Artist : Yes
Title : 90125
Year : 2009(1983年作品)

「危機」と同じオーディオ・フィデリティ社が2009年にリリースしたCDです。
24KTゴールドディスクでシリアルナンバー入りの限定盤です。
(我ながら限定盤ビジネスに弱いですな)

こちらはSACDではなくHDCD形式でエンコードされています。
また本盤の方はオリジナル・アナログ・マスターテープからリマスターされており、CDにはテープのプレイバック用に専用機材を作成し、独自の最新A/Dコンバーターを使用して工場では完成したデジタルマスターからガラス面にリアルタイムでエッチングした云々と宣伝文句がたくさん並んでいます。PRに弱いのでついつい期待が高まります。

比較対象はライノ盤(2004)です。
このアルバムは1992年に最初にCD化されてから、ライノ盤が初のリマスター盤でした。
比較する曲はダイナミックレンジが広いと思われる「ハーツ」にしました。

まずはライノ盤。
良い音でプレゼンスも十分です。
70年代のアルバムと比較するとマスターテープが新しいせいもあるかもしれません。
何の不満もありません。

次にオーディオ・フィデリティ盤。
音量がやや小さく聞こえますが、これは機材がHDCDデコードに対応していないせいかもしれません。

音量を揃えて聴き始めると、すぐにわかるほど違います。
まず楽器やヴォーカルがクリアで繊細な響きがします。そしてひとつひとつの音がクッキリ聞こえると感じます。かと言って迫力がなくなるわけではありません。
解像度が高くてノイズも少ないので違う音なのははっきりわかりました。
これがいわゆる「よい音」なのでしょう。
あまり普及しているとは思えないHDCDデコーダー内蔵機材を使えば更に印象が変わるかもしれません。

再度ライノ盤に戻って聴いてみると、音にエコー(リバーヴ)がより強くかかっていると感じる一方で、音が前に出るプレゼンスが強いと感じました。


結局自分の感想としては、両盤にかなり違いはあるものの、スタンダードのCDプレイヤーで聴く分にはお好みでよいのではないかと思いました。
どちらも十分に良い音です。

さて「ハーツ」の中間部に聞こえるハモンドの音ですが、これがもしトニーの演奏でなければちょっと残念ですね。(確証はありません)

ところでライノ盤には色々ボーナストラックがありますが、特に「イット・キャン・ハップン」のシネマバージョン(ジョン・アンダーソンが参加する前のオリジナルバージョン)と未発表曲「イッツ・オーバー」は貴重だと思います。

シネマバージョンの「イット・キャン・ハップン」はクリス・スクワイアのヴォーカルがたっぷり聴けるので好きなバージョンです。
音に加えてボーナストラックもライノ盤の魅力ですから一概に優劣つけるのは難しいところです。