イエス道(Road To Yes )

楽しいけど滑稽なマニアの生態
嬉し恥ずかしイエス道
アルバム「結晶」の秘密の巻



アルバム「結晶(UNION)」はプロデューサーのジョナサン・イライアスとジョン・アンダーソンによってスティーブ・ハウやリック・ウェイクマンの演奏が大幅に差し替えられたことが今では知られていますが、アルバム発表当時はよくわかっていませんでした。

アルバム「結晶」のクレジットを見ると

たしかに大勢のミュージシャンの名前が載っていますが、例えばJimmy HaunのギターはDangerousに追加されたように書かれています。

後にでたIN A WORD YES 1969-ボックス・セットのクレジットを見ても

具体的にはよくわかりません。

しかし2001年の2月に英国のHenry Potts君(彼とはこの直後に会って面識があります)がJimmy Haunに行なったインタビューを発表してスティーブ・ハウのどの演奏を差し替えたかが明らかになりました。
以下紹介します。

1. I Would Have Waited Forever 
オープニングのリフはJimmy 
Steveのプレイは0分24秒から49秒にかけて単音で繰り返される部分とエンディングのソロだけで、他は全てJimmy 

2.Shock To The System
Steve Howe の演奏全てをJimmy に差替え
なおトニー・レビンのベースの一部もJimmy が差し替えた

5. Without Hope You Cannot Start The Day
Steveの演奏全てを差し替え

8. Silent Talking 
Steve の弾く主旋律の一部を差し替え
Steve の演奏がそのままになっているのは音色が僅かに違っていて、たとえば0分46秒から1分03秒がSteve の音

11.Dangerous
Steveの演奏全てを差し替え

12.Holding On
Steve の演奏は0分31秒から47秒にかけての最初のメインリフだけ。
他は全てJimmy の演奏

15. Give And Take
主旋律は全てSteve Howe
Jimmy はそこにハーモニクスを被せた

出展:

(インタビューの著作権はHenry Potts君にあります。日本語にして公開することは本人に了解を貰っています)

これを見ると、スティーブ・ハウの演奏のほとんどが無くなってしまったようで当時はかなり衝撃的でした。
2. 5. 11.に至ってはSteveの演奏は全て削除され、Steve 風に弾かれたJimmy の演奏しか残っていなかったのですから。

リックの演奏に関してはイライアスの証言以外は詳細は分かりませんが、参加したキーボードとシンセのプレイヤーの数からして、推して知るべしです。

他にジョナサン・イライアスがアルバム制作にまつわる話をしているインタビューもありますが、あまりにもメンバーをボロカスに言っているので紹介は控えます。
興味のある方は探してみてください。

Steve Howe は2017年発表のSteve Howe Anthology 2 DISC2においてアルバムユニオンで削除されたDangerousとWithout Hope You Cannot Start The Dayのバッキング・トラックを収録しました。
Jimmy Haun のインタビューと丁度符号しますが、よほど腹に据え兼ねていたのかもしれませんね。


なおSteve のソロ・アルバム Turbulence では「結晶」に流用されたリフのアイデアを聴くことができます。


アルバム「結晶」発売後にバンド周辺から流出したとしか思えない音源が収録されている「The Perfect UNION」というタイトルのブートCDが出ました。
海外のテープ・トレイダーにも出回っていない音源でした。
イエスのマネージメントが察知して大騒ぎになったという話です。
本来の楽曲の姿はこのブートでしか聴けない
のかもしれません。
※海賊盤を認知したり、購入を推奨する意図はありませんので念のため。

Jimmy Haun はその後ビリー・シャーウッドらと共にCIRCAなどで活躍していましたが数年前に交通事故で大怪我をしてミュージシャンを引退したそうです。
快復をお祈りします。
追記: のちにArc Of Lifeで復帰しました。