イエス / エイジアのスティーヴ・ハウがGTR解散後、ABWH参加までの間に始めた数多いプロジェクトの一つがポール・スーティンとのコラボレーションでした。


1988年5月11日にスティーヴ・ハウはポール・スーティン(英国人)と出会いました。

ハウは乞われて彼の新作「Seraphim」に参加。カムデンにあるSound Suite Studiosでギターをオーバーダブしています。

ハウの自叙伝によればこのスタジオはエイジア末期にも使用され、「マスカレード」(イエスの「結晶」に収録)が録音されたスタジオでもあるそうです。



Artist : Steve Howe・Paul Sutin

Title : Seraphim 

Year : 1989


ハウとの連名でリリースされたこのアルバムはアンビエントとかニューエイジ的なサウンドでロックではありません。

スーティンがプロデュースしています。

二人の共作というよりもあくまでもスーティンの作品にハウがゲストでギターを入れた内容になっています。

瞑想や眠りにつく時のBGMとしてはピッタリな音楽ですが、イエスファンはあえて聴かなくても良い作品だと思います。




Artist : Steve Howe ・Paul Sutin

Title : Voyagers

Year : 1995


次の作品では同じ連名でも作曲面や制作面でハウの存在感が増して真のコラボアルバムになりました。

サウンド面でもアンビエント/ニューエイジ・サウンドがよりロック的に変化しています。

ドラムス(ハウの息子ディラン)が入ったことも大きいと思います。


この二つの作品は1995年にカップリングされて「天使たちの詩 / 青き世界の旅人」という邦題で日本盤もリリースされています。




この当時馴染みがなかったスーティンのことをミュージシャン(キーボーディスト)&コンポーザーだと思っていたのですが、キャリアを見るとそんなに単純ではなさそうです。


彼のウェブサイトを見ると、現在は音楽、映像、イヴェント、教育面でのプロデューサー、ディレクター、クリエイターとしての仕事がメインのようです。フィル・コリンズと共に立ち上げた子供達の夢を叶えるための音楽基金の役員もしています。

ミュージシャンというよりもビジネスマンですね。



ハウとスーティンの交流は続いているようで、1991年のニューエイジ・コンピレーションアルバム「ポーラー・シフト」ではハウ、スーティンを含む3人の共作曲「Polar Flight」を提供。

このアルバムにはヴァンゲリスや喜多郎も楽曲を提供しています。


2002年のハウのアルバム「SKYLINE」ではスーティンがキーボードとパーカッションで参加。


2011年のハウのクラシック作品「Time」ではスーティンとの共作曲が収められているほか、ヴィヴァルディの作品を共に編曲しています。


スーティンとの作品の共通点は、いずれもロック的色彩が薄いところだと思います。

スティーヴ・ハウの幅広い音楽性を象徴していると言えるかもしれません。