紅王団などで活躍した歌唄いの上戸屋が、店じまいした耶蘇家の三味線弾き波羽翁と立ち上げたのが明治屋一座だ。
波羽翁は耶蘇家の若手だった慈英風を引き連れていた。
明治屋一座の立ち上げに影で糸を引いていたのはもちろん敏腕悪徳で有名なあの日芸屋の無頼庵である。
彼らは解散した絵馬湖濱屋の太鼓叩きである濱乃輔を引き入れた。
明治屋一座はあっという間に人気になった。
特に上戸屋と慈英風の作った出し物が好評を博した。
ところが上戸屋がタチの悪い大酒飲みだったので困った三人は彼を明治屋から追い出すことにして、後釜に濱乃輔の同僚で絵馬湖濱屋の歌唄いだった暮苦屋を据えることにした。
しかし暮苦屋があまりにも尊大だったため、無頼庵の入れ知恵で結局放逐した上戸屋をやむなく引き戻すことにした。
上戸屋は自分を追い出した波羽翁を恨んでおり、一緒に一座で仕事はできないと言ったため、今度は波羽翁が明治屋を離れることになった。
だがそんなゴタゴタを繰り返しているうちに明治屋一座の人気はすっかりなくなり、結局解散することとなってしまった。
ときが流れ、上戸屋は濱乃輔や慈英風を誘って明治屋一座を再興し御露西亜国巡業なども行ったが、結局辞めてしまい、その後濱乃輔も絵馬湖濱屋再興のため抜けて、結局残ったのは慈英風一人になってしまった。
波羽翁が戻ることになった復活耶蘇家八人衆にも戻れない慈英風は、明治屋の暖簾を守ることを決意し、以前より雨天集会などで懇意にしていた若手の歌唄い兵員ノ丞を誘って明治屋一座の興行を続けることとした。
以前ほど人気はなかったが慈英風と兵員ノ丞は次々と座員を入れ替えながらも明治屋一座の興行を細々と続けていた。
それから14年ほどたったある日、慈英風は兵員ノ丞を呼んでこう言った。
慈英風「兵の字や、今日はお前に話がある」
兵員ノ丞「なんですか慈英の旦那」
慈英風「実はな、元の4人で元祖明治屋を再興する計画があるんだ」
兵員ノ丞「なんですって!あっしはどうなるんで?」
慈英風「申し訳ないがお前様はもう明治屋には居られないのだよ」
兵員ノ丞「そんな殺生な。あっしはもう14年も旦那と明治屋に奉公しています。元祖明治屋と言ってもたった2年しか興行していなかったじゃないですか」
慈英風「そうだが仕方がない。お前様が持っている分の暖簾代は買うから売っておくれ。それから暖簾分けもしてやろう。お前様はこれからは分家明治屋を名乗りなさい」
兵員の丞「旦那ぁ〜😭」
慈英風「兵の字や、泣くでない」
「ときさえ経てばわかる」
というオチを言ったかどうかは知りませんが、一般社会や企業ではあり得ない過酷なことが起きるのがショービズの世界だということがよくわかりました。
イエスの場合はある時期から「バンドを脱退した者はイエスの名称に関する権利を一切失う」という合意ができたそうです。
多分ABWH裁判の反省でそのような契約ができたのだと思われます。
ピンクフロイドの場合も、ロジャー・ウォーターズが一切バンド名の権利から締め出されているのは同じような状況のようですね。
しかしARWの場合は、途中から「イエス」(Yes featuring Anderson Rabin Wakeman)の名称を名乗ることが認められました。
ジョンの「辞めていない」という主張を否定できなかったせいかもしれません。
ただし、ロジャー・ディーンが作ったイエスロゴは使えませんでした。
イエスロゴの権利は途中変遷しましたが、現在ではロジャー・ディーン、スティーヴ・ハウ、イエスの三者保有に変わっています。
ハウの個人名が加わったことで、イエスは名実ともにスティーヴ・ハウのバンドになったようです。
The Questより
ちょっと夢のない話でした。