Artist : Jon Anderson
Title : In The City Of Angels
Year : 1988
一般的にジョン・アンダーソンはイエスのフロントマンとして認知されていますから、彼のソロアルバムを聴いているのはほぼイエスファンだけじゃないかと思うわけです。
ソロアーティストとしての彼のファンに出会ったことがありません。ピーター・ゲイブリエルやフィル・コリンズとは異なるところです。
つまり彼のソロアルバムを聴く時に、ファンはついイエス的なものを求めてしまうわけです。(それが大きな間違いだと随分後に気がつきましたが)
そういう意味ではこのアルバムが出たときはイエスファンの多くは(自分を含めて)ズッコケたのではないでしょうか。
イエスとは無縁の「シティ・ポップ」のアルバムだったのですから。
まあ今聴くとプログレ的ではありませんが、作品の質は悪くはないし良い曲も入っていることがわかりますが、当時はイエス原理教に入信していたので一聴して無理でした。
※イエス原理教信者は別名「トゥルーパー」ともいい、世界中に生息しています。そして時には90125 / BGさえ否定することがありますが、何故かABWHには寛容。イエス新教信者(別名「ジェネレイター」)より圧倒的に多数が現在も生存しています(笑)
88年の秋にイエスを脱退した時にアンダーソンは「商業的になりすぎた音楽に嫌気がさした云々」のような発言をしきりに繰り返していましたが、ファンは迂闊にもすっかり信じてしまいました。
何故なら89年に出たABWHがクラシック・イエスのラインナップとサウンドだったからです。
1988年のBG(ビッグジェネレイター)ツアーを4月に大阪で終えたイエスは、5月14日にニューヨークのマジソンスクエアガーデンで行われたアトランティック・レコード40周年記念コンサートに出演しました。
でもこのアルバムをリリースしたのは3日後の5月17日なんです。(日本盤5月21日)
むむむ、商業主義を嫌ったはずなのに、何か変じゃないですか?
このアルバムには数多くのプロデューサーやミュージシャンが参加しています。
TOTOのスティーヴ・ルカサーやスティーヴ・ポーカロの兄弟達なども参加しています。
また共作した曲が多いのも特徴で、大金をかけて大手CBSがリリースしました。
ではそもそもいつ作ったのでしょうか?
自分が持っている日本盤CDには詳しいクレジットはなく、ライナーノーツを見てもイエスの歴史しか書いてないやっつけ仕事のロクでもないものでアルバムの情報や解説は一切載っていませんでした。
ヒントになると思われるのはTOTOのアルバム「The Seventh One」です。アンダーソンが「Stop Loving You」にバッキングヴォーカルでゲスト参加したこのアルバムは88年3月1日にリリースされています。
二つの作品は同時期に録音されていますからアンダーソンがソロ作品を制作していたのはそれより前だということになります。
87年10月からイエスはずっとBGツアーをやっていましたから、おそらくその前じゃないでしょうか。でなければ年末年始の短い休みの期間だということになってしまいます。
TOTOのアルバムも87年から88年にかけて制作されています。
ただしWIKIPEDIAには本作は1988年録音と書かれています。
つまり批判したBGと同時期に自分も商業的なアルバムを作っていたことになります。
アンダーソンがご機嫌な様子で楽屋で一人ダンスを練習している赤面必至の秘蔵裏ビデオを見せていただいたことがあります。
おそらくアンダーソンは80年代半ばからフィル・コリンズのようなポップスターになりたかったのではないでしょうか。
トレヴァー・ラビンの発言にもあるように商業的な音楽が嫌などころか、コマーシャル志向が一番強かったのがアンダーソンだったのではないかと自分も考えています。
もっともアンダーソンはそのときどきに思いついた言葉を気ままに口にする厄介なオヤジなので、彼はウソをついたつもりはこれっぽっちもないと思います(笑)
ポップスターの夢は絶たれましたが、ABWHで成功を収めたアンダーソンは90年代に入るとソロの世界ではネイティブアメリカンやスピリチュアルなものにどんどん惹かれて迷走していきます。
このあたりについては次の機会に触れたいと思います。
アルバム「In The City Of Angels」は
アルゼンチンでは「Ciudad De Angeles」
ベネズエラでは「En La Ciudad De Los Angeles」
というスペイン語のタイトルでリリースされました。
スペイン語で歌っているのかどうかは未聴なので確認できていません。気になった理由は、後年彼は「ハーツ」をスペイン語の歌詞でレコーディングしたことがありますし(未発売)、アルバム「DESEO」にはスペイン語で歌った曲が収録されているからです。
可能性は低いとは思いますけどね。