中国雲南省の景頗族に一つ孔の竹笛が伝わっています。神様が、喜怒哀楽を表現するために景頗族に与えたという言い伝えのある笛です。
その一つの孔は、つまり篠笛で言うところの「唄口」、中国笛子でいうところの「吹孔」です。一つ孔ですが、約2オクターブの音域があり、音色は豊かです。聴いてみたくなったでしょう。こちらをどうぞ。
曲名は「歓楽的景頗山」、楽しい景頗山、くらいの意味でしょうか。景頗族の音の世界はとても広がりがあって素晴らしいです。トゥリャンの音色には美しい自然とそこに住む人々の心豊かな生活が表現されているようです。
景頗族は、日本語表記は「チンポー族」或いは「カチン族」とも。中国雲南省の他、インドのアッサム州、ミャンマーのカチン州やシャン州にも居住しています。
ところでこの笛の名前は景頗族の言葉で「トゥリャン」といい、中国語で「吐良」「妥任」の漢字があてられています。一本の竹のものと二本の竹を継いだものとがあり、長さはいろいろだそうです。
本来トゥリャンの演奏場面はこんなに豪華ではないでしょう。それでも民族舞踊とあわせたり、別の意味で華やかかもしれません。
演奏者の董敏さんは中国笛子の奏者でYouTubeにも沢山動画を配信している方です。こちらの衣装は景頗族の民族衣装でしょうか?刺繍や色の取り合わせが美しく、可愛らしい董敏さんによく似合っていますね。
演奏を見ているといくつかのことに気づきます。まず、持ち方が独特ですよね。それから笛の中央に唄口があります。笛の両端の筒孔を指孔がわりにして手の微妙な動きで音を調整しているようです。息の流し方や様々な技巧で音に変化をつけているのも分かります。これは本来のトゥリャンの奏法なのか、董敏さんの工夫なのか、他を聞いたことがないのでわかりません。
いつか本物の演奏を直に聴いてみたいものです。