりには本当に脱帽です。



【今回のリイッシュー全般まとめ】

今回の一連のリマスター盤は、リミックスの有無に関わらず、どの曲もラウドで存在感が増したサウンドになっていることが一聴してわかります。

ストルトの作品に対する思い入れが伝わりますし、熱心なファンならお気に入りのアルバムを再購入しても損はないでしょう。


音質に関しては最新リマスターで歪やノイズの少ない良い音に変わっているので明らかに向上していると思いました。

今回はヘッドフォンで比較しました。

拙宅では無理ですが、環境がある方はスピーカーで大音量で鳴らせばより明らかでしょう。




関連記事 :