ユニークなラジオ番組があります。NHKのAMで月に一回流れるのは

「ひきこもり」の人達向け。当事者から切実な声が 数多く届くそうです。

 

先日の放送では、こんな胸の内が紹介されていました。「職場でうまくやれず

悩んで仕事を辞めてしまった。今は仕事をしていないことに悩んでいる。

働いても、働かなくても悩みは消えない…」

 

もしかしたら当事者はどうすべきか、わかっているのかもしれません。ですが、

それができないから悩んでいる。そんな複雑な心境を、周りの人は知る由もありません。

悩みを打ち明けられても、わかったわかったと聞き流したり、正しさを振りかざしたり…

実際にはちゃんと聞いていないことが多いですね。

 

 

新聞で人生相談を担当する作家の最相葉月さんは「相談の大半は 互いに聞く耳をもたないことが原因で、引き起こされるトラブルだと書いていました。

「話を聞いてくれない、話してもわかってくれない、言葉にしてくれなければわからない、言葉にしたがためにますます状況が悪くなった」などなど。

 

家庭内トラブルの相談まで AI(人工知能)が引き受け、ネット上では人生相談の

質問箱サービスが人気という時代。人と違って返答が早いし、後腐れもないですから

気持ちは分かりますが、何とも複雑な思いがします。

 

悩みのない人間はいないのに、打ち明けられる人間はそばにいない…おかしな話ですね。

本当は誰もが「聞き手」を求めているのに。

 

 

現在は、自分勝手にしゃべる、またはネットに思うままに発信する人ばかりが増え

「聞く力」はひどく衰えているような気がします。自分とは主義主張が合わない相手に

対しては罵倒し、異論には耳を傾けようとしない…社会の分断を深める、危険な風潮でもありますね。

 

谷川俊太郎さんの詩「みみをすます」の一節が胸をよぎります。 

ひとつのおとに/ひとつのこえに/みみをすますことが
もうひとつのおとに/もうひとつのこえに/みみをふさぐことに/ならないように

 

皆さんは、身近な人の声が聞こえていますか?目の前にいる人の心の声に気づいていますか?

 

                            

自分が辛い時「どれだけ苦しんでいるか」「どれだけ悩んでいるか」をわかってくれる人がいたら、どれだけ救われることでしょうか。

余計な口出し、余計なことをしてくれるより、自分が悩みを抱えている状況を察してくれる人がいたら、どれだけ有難いことか。

 

私達は仏さまに手を合わせます。

それは仏さまが全部見てくださっているから、全部私たちのことをわかってくださっているからだろうと思います。

もっと言えば、そう思うことが『大きな救いの力』となるのです

 

 

生きている限り、悩みや苦しみは常にあります。何歳になっても、それなりの悩みが出てきます。また生身の人間ですから、具合も悪くなるし、体も老いて故障してきます。

それに対して「何かを買えば安心できる」とか「何かの祈祷を受ければ大丈夫」とか、

人の弱みにつけ込む人がいますが、そんな虫のいい話はありません。

 

生きていくことは大変なことですが、AIの時代になってもどんな時代になっても

人間を救うのは やっぱり人間じゃないかなと思うんです。

少しでも、目の前にいる人の僅かな苦しみや悩みを察してあげることが大事ですね。

 

別に「何とかしてあげよう」としなくていいんです。自分の考えが交じるとかえって

その人を行き詰まらせてしまいますから。言葉に出さずとも、仏さまのように

わかっていてくれるだけで、その人にとって 大きな力となると思います。